ケルピー
酒場である。
雑多な種族が乱雑に入り混じり、酒を呑んでいる。だいたいが真鍮製のジョッキを手にしているが、その中身は多様である。
「いらっしゃいませー」
ドアの開閉音に反応して、近くにいたケルピーが言った。黒いタテガミを持つ白馬のケルピーだ。
入って来たのは王兵。赤い髪を持つ猫顔の男。その後ろにも三人の王兵。すべてトールマンだ。
「おい、シマウマ」
シマウマと呼ばれたケルピーは一瞬空気を逆なでしつつも、すぐに笑顔を取り繕った。
「やだなぁ、アカザさん。もう酔っぱらってるんですか? ぼくはシマウマなんかじゃなくてケルピー。ついでに言うと、四等兵馬のワナワナであります」
と言ってケルピーのワナワナは敬礼めいた動作をした。
アカザはそれを吐き捨てるように見ると、店内に目を向けた。
「おまえ今日非番だったのに城に来ていたそうだな」
「はい、そうであります」
「……」
アカザの目が睨むようにケルピーを見る。
「城の池の水が濁っているとの情報を得て、一潜りして原因を探索してまいりました」
「……」
「ちなみに未だ原因不明であります」
「……」
アカザがため息をついた。
「ポリタンクは見かけなかったか」
「は?」
「――ドワーフの」
「ポリアンナ先輩でございますか? 見なかったであります」
はて、とワナワナが首をひねる。
「ポリアンナ先輩がどうかしたでありますか?」
「おまえには関係のない話だ」
「はっ」
「おい、帰るぞ」
アカザが配下を引き連れて店を出て行った。
「はー」
店のテーブルの上で息をひそめていたオレは安堵の息を吐いた。
ワナワナがオレに無邪気な笑顔を見せる。馬の顔はでかい。右手(足?)を上げているのはVサインのつもりか。
「やったね、スラちゃん。コースター作戦大成功」
「ああ」
オレは身ぶるいをして、ぺしゃんこになっていた体を元の形状にもどした。




