ボランティアの出し物を考えよう。
工藤の家に行く約束の日曜日。そこには既に正治と桜がコンビニの前に集合し遅れて光がやってきた。
「二人ともおまたせ!待った?」
「ああ。さっきばっかりだから大丈夫だよ。んー。私服姿の二階堂さんも可愛いね。」
そこで光の私服姿を見てサムズアップをしながら感想を言う正治。
「えへへー。ありがと!ところで・・・」
光はこの場に来た瞬間から気になっていたことを口に出す。
「なんであんなに桜さんは落ち込んでるの?」
そこにはブツブツと何かを呟いて今まで見たことがないほど生気が感じられない桜の姿があった。
「ああ。それはね。昨日のことなんだけど・・・」
「たっだいまー!」
いつもよりハイテンションで家に帰ってきた桜。
「おかえり~。そんなテンションでどうしたんだい姉さん?」
「いやね。さっき道端で知らない子供だったんだけど元気に挨拶されたんだ。こんにちわーってね。」
「あー姉さん子供好きだもんね。そりゃテンションが上がるわけだ。」
「うん。そうだね。子供は一人だったけどやっぱりあのあどけない姿が最高なんだよ。それにつぶらな瞳・・・」
「(うん長くなりそうだからこれ以上は無視しておこう。)」
そう思いながら桜の話を無視しテレビをつける。ちょうど夕時でニュース番組がやっていた。そこでは子供を攫う不審者に関するニュースをやっていた。ニュースキャスターや解説者は自分たちの目線で話をしながら議論をしている。
「いやー不審者って怖いですよねぇ。」
「子供には自衛の手段が少ないですからね。連れ去られたらそれまでですし。」
「だから現在は子供に携帯電話を持たせる親も増えているそうですね。」
「そうですね。子供たちを守るためには必要な措置で・・・」
桜は晩御飯の準備をしながらもニュースを見ていたのか憤慨した。
「まったく不審者ってのはなんでそんなことをするのかホンット理解に苦しむよ。だから携帯電話を持たせるのとかは私もいいと思うんだよね。」
「ふーん。そういうもんか。」
「あんたちゃんと聞いてる?これは重要なことなんだよ!子供のことは何を置いても優先しなきゃいけないことなんだから。」
「そこまで考えてるのは世の親以外では姉さんくらいだよ。」
そう適当に話をする正治。そこでテレビの話題は子供が不審者から身を守るための話になる。ニュースキャスターはフリップを取り出しめくりを一枚ずつめくっていく。そのフリップの内容はこうである。
1、携帯電話を持つ
2、防犯ブザーを鳴らす
3、人の少ないところを歩かない
4、必ず二人以上で行動する
「まぁすべて重要なことですよね。それで後ひとつのめくりはなんですかね?」
「それでは最後の防衛手段です。」
そういってニュースキャスターがめくりをはがす。
5、不審者と思われる人間に大きい声であいさつをする。
「そうですね。危険と思われる人間には先に大声であいさつしてしまえば驚いて逃げてしまうということがありますからね一つの手段としていいと思いますよ。」
そこでズシャァという音が聞こえ正治が驚いて後ろを見るとそこには
「もう生きていける気がしません」
とケチャップでダイイングメッセージを残し倒れている姉の桜があった。
「ということが昨日あったんだ。」
「それはご愁傷さまだね。」
「私はもう生きていけない。子供に不審者とか思われるとかもう生きていけない。」
「だから今日は姉さんがたぶん役に立たないかもしれないけど気にしちゃいけないよ。それじゃあ工藤の家に行こうか。」
そういってから歩き出す三人。ただ桜だけはまるでゾンビのようにふらふらと後をついてくる。
「ところで正治君。」
「なんだい二階堂さん。」
「工藤君の家ってどんな感じなの?」
「家は普通だよ。どこにでもある一般的な家って感じ。」
「へー。今日は休日だから家族の人がいるかもしれないね。ちゃんと失礼のないようにしないと。」
そこで工藤の家族のことを思い正治の顔が曇る。
「うっうん。そそそそうだね。しっ失礼のないようにしないとね。(たぶん失礼なことされるだろうけど)」
「ちょっと私には今の会話でどこに言い淀む要素があったのかわからないんだけど。」
「いっいや。別に何もないよ?ちょっと選択を誤ると死が待っているかもしれないだけだから!」
「ごめん。私は正治君が今何を言ってるのかわからないよ。」
そう会話をしながら正治は対策を考え始める。
(いかん。このまま二人を連れて行けば愛するお兄ちゃんのために茜ちゃんがどんな行動を起こすかわからない!特に告白をさせないように動くという約束はしたけど近くに女の子がいることを知ったら俺は殺されるかもしれない。どうする!)
