テーマ『恐い話』
「――また屋上の階段掃除?」
ぬらした雑巾でせっせと階段を一段ずつ磨いていく。
年季の入った階段はどれだけ磨いてもきれいにはならない。それがまた良い。
「しらない人が残した文字なんだろうね」
消してはいけないもの消したくないものもあるにちがいない。
「はぁあ。そんなもの掃除係の負担が増えるだけでしょ」
このははどうも俺の感慨深さを理解してくれない。必死に擦って消そうとするくらいに
「たしかに大変だけど、俺はこの学校好きだから」
学校が無ければ、きっとこのはとも出会えていない。
「なにそれ、気持ち悪い」
そう言いつつも決まってこのはは箒を持って手伝ってくれる。
「ありがと、このは」
そうやって、一言だけ。あとは学び舎に触れながら。
ただただ無言で磨き続ける。
学校というのはいつでも帰れる故郷だけれど。いつかは必ずなくなってしまう。
見られなくなるときは必ず来るのだ。
一つは廃校になると。もう一つは――――。
「れんっ! んぐっ。やっぱり私、死にたくないよ」
命の華が枯れてしまうとき。。
「このは、大丈夫。君を一人にはしない」
いつもは感慨深くおとなしいれんはこのはの手をパッと握り、階段を軽快に一つ飛ばしにさかのぼった。
――――屋上なのに。
結局二人はその後、落ちたのだった。
それはこいかもしれない。
今回、実は二重オチです。
最後の『こい』に
恋に落ちたのか
はたまた、故意に落ちたのか
そしてもう一つ。
一つ飛ばしで遡る。
文章の頭文字を一つ飛ばしでさかのぼると……。
こんなに短文を連ねる文章は初めてです(-_-;)
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