オシドリ
「喝ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
その時、森中に甲高い声が響き渡った。
「その程度で胸パッドなどとは笑止千万笑わせてくれるわ! ホウ」
「え? 誰? 誰かわからないけど、耳触りな声が聞こえるわ」
周囲をきょろきょろ見回しながら青髪女が言う。
「そこなスライム。オシドリと聞いて何を思い浮かべる?」
「え? そこなスライムって俺のこと?」
「そうじゃ、おまえじゃ。ホウ」
「ホウって何だよ? ……ま、いいか。オシドリィ? オシドリってあれだろ? よくツガイで池とかに浮かんでるあれだろ。まあ、よくわかんないけど、仲がいいとか、夫婦? みたいなイメージ?」
「そうそれじゃ。それをふまえて、おぬしの隣をよく見るがいい。ホウ」
「だからホウって何だよ? ……ま、いいか。隣となりっていうことは隣の胸だな」
そこで隣に目を向けた俺は驚愕の声を上げた。
「なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーー!!!!」
驚愕の声は森中にわんわんと残響を残した。
「なんだよ、これ……」
残響が消えたところで俺は力なくつぶやく。
「やっと気付いたか。ホウ」
森の声が言う。
「ああ、わかったさ。ホウじいさん。じいさんがオシドリを例に出してくれたように、おっぱいは二つで一組。つまり、俺というスライム的巨乳の隣にはもう一つ豊満な胸があってしかるべきなんだ。それが……、それなのに……」
「わかればいいんじゃよ。ホウ」
俺と青髪女の前に、大きなフクロウが降り立った。






