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第4話 校内見学

 結局、俺は入学手続きを済まして無事入学する事ができた。

 なので今日も学校に来たのだが……周りの視線が痛い。

 多分、昨日の入学式で生徒会長を倒し、そして会長の胸を揉みまくってしまったからだろう....。


「あれが無能力者なのに会長を倒した颯太って奴だよ……」


「ランク外の無能力者が会長を倒すなんてありえるのか?」


「噂だとあいつ、神格武器の使い手だって話も……………」


「な訳あるかよ。能力者なのに無能力者って偽ってるんじゃないか?」


 周りからは、俺の噂が聞こえてくる。

 そりゃ、学校の代表である生徒会長が無能力者の俺に負けるなんて信じられない話だからなぁ。

 これだけなら、まだいいのだが


「見てよ、あいつ。あれが噂の痴漢魔よ……」


「近づいたら問答無用で胸を触られそうね..」


「あいつが俺達の会長の胸を触りやがった奴か」


「全く……会長が妊娠でもしてしまったらどうするつもりなのだ」


「生徒会長ファンクラブ団長として問いただす必要がありますなぁ」


 などと言った話声も聞こえて来る。

 自業自得ではあるのだが、これは正直困る。

 俺は入学直前まで師匠の元で修行をしていたので、あまりこの学校については詳しく知らない。

 普通に入学式の次の日から授業が始まると思っていたのだが、見た感じクラス分けなどもなく、所々で新入生が校舎内を歩いている。

 誰かに声を掛けて教えてもらおうと思ったのだが……今の状態で声を掛けるのは勇気いるなぁ。

 俺は、小さい頃は無能力者だった為、差別されていたのでまともに話した人はいなく、そのまま家出して山奥で師匠と修行に明け暮れていた為、対人経験がほとんどない。

 まぁ、言っちゃえば軽度のコミュ障だ。

 他の人にどう話し掛けたらいいのか全然分からない。

 俺がそう思いながら苦悩していたら、後ろから突然


「やぁ、君が噂の無能力者君かい?」


 と、声を掛けられた。

 その声の主は、清潔感があって容姿が憎たらしい程整っている男で、俗に言う『イケメン』だ。

 イケメン過ぎて周りがキラキラと輝いて見える程だよ。

 そして、腕には『B』と書かれた腕章を付けている。


「おっと、ごめんね。自己紹介がまだだったね。僕は新入生の秋月(あきづき)だ。よろしく」


「えっと……俺は如月颯太だ。こちらこそよろしく」


 良かった……誰か話し掛けてくれて助かったよ。

 今のちゃんと受け答えできてたかな? 

 まぁ、それは置いといて取り敢えず色々聞かなくては。

 俺は入学式に出られなかったせいで今、何をやるのかがいまいち分かっていないからね。


「あのー秋月さん? 今、何をする時間なのか教えてくれませんか?」


「……ってそうか。君、確か入学式の前の戦いで会長の胸を揉みまくって、殴られたせいで入学式の説明受けてないのか。いやぁ、あれは傑作だったね~」


 うっ……。

 あんまり触れられたくない事を言われた。


「それで、どうだったんです?」


「えっと……どうって何がですか?」


「とぼけないで下さいよ~、生徒会長の胸を触った感想の事ですよ!」


 え……何言ってんだこいつ。

 俺は何かの聞き間違いだろうと思って再度聞き返そうとしたら、秋月は


「いやぁ、会長の胸の触り心地はどうなんでしょうね~。あの女子高校生としては少し大きいながらも、未だ成長過程なのを感じられる胸。そして普段は強気な会長が胸を揉まれた時に見せる、あの赤面して照れた顔。僕も間近で見たかったなぁ。僕も会長に戦闘を挑んでどさくさに紛れて揉んでしまおうか。まぁ、僕からしたらもう少し小さい胸の方がそそられるんですけどね~」


 何か早口で色々語りだしたぞ。

 何これ、素直にきもい。

 変な奴に絡まれてしまったと思い、俺は少しずつ遠ざかろうとしたら


「おっと、ごめんね。語りすぎちゃったよ。質問に答えるから他人の振りして逃げようとするのはやめてくれないかな?」


 くすりと笑いながら謝罪をしてくれた。

 少しも悪びれた様子も無く。

 ただでさえ、俺の評判は良くないのにこれ以上、秋月(こいつ)といるせいで評判が落ちたらたまらないと思いつつも、他に聞く相手もいないので今日は何をするかだけ秋月に聞く事にする。


「それで、今日は何するか早く教えてくれませんか?」


「はいはい、ごめんね。今日は校内見学の日だよ」


「校内見学?」


「そう。この特隊高校は、それぞれ自分に適した授業を受ける為に選択性なんだよ。戦闘系なら、狙撃(スナイパー)クラス、武力(フォース)クラス。専門系なら追跡(チェイス)クラス、心理学(サイコロジー)クラス、開発( エンジニア)クラスみたいな感じで30程のクラスが存在してる。だから、自分が受けたいクラスを見学するって訳。ちなみに僕は武力クラスに行く予定だよ」


