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スライムだって胸パッドにはなるし  作者: 垂直わーるど
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63/81

悪魔

 宇宙浴場には悪魔がいる。

 『髪結いの悪魔』だ。


 悪魔は魔力のないヤツには無害(害もないが大した利益もない。ただ対価に応じて、洗髪をするのみだ)に接するが、魔力のあるヤツにとっては有益な情報源となる。彼らは地獄耳なのだ。

 そして悪魔たちへの報酬は、オレらの髪。

 髪は本体から離れたあとも魔力が残っているそうで……


 あぐり、と大きく口を開けた悪魔の体内に入る寸前でオレの髪が灰色の煙になった。

 それをあむあむと咀嚼しながら、

「迷子よ、迷子、迷子さん。なんだかずいぶんと魔力がみなぎっているじゃない」

 髪を洗われながら仰向けの状態で、オレは「そお?」と応じる。

 なんだか妙に魔法の効きがいいとは感じていたのだが、魔力の強さが影響していたのか。


「しばらく前までの迷子さんの魔力はぁ、なんかこう――へにゃへにゃって感じ? つまりは立たないアソコみたいな――」

と言って悪魔の視線がオレの局部を見る。オレは手ぬぐいであわててそこを覆った。

 悪魔は一瞬がっかりした表情を見せたが、すぐにそれを取り繕う。

「それが今の魔力はもうビビビンビンって感じ。一体何があったのかしら?」

 悪魔の言葉に一瞬素直に「実はスライムになっていまして、それが人間にもどったとたんこのように魔力がビンビンになったわけで」と応じてしまいそうになったが、瞬時に気を引き締めた。

 これが彼らの手だ。

 自らの情報を与えつつ、しっかり与えた以上の情報も入手する。

 手というより習性か。

 実際彼らは何か狙ってそうしているのではなく、実に自然にそれをやってのけている。それが悪魔という名の由来であるのかもしれない。


 気をゆるめると羽のように軽くなってしまいそうな口を制御して、「さあ」と応じる。

 話してしまった方がすっきりするわよ、そんな悪魔の心の声が聞こえてきそうだ。

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