静かだけど
「チッ、見失った」
しばらくしてからポリアンナが舌打ちしながらもどってきた。
「あーあ」
と鉄格子の前であぐらをかき、頬杖をつく。
「ま、いっか。フクロウの一匹ぐらい。もともとあのフクロウもスライムも入城数にはカウントされてないんだし」
通常は城に入る前と牢獄に入れられる前に身体検査を受ける必要があるらしいが、この青髪女は『ボマーの疑いアリ』ということでその身体検査を免除されていた。実のところ、この青髪女が『ボマー』の疑いが強かったため、誰もこいつの身体検査を買って出る者がいなかったというのが実情だろう。
そのおかげで、ホウじいさんもオレも城の人間からしてみれば、存在してないモノとなってる。
「なあ、ずいぶん大人しいな。えっと、名前なんだっけ?」
ポリアンナがそう言いながら、鉄格子の隙間から手を伸ばし、青髪女の肩に手を触れた。たしかに、青髪女はさっきからずっと足を斜めに揃えて座ったまま、何も言葉を発していない。
その瞬間、青髪女の体がグラリと前傾し、オレは「え?」と声を上げた。
そのままだと倒れる――。オレは青髪女の服から飛び出した。
飛び出した!?
オレは自分が青髪女のおっぱいから離れられたことに驚いた。
さっき、森の中でポリアンナが手の血管が浮くほど力を込めてオレを引っ張った時にも剥がれなかったのに……
オレは目を見開いたまま、倒れていく青髪女を見つめた。
青髪女の体は前傾し、あぜんとした顔のポリアンナの目の前で鉄格子に額を打ち付けた。そして、鉄格子に顔を擦りつけるようにしながら横に倒れていく。
「え……」
ポリアンナが青髪女を凝視する。
そして、表情を引き締めると、やはり鉄格子越しに手を伸ばし、青髪女の首筋に触れる。
ポリアンナが首を横に振った。
「死んでる」




