ドラゴンナース
目を開けたくない。
顔面にすごい鼻息を感じる。
絶対オレの顔の近くには顔のでかいヤツがいるし、オレはそいつを知っている。
「ワナワナ、近いよ」
なるべく目の前のそいつのドアップを見ないで済むように自分の右腕で目を覆いながら言うと、周囲にどっと笑い声が起こった。
「ワナワナって言ったっぺ」
「あんたのこと怖いんだっぺ」
「怖くないっぺ?」
「いんや怖い怖い。あんた怒るとおっがないもん」
「怒んなくても怖いさぁ。なんたって顔が怖い」
「ぁんだっぺー?」
たぶん言われた当人の怒りを含んだ声にまた周囲がどっと沸く。
「?」
半身を起こす。
「いやぁー、王子さまが目を覚ましたっぺ」
「だんれの王子だっぺ?」
「おれの王子に決まってるっぺ」
おばさんじみた太い声の応酬が続く。
目をごしごしこすってあらためて周囲に目を向ける。
「ドラゴン?」
どうやらオレは今まで清潔なベッドで眠っていて、その周囲にやけにたくさんのドラゴンがいる。
その全員が色とりどりのスカーフを頭に巻いていて、これまたカラフルなエプロンやら割烹着を身に付けている。
料理をしているわけではない。
エプロンとスカーフは彼女たちの仕事着だ。
彼女たちの仕事はナース。
ドラゴンナースばかりを雇っているのは宇宙病棟で、つまりはここは宇宙病棟ってわけで――。
たぶん、オレはあのあと(記憶がないことから)倒れたかどうかして、たぶん力が強くて生真面目な桃太郎か誰かがオレをここに運び込んだのだと推測される。
推測はされるのだが――
悔むべきは自分で(自分が倒れたときに)行く場所を選べなかったことであって――
「サイアクだ」
オレはつぶやいた。
早くここから逃げ出さなければ。




