巨乳
「こっちだな!!!」
オレは羽が刺さっている方のナメクジをむんずと掴み上げ、振りかぶり、それを窓から放り投げようとした。
「やめるナメ」
後ろからオレの右手をつかむ手。
細い骨ばった手だが、力は強い。
見ると、軍服がオレの手を両手で掴んでいた。よほど力を込めているのか、指先が白くなっている。
オレが一瞬力をゆるめると、軍服がオレの手からナメクジを奪い取った。
「もうタイマーは止まっているナメ」
ドラゴン看護師の頭上のタイマーは消えていた。
グロテスクな色合いのナメクジの周囲にも数字は無い。
しかし、ナメクジに羽は刺さったまま。
「なんでおまえ、タイマーが止まってるって――?」
振りかぶった手のやり場に困ったまま思わず軍服の襟元に掴みかかると、軍服の前がはだけ、その下にあるものが見えた。
「巨乳……」
いろんなものが瞬時につながった。
巨乳、ボマー、見えるものを見えなくする軍服の能力。そして、ナメグジに刺さったまま効力を止めたかのように見える起爆装置(羽)。
「おまえがボマーか?」
服の合わせ目を手で押さえた軍服がこちらに目を向ける。
初めて近くで見たそれ(軍服の目)は思わず見惚れるほどきれいに澄んでいた。
「おまえらがボマーだったのか?」
遠くに見える(たぶん、爆発の瞬間にでも室外に出ようとしていたのだろう)吉田さんと軍服に目をやる。
羽の色はすっかり抜けている。
あれは本当に吉田さんだろうか。
不確かな情報の中で、色の薄いグリフォンがもう一人いたはずだ。
「死んだはずの大使――」
オレが言うと、出口近くにいた(吉田さんに似た)グリフォンがピクリと反応した。
「名前は――」
「ヨシムラサン」
澄んだ声が言う。軍服の声だ。
吉村。
それがボマーの正体だった。