そう考えながらもどんどん工藤の家に近づき正治はどんどん焦り始める。
(なっ何か策はないか?茜ちゃんが二人を受け入れかつ俺も殺されない未来を作り出すために何か策は!)
「ねぇさっきからすごい汗かいてるけどホントに正治君大丈夫なの?」
「大丈夫だ!何も問題はない。」
「大丈夫ならいいんだけど。」
(いや問題しかない!俺の死が待っている未来を変えることができない!ん?待てよ。茜ちゃんは工藤に告白するような人物であれば問題ないのではないか?というより茜ちゃんと工藤が結ばれればそれで問題ないはず。)
そこで思考がまとまり始め正治は最悪のことを想像しながらこれは伝えるしかないと思い二人に話を始める。
「工藤の家に行く前に少し二人には話ておかなきゃいけないことがある。」
「私は不審者。私は不審者。私は不審者・・・」
「いつまでブツブツ言ってるんだ姉さん!これから話すのは俺の命に関わるんだ。」
「いや。なんで人に家に行くだけで命に関わるのか理解できないんだけど。」
光は冷静なツッコミをする。
「それでさっきから正治君が汗かいてたりしてたのはそのことと関係あるんだよね。いったい何があるの?」
「ああ。それがな。工藤には妹がいてな、茜ちゃんって言うんだがとんでもない子なんだ。具体的に言えばお兄ちゃんLOVEなんだよ。」
「えっ?ごめんやっぱりさっきから正治君言ってることが全部普通じゃなくて理解できないよ。」
光には正治の言っていることがさっぱり理解できないようで聞き返してしまう。
「まぁブラコンが極まっているといえばいいかな。だから二人があの家に行けば工藤を狙っている女子と判断され俺の命はまず間違いなく。そして二階堂さんや姉さんの命が危ない。」
「いやいやそんなこと普通じゃありえないでしょ。もう冗談ばっかり言うんだから。でも工藤君妹がいるんだ。どんな子なんだろ?」
「冗談じゃない。命が危ないんだ。嘘じゃないんだ!信じてくれ!」
そして前回家に上がり込んだ時のことをすべて話した。家に上がって命を狙われたこと。見事な機転で乗り切ったこと。昆布茶を出されたこと。工藤に告白する女子をすべて遠ざけることを材料に交渉をしたこと。そのすべてを話して必死に頼み込む正治。しかしその言葉は結局信じてもらえず工藤の家の前まで着いてしまう。
「おしまいだぁ。俺はもうだめだぁ。」
「私は不審者。私は不審者。私は不審者・・・」
この様子をみて光は思う。
「なんでこんな状態になってるんだろ。」
とりあえずインターホンを押し反応がないかを待つ。するとドアが開きそこには可愛らしいニッコリ笑いながら女の子が立っていた。そう茜である。
「あっすいませーん工藤君いますか?」
そういった瞬間何か鋭利なものが光の顔の横を通りすぎ壁に刺さる。
ギギギッという音がするような動作で光は壁に刺さったものを見る。そこには彫刻刀が壁にきれいに刺さっていた。そこで光は察した。ああ正治君が言ってたのは嘘じゃなかったんだと・・・。
「お兄ちゃんに近づく女の人なんて私知りませんよ。人違いじゃないですか?あれ?正治先輩じゃないですか?これはいったいどういうことですか?」
「ヒィ!」
怯える正治。前回茜と会ったときは自分一人がターゲットだったためのらりくらりと会話で躱すことができたが今回は女性陣がいる。そのため前回ほどうまく躱す手段が思いつかず怯えているのである。そして正治は今回ニッコリと笑っている茜がそれほど怖かった。
「とりあえず立ち話もなんですし上がって下さい。お茶くらい出しますよ。」
そういって三人は家に上がり込む。これが生活魔法研究会と工藤の妹、茜との初めての出会いだった。
不審者のくだりは作者の実話なんだ・・・
あれは恐ろしい事件だった。




