ホウじいさん
スライムというのはドワーフが苦手だ。
理由もなく嫌いだ。
イヤだからイヤなのである。
俺は冷や汗を流した。
どーする? どーする?
「ワシにまかせとけ!」
ホウじいさんが大きな声で言った。
「こんなときのために絞り込んでおったんじゃ、ホウ」
「絞り込み?」
「なにを?」
俺と青髪女が聞く。
「ホウ、ほれ」
というと、ホウじいさんは自身の体をきゅっとねじり込んだ。
「どうじゃ? ホウ」
ホウじいさんの体はまるで絞られた雑巾のように円筒型になった。
「どうじゃ、ほれ」
次に形を変えて、円盤型。
「これでよかろう、ホウ」
最後に見事な円錐型になった。いや、これはいわゆる富士山型か。やわらかな曲線がまるで本物のおっぱいのよう……
俺は嘆息した。
「見事だぜ、ホウじいさん。俺たちスライムにも負けない見事な変化だ」
「そうじゃろう、ホウ」
ホウじいさんは俺の賛辞に満足したように羽を少し動かすと、
「そこな女」
と青髪女を呼んだ。
「ほれ、急ぐんじゃ、ホウ。あの王兵が来る前にはようワシをおぬしの胸に押し込むんじゃ」
「え? え?」
「ちんたらしてんじゃねーぞ、片パイ。さっさと俺の隣にホウじいさんを配備しろってんだ」
「は、はい」
青髪女が不器用な手つきで富士山型のホウじいさんを拾い上げ、俺の隣に設置したところで目を上げると王兵はすぐ目の前にいた。