入学式 前編
ここは少し違う可能性から生まれた地球。この世の中には科学以外にも少しだけ魔法が発達し、生活に便利な魔法。略して生活魔法という呼び名で広まっている。この生活魔法によって言語は勝手に翻訳されどこでも監視の目を持たせることが出来るため犯罪も少ない平和な世界となっている。
そんな平和な時代の中・・・
近藤正治は困っていた。
「姉さん。本当に替えの制服はないのでしょうか・・・?」
「ないよー。そのソースをがっつりこぼした制服一つだけ。」
彼の名は近藤正治。日本時の平均身長と同じくらいの身長で顔面偏差値は普通くらいの何処にでもいる平平凡凡な顔をしている。
本日は正治の通う時定学園の入学式。正治は叔父の元から離れ立派な高校生になるということで楽しみにしていた。しかし朝食で制服にソースをこぼすという凡ミスをやらかしてしまっていた。
そんな状態で彼の頭の中の思考はというと・・・。
このまま入学式なんかに出てみたら「正治君は服にソースをついてるでやんす。今日から正治君はソース魔人でやんすー。」とか某ゲームの眼鏡キャラみたいにあだ名を広められ、先生や可愛い女の子、あるいはこれからできるかもしれない彼女にも「ソース魔人」と呼ばれるに違いない。
などととても豊かな想像をしていた。
「姉さん。そこの入学式のプログラムを見せて。」
「はいよ。」
ソファの近くにおいてある入学式のプログラムをちょっとつり目で怖い印象を持つけど美人な姉こと近藤桜から受け取りつつ正治はこの状況を乗り越えるために頭をフル回転する。
入学式のプログラムを見ると9時ごろから入学式が始まり来賓や校長、生徒会長等の挨拶があり11時頃には終わる予定となっていた。その後には明日の流れが書いてある。クラス発表や多くの生徒と関わるのは主に明日からとなっている。
「入学式は午前中のみ・・・。クラス発表は明日。席は指定なし。つまり入学式さえ乗り越えられれば・・・。」
ブツブツとつぶやきながら策を練る正治。そして悩むこと数分、何かを思いつき満面の笑顔を浮かべながら一つの作戦を練り上げた。
「姉さん。ひとつお願いがあるんだ。」
正治の頭の悪そうな笑顔をみて何かを察した姉、桜はにやりと笑みを浮かべながらこう答える。
「ほぅ。それで今回はどんな頭の悪い作戦を思いついたんだい?」
「フッ、俺がいつ頭の悪い作戦を立案したことがあったんだい姉さん?」
今までにやってきたことを考え自信満々に正治は答える。
「いつもでしょ。せっかくエロ本の隠し場所をバレないように本のカバーを張り替えたりしているのに手に届く範囲に置いとくからあっさりバレたり、その際に言っていた言い訳も・・・」
「姉さん!それ以上は言ってはいけない!俺の家族内の地位に関わる!」
訂正。正治が立てた作戦にろくなものなんて一度もなかった。
「私たち二人の間の何処に地位なんてあるのよ。どっちにしろあんたの地位は私よりも下よ。」
「なん・・・だと・・・!?」
バカな会話を繰り広げる姉弟。このままでは話が進まないので桜は話を元に戻す。
「それで?どんな墓穴を掘る作戦を練ったんだい?」
「さっきより酷くなっているような。」
「気にしない。気にしない。」
「まぁいいや。入学式は午前のみ・・・誰とも話さなければ・・・この魔法で・・・。」
周りに誰かいるわけでもないのに内緒話のように小さな声で話す二人。
「フムフム。なるほどねー。私は別に問題ないよ。それにしてもそちも抜け目がないのぅ。」
「いえいえお代官様ほどでは・・・。」
正治の作戦に結局ノリノリの桜。仲の良い姉弟である。
「よし!準備はできた!いざ入学式へ!」
「いってらっしゃーい。」
正治を見送り生活魔法で制服の汚れを落としながら桜はつぶやく。
「あんなことしなくても生活魔法のクリーンで簡単にソースのシミくらい落とせるのに。ホント才能の無駄遣いな生活魔法なこと。バカだねぇ。まぁ正治だししょうがないか。」
「ったく。なんだあの入学式!あのハゲ校長の話長すぎるだろ!」
そう言い放った男の名は工藤道則。身長が他の男子よりも少し高め顔面偏差値は上の方といってもいい容姿をしている。その胸元には入学おめでとうと書かれた安っぽい造花がついている。彼も新入生のようである。
その工藤道則はイラついていた。
入学式であまりにも無駄に長い校長のお話で午前中で終わるはずだった入学式が昼まで伸びてしまった。その長い話は謎の体育館に吹く突風により校長のカツラが飛び強制的に終わったのだが、誰もがグッジョブと思っていたことだろう。恐らくどこかの誰かがイラついて魔法を使ったのだろうと推測できるが・・・。
工藤は弁当等は持っていないため誰でも使用可能となっている食堂を利用するため学園の敷地内を歩