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瘴気
その時、トスンと肩の上に手が降って来た。
青髪女とドワーフ女の肩に同時に。
青髪女とドワーフ女は同時に表情を止める。
「俺はワイロは大好きだ」
手の持ち主が言う。
たぶん、ドワーフ女の上司的な、たぶん人間。髪の色は赤。猫的な雰囲気があり、目を細めると感情が読めない。
今は目を糸のように細め笑顔を見せているが、笑顔に圧がある。たぶん、肩に載せられた手にもそれなりの圧がかかっているのだろう。青髪女が痛そうにしている。
「でも、ま、ポリアンナの言うように、彼女はとても俺が満足できるぐらいの金を持ってるとは思えないし、それになんだかおもしろそうなものを服の下に隠しているようだ」
猫的上司の視線が痛い。
俺とホウじいさんは青髪女の服の下で息をとめた。
「いいんじゃない。このまんま連れてっちゃおうよ」
「え?」
「うん。あの検兵たちにさ、このまんま引き渡しちゃおうよ。その方がおもしろそう」
だ、という声は地獄の瘴気みたいに沈みこんだ。