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第7話 ランク

 

 復讐……か。

 俺だって無能力者。

 爆弾魔の気持ちは良く分かる。

 でも……今はこの状況を何とかする方が先だ。

 と、その時ぶちぬきの天井から3階にいる楓が見えた。

 楓は手を振りながら何か手で合図をしている?

 それの意味が分からない俺に横から会長が小声で説明してくれる。


「あれは特隊専用の合図よ。星宮さんは爆弾500個全て処理したから大丈夫、と言ってるみたいね」


 そうか……途中からいなくなったのは仕掛けられた爆弾の存在に気づき処理する為だったのか。

 さすがはSランクだ。

 よし、後は不意を付いて真っ向から爆弾魔を捕まえるだけだ。

 と思っていたのだが、ここで誤算が起きる。


「お、おい! 爆弾は全部処理されたらしいぞ! そこの爆弾魔の無能力者は諦めて自首するんだ!」


 おっさんがいきなり爆弾が処理されてる事をばらしちゃったよ。

 聴覚強化の能力でも持っていて会長の言葉を聞いていたのか……。

 これはまずいぞ……今それで相手を刺激してしまったら……


「ば、爆弾が全部処理されただと!? 本当なのか大和!」


「しょ、将平君。本当みたいだよ……」


「なっ……だったらこれでどうだ! 俺が犯罪者だろうと人殺しはさすがに禁止だよなぁ?」


 そう言って爆弾魔のリーダーは自身の頭に銃を向けやがった……。

 これはまずいぞ。

 相手が犯罪者とは言え、さすがに人殺しは駄目だ。

 俺がそう思って何とかする手段を考えていたら周りからは


「はっ、何を言ってる! 無能力者のお前が死んでも誰も困らねぇよ!」


「むしろ死んでくれた方がお国の為だ!」


「誰もお前の命に興味なんて無いからさっさと死ね!」


「これだから無能力者は……自分に生きてる価値があるとでも思ってんのかぁ?」


「早く死ね!」


『死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね!!!!!』


 爆弾魔への批判と死ねコールが鳴り響く。

 それは俺の中の何かを引き千切った。


「うるせぇよ……」


 俺はそう呟く。

 しかし、周りからの死ね、死ねコールは鳴り止まない。

 そんな中、突然──

 俺は、地面を思いっきり蹴った音とともに叫ぶ。


 ドンッ!


「うるさいって言ってるのが聞こえねぇのか!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 皆、無能力者である俺が出す威圧で黙り込む。

 足元の床は、さっき思いっきり蹴ったせいか少し凹んでいるようだ。

 が、しばしの沈黙の後に『B』と書かれた腕章を付けている20代くらいの男が喋りだす。


「ちっ、何だよ、こいつも無能力者か。やっぱ無能力者ってのは頭がおかしい奴ばっかだなぁ! こいつも一緒に逮捕した方がいいんじゃねぇか?」


 そんな男の言葉と共に周りもざわざわしだす。

 俺を頭のおかしい奴を見るような目で見てくる人までいる。

 俺はそれに耐えられなくなり口調を荒げて問う。


「なぁ……俺はそろそろ怒っていいのか?」


 俺のその問いに男は笑いながら答える。


「あぁ? 無能力者のお前なんかが怒っても怖くなんてねぇんだよ! ほらほら怒ってみろよ!」


「どんだけ……どんだけ耐えて来たと思ってる……」


「あぁ? 何を言って……」


「どんだけ耐えて来たと思ってんだよ! 生まれながらにして能力者か無能力者かが決定して、無能力者はいくら努力しても一生、能力は手に入らない! 無能力者と言うだけで馬鹿にされて、蔑まれる! 普段の買い物ですら差別化されている。その癖、職業も糞みたいな仕事しかできず給料も安給! 裁判だって無能力者の方が不利に扱われるのは当たり前! 街を歩くだけでも腕章のせいで皆から変な目で見られる! 無能力者に人権なんて無かった! 子供の頃からそんな状態だったら捻くれた人格になるのは当たり前だろ! こうなったのは全てお前みたいな能力者のせいなんだよ!!」


 俺は息継ぎもせず、声が枯れる程の大きさで叫ぶ。

 しかし、男はそんな俺の言葉に耳も傾けずに


「はっ、お前こそうるさいぞ無能力者が! だったらまずはお前から俺の能力、触れた物の時を進ませる能力《時を刻む魂(ティッキング・ソウル)》で老衰死させてやる!」


 そう言いながら男の右手は光り、その右手で俺に殴りかかろうとしてくる。

 なので俺はポケットから錠剤を取り出し、口の中に入れて噛み砕く。


 カリッ


 そうして俺は【深淵】を発動させて、Bランクの男を一撃で殴り倒した。

 周りで無能力者を馬鹿にしていた人達も


「う、嘘だろ……Bランクを一撃で……」


「冗談じゃねぇ、こんなのに目付けられたらただじゃ済まないぞ」


「お、俺は別に無能力者の事なんて馬鹿にしてないからな!」


「と、取り敢えず今は逃げた方が……」


 などと言い合いながら逃げていく。

 俺はそんな事を気にも留めず、怒りを抑えながら爆弾魔の方へ向く。

 俺の場合は子供の頃に家出して山奥にいたから、まだマシな方だった。

 でも……この爆弾魔は違う。

 成長するまでずっと、この腐った社会で生きてきたんだ。

 俺だったら……耐えられるのだろうか。

 夢も希望も無く、ただ毎日を奴隷のように過ごす日々。

 だからこそ……希望を与えなきゃいけないんだ。

 俺という無能力者が、この腐った社会を変える。

 そんな希望を。

 だから……俺は爆弾魔に告げる。


「次はあなたの番だ。あなたに希望という物を見せてやる!」



あとがき


ここまで読んでくれてありがとうございます!

一応、能力説明です

時を刻む魂(ティッキング・ソウル)

右手で触れた物の時を進ませる能力

人間に触れた場合はどんどん歳をとって、最後には老衰死してしまう


次話もよろしくお願いします!

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