 学校見学かぁ。

 まぁ、俺は迷わず武力クラスだな。

 このクラスはとても単純。

 ただ戦闘力を高め、犯罪者を力で取り押さえる特隊になる為のクラスと聞いている。

 サブで追跡クラスとかも受けたいかも。


「それで、君はメインを何処のクラスにするんです?」


「武力クラス……」


「おおー、僕と一緒じゃないですか! それじゃあ一緒に行きませんか?」


「いや、まだ気になる所があるんで先に行ってて下さい」


 そう言った後、俺は半ば秋月から逃げるようにしてその場を去った。


 その後、俺が向かったのは掲示板。

 ここには特隊が受ける事のできる仕事の依頼などが貼られている。

 仕事の内容は荷物運びや、デパートでの催し物の警護依頼、殺人犯の捕獲など様々だ。

 それぞれの難易度に応じて、条件も付けられている。

 荷物運びなどはCランク以上、逆に殺人犯の捕獲はAランク以上の特隊でないと受ける事はできない。

 と、そこで後ろから声が掛かってきた。


「何を見てるのよ?」


 振り返ってみると、声の主は会長のようだ。

 俺は昨日の事を思い出し、気まずくなりながらも返事をする。


「おはようございます。ちょっとどんな仕事があるのか、と見ていて」


「見るのはいいけど、まずは特隊資格を取らないと仕事は受けられないわよ? まぁ、私を倒したあなたなら簡単に取れる筈よ。そういえば最近、荷物運びの仕事は多いわわね……。それで何で仕事の条件だけを見て……ッ!」


 そう、会長は気づいてくれたようだ。

 俺は無能力者。

 よってランクをそもそも与えられていない。

 能力者なら実績や定期試験でランクが上がったりするが、無能力者はいつまでもランクを与えられる事はない。

 つまり、俺が特隊資格を取った所で、荷物運びの条件のCランク以上すら満たせない為、仕事を受ける事はできない。

 だから無能力者の俺では特隊になれても、現状では特隊としての活動が何もできないのだ。


「でも颯太さんなら大丈夫よ! 私を倒す程の強さを持っているのなら上も特別措置とかを認めてくれる筈よ」


「…………ありがとうございます、会長」


「べ、別に礼を言われる事は何もしてないわよ! あ、そうです、私のお父様は政治界でも上の方にいるから、あなたが私の……あれになってくれればきっとお父様が何とか……お父様は強い物と結婚せよと言っていたし……それに昨日のあれの責任もちゃんと取ってもらわないと……べ、別にあなたが良いとかそう意味じゃなくて、色々重なって結果的に……」


 何か会長がいきなり色々言いだしたぞ?

 顔を真っ赤にして、恥ずかしがりながら焦って色々言おうとしてるせいで、何が言いたいのか全然分からない。

 昨日のあれって言ってるし、俺に負けた事が悔しかったのかな?

 まぁ、学校の代表だったのに無能力者の俺なんかに負けるのは恥ずかしいもんなぁ。

 さすがに会長がかわいそうなので謝る事にする。


「えっと……すいません、会長」


「え、いや、違うわよ。何で謝って……だから私の言いたいのは……私と……その……つき……」


 と会長が何かを言うと同時に


『うおっーーーーーーーーー!!』


 向こうの方から歓声が聞こえてきた。

 その音のせいで会長が何を言ったのか分からなかったな……。


「すいません、会長。さっきの声で聞こえなかったのでもう一度言って貰えると嬉しいです」


「え、いや……大した事ないから大丈夫よ。逆に聞かれてない方が良かった──みたいな……??」


 良かった、大した話じゃないのか。

 俺は安心しながら、さっきの歓声について会長に聞く。


「会長、さっきのって……?」


「え……あぁ、確か今日は、外国に行っていたうちの学校のSランクである星宮(ほしみや)さんが帰ってくる日だったわね。多分、それじゃないからしら?」


 星宮……俺はその苗字に懐かしみを感じる。

 Sランク。それは、基本的にA~Dまでのランクしかないのに例外的に存在している最高ランクであり、日本には10人しか存在しない。

 特隊となる以上、一度は見ておきたい。

 そう思って俺は。人波を掻き分けながらSランクがいる所に向かう。


 しかし、そこには懐かしい見知った少女がいた。

 腕には『S』と書かれた腕章を付けているので、この少女が会長の言っていたSランクで間違いはない。

 向こうも俺の存在に気づいたようで、俺の方へ向かって走ってくる。

 そして俺に抱きついてきて、子猫のように頭をぐりぐり擦り付けながら、そのSランクの少女は言うのだった。


「お久しぶりです、会いたかったですわ()()()!」




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