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スライムだって胸パッドにはなるし  作者: 垂直わーるど
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目覚め

 誰かの気配で起こされた。

 ここに人間が来ることはめったにない。しかし足音から判断するに粗野な田舎者だ。最悪ガキかおっさんかもしれない。

 起きる価値なーし、とタヌキ寝入りを続ける。


 我、スライム。

 スライムがタヌキ寝入りっておもしろすぎっっしょ。


 起きたら誰かに教えてやろうと頭ん中のメモ帳にメモしてタヌキ寝入りから本格的な眠りに落ちそうなところで、ムンズと掴み上げられた。


 我、スライム。

 このぬちゃぬちゃした体を掴まれるのはやぶさかではないが、相手は選びたい。

 できれば絶世の美女。

 最低でも美人の奥方といきたいところだ。


 目を開ける。

 目の前には青髪ショートカット女。ぜんっぜん好みではない。もう一度寝てやろうか。知力の無いクラゲのふりをしてやろうか。

 女はぷにぷにと俺の体を両手でもむようにして検分すると、

「これでいいかしら」

と言いながら、俺を自身の胸に突っ込もうとする。

「ちぃ、ちょいと待ったぁ!!!」

 俺は変形して青髪女の暴挙に抵抗した。すなわち強引に突っ込まれそうになったワンピース(元々の色がわからないぐらいに変色してて、でもなんとか服の機能は維持してるって代物)の胸元から這い出て、地面に着地した。

「急になにしやがる! このバカ女!」

「え……?」

 青髪女は口元に手を当て、驚いた顔をした。

 ふん。

「しゃべった。あなたしゃべれるのね?」

「まあな」

「スライムって知性があるの?」

「モノにもよるがな。知力のあるスライムもいることはいるぞ」

「じゃあ、お願い!」

 青髪女はガバリと頭を下げた。

 下げても地面にいる俺より頭が高い。

「お願い! どうかわたしの胸になってください」

「? (胸?) 無理」

「ふりだけでいいの。それもずっとじゃなくていいの」

「おまえ人の話聞いてないだろ。嫌なもんは嫌なんだよ」

「貧乳はダメなのよ」

「やっぱ人の話聞かねえタイプだ。いるんだよなー、こういうの。ちょっと話すだけでイライラするっつーか」

「明日王様が村に来るのよ。そこで貧乳の子はみんな殺されちゃうのよ」

「王様?」

「そう。悪名高い貧乳嫌いの王様よ」

「貧乳嫌いかどうかは知らないが、まあ性格が歪んでるのはたしかだな」

「そう。そのゲス王が明日村に来て、貧乳の子は殺されるって話なの」

「え、あいつ『ゲス王』って名前だったっけ?」

「ちなみに貧乳の子は村で一人だけです」

と青髪女は自分を指さす。

「男のふりすれば?」

「ムリ! 敵はすでに名簿を入手しているの」

「じゃあ村から逃げろよ」

「村の出入口は封鎖されてます」

「ああ……、じゃ、殺されれば?」

「ぜったいにイヤ! なんで? なんで貧乳なのはわたしのせいじゃないのに、なんでわたしだけ殺されなきゃならないの」

「貧乳だからだろ。ドンマイ」

「……ぐっ」

 青髪女は唇をかむと、次の瞬間俺を掴み上げた。

「ぐえっ」

 青髪女の貧弱な胸元に体を押し込まれる。

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。こわくないこわくない」

「こわいっ! ってか不快なんだよ、この貧乳!」

「なんですって! 今すぐ殺してやろうかしら!」

「こわいこわい。てめーキャラ変わってんだろ! ゲス王みたいになってんぞ」

「なんですって! きぃぃぃぃぃ!!!」

「力をこめるな! 体が破裂すんだろっ!」

 青髪女の胸に体を押し付けられているうちに俺の体に変化が現れた。

 なんか変だ。体が熱い。

 頭がボォォォっとする。

「え……?」

 青髪女が声を上げた。

「ス、スライムさん?」

「え……?」

 俺はボォォォとした頭のまんま青髪女を見上げた。青髪女の顔が上気している。

「ありがとうございます。スライムさん」

「え?」

「これでわたしは殺されずにすみます」

「え?」


 ええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!


 俺は――、俺の体は青髪女の胸パッドになっていた……

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