第2話 特隊高校★
今から生徒会長と俺との、俺の入学を賭けた勝負が始まろうとしている。
どうしてこうなったのかと言うと……
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3時間前
「お前……本当に……無能力者なのかよ……」
そう言ってAランクの殺人犯は気を失った。
そして俺は急いでその場を離れ、近くの使われていない工場に入る。
その後、食欲を抑えきれず、俺は鞄から弁当を取り出して食べた。
一応、食欲は満たしたが次は睡眠欲が体を襲ってくる。
「やはり、朝にこれを使うべきじゃないな……」
俺は、そう呟きながら寝てしまった。
◇
時刻は8時30分。
どうやら2時間ほど寝てしまったようだ。
……と言うかこれはまずいぞ。
入学式は1時間後。
しかし、俺は飛び込み入学をする為、一度生徒会室に行き手続きをしなければならない。
間に合わなくて入学できないのだけは勘弁だ。
そんな訳で俺は急いで学校に向かった。
◇
「……駄目よ。あなたの飛び込み入学は認めないわ」
早速入学拒否られました。
ここは特隊高校の生徒会室。
目の前にいるのはこの学校の生徒会長。
えーと容姿は整っていて、綺麗な青い髪が……。
まぁとにかく美人だ。
と言うか可愛い、なでなでしたい。ってのは置いといて
「何で? 特に問題が無ければ入れるんじゃなかったんですか?」
「確かにうちの高校は人不足。でも……あなた無能力者なのにうちの高校に入ろうとしてた訳??」
「うっ……」
そう、俺は無能力者。
能力者である証として腹部に浮き出てくる謎の紋様は、何度見ても俺からは見当たらない。
能力者による犯罪を対処する特隊にとって致命的。
俺みたいな能力を持っていない奴なんて……。
でも──それでも俺は────
「俺はこの学校に入るためにここまで来たんだ! 考え直してくれ!」
「そうは言われても……。私達にもそれなりの責任と言う物があるのよ。能力を持たないあなたをうちの学校に入れて、事件で死なせでもしたら……」
「なら俺は絶対に死にません! 誓います! だから入学を認めて下さい!」
「………………」
生徒会長は引き下がらない俺に困った様子だ。
だがここで引き下がる訳にはいかない。
この学校は生徒主体となっている。
つまり、その生徒の中のトップである生徒会長が絶対の権力を持っている。
ここで認めて貰えなければ、俺は入学できないのだ。
と、その時コンコンとドアをノックした音と共に一人の男が入ってきて
「会長、逃亡したAランクの殺人犯が倒されていたと報告が」
生徒会長に対してそんな事を言っている。
「Aランクが倒された……? 副会長、誰が倒したかは分かる?」
「それが……殺人犯は無能力者に倒されたと言っているみたいです」
「……無能力者が? 何かの間違いじゃなくて??」
どうやら、逃亡したAランクの殺人犯が無能力者に倒されていたって話みたいだな。
って言うかそれって────
「もしかして、俺が倒したAランクの殺人犯の話ですか?」
「………………え?」
何か急に静かになってしまった。
会長とか凄い驚いた顔してる。
そしたら、いきなり副会長らしき男が盛大に笑い出した。
「ぷっ、無能力者が、無能力者のお前がAランクを倒しただと? 笑わせてくれる。やっぱり君みたいなランクすら持たない無能力者にはAランクの凄さが分からないんだろうな」
「副会長、その辺にしときなさい」
「いやぁ、だってこの身の程知らずの馬鹿が笑わせるのが悪いんじゃないですか。ぷっ、思い出したらまた笑いが止まらな、ぷーくすくす」
「えっと……取り敢えず颯太さん? 今の話は本当なんですか?」
凄い笑われている。
生徒会長ですら信じられないといった様子だ。
しかし、これが無能力者の現状。
何を言っても馬鹿にされ、笑われる。
だから俺は、この現状を変える為に特隊になる事を決めたんだ。
そのためには特隊学校に入れなくては意味がない。
「……だったら生徒会長、俺と戦って下さい」
「……戦う? どうして急にそんな事を??」
「俺と戦えば、この話が本当かどうか分かる筈。どうせ今、本当と言っても信じてくれないでしょ? 俺が勝ったら入学を認めて貰います。負けたら素直に出て行きますよ」
しかし、そこに副会長が割り込んでくる。
「いえいえ、会長。あなたが戦う事はありません。この身の程知らずの馬鹿の相手は、3年生生徒会副会長Aランクである私にお任せください」
「別に相手はどっちでもいい。勝ったら入学を認めてくれるのなら」
「生意気を……。お前なんて泣かしてやる!」
泣かしてやるって……子供かよ。
まぁ、どっちが泣く事になるかはやってみないと分からないけどな。
などと俺が思っていたら、会長が席を立ちながら
「いえ、副会長。この戦いは私が引き受けます。勝負は入学式が行われる模擬戦闘場で9時25分からでいいわね?」
そう言い残して生徒会室を去ってしまった。
残った副会長も立ち去りながら、俺に対して嫌味を言ってくる。
「はっ、お前ごときが会長と戦うなんておこがましい。会長は1年生にして生徒会長となっている。ランクもAランクとなっているが特例のSランクになってもおかしくない実力をお持ちになっている。お前ごときが勝てる相手じゃない!」
高校一年生でありながら生徒会長の座を持つ力、か。
さらにランク付けでは特例を除けば最高であるAランク。
この時点で強さなんて一目瞭然だ。
だけど───それでも俺は勝たせて貰う。
そう思いながら俺はバトル場であるドームへ向かうのであった。
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そして今に至る。
模擬戦闘場のど真ん中にある丸いリングに俺は立っている。
目の前には生徒会長。
この模擬戦闘場は東京ドームの4分の1程の広さと設計で、ここで入学式が行われるため、周りの観客席には新入生も合わせた全校生徒、約1500人もいる。
『それじゃあ、実況部であるこの私、奈乃夏がこの戦いの審判と実況を務めさせてもらいます。今から我が校の生徒会長と如月颯太さんのバトルが始まります! と言っても如月さんは無能力者だから勝負になるか分かりませんけどねぇ……』
実況の奈乃夏って人も無能力者である俺を馬鹿にしているようだ。
周りで見てる人達からも「早く終わらないかなぁ」とか「何秒で無能力者の方がやられるか賭けようぜ!」などと聞こえてくる。
「悪いわね、無能力者であるあなたを皆差別してる感じで」
「いえ、大丈夫です」
会長は俺の事を気にかけて、そんな言葉をかけてくれる。
でも、大丈夫だ。
こんな事、もう慣れてる。
それに皆が俺を馬鹿にした状態で、俺が会長に勝てれば大騒ぎになる筈。
そうなれば、むしろ好都合だ。
俺はそう自分に言い聞かせながら、自分の武器である刀を構える。
生徒会長の方も剣を地面に突き立てている。
その剣は会長の美しさと照らし合わせたような神話に出てきそうな大剣だ。
「あなたは刀で戦うのね。私は氷の能力を持っているけど、未熟ながら能力の力が強すぎて剣を伝ってじゃないと制御できないの。だから大剣を使わせて貰ってるわ」
会長はそう言いながら「こんな風にね」と言った感じで剣の先で地面を突く。
その瞬間、リング一面が凍りの世界となった。
とっさにジャンプをしてなければ俺の足も凍って動けなくなったいただろう。
「これでも戦うと言うの?」
会長はそう言ってくる。
今のは俺を試していたのだろう。
今考えてみると俺は馬鹿だなぁ。
無能力者なのに、こんな化け物みたいな能力者に勝とうと思っていたなんて。
普通なら能力を持たない俺に勝ち目なんてない。
能力を持っていると持っていないでは超えられない壁がある。
だけど──だからこそ────俺はその常識を覆す!
この腐った世界を変える為に。
だから俺は言い放つ。
「会長、あなたには俺の踏み台になって貰います!」
「……そう。なら早く始めるわよ。5分後には入学式が始まってしまうわ」
今のは……俺を5分で倒すって意味か。
それなら逆に俺が5分で終わらせてやる!
『それじゃあ、いきますよー!!』
そして始まる。
見てろよAランクの生徒会長。
無能力者の俺はお前を倒して、無能力者でも特隊になれると証明してやる!
そして俺は日本初の無能力者の特隊になるんだ!
さぁ始めよう。
『バトルスタート!!!!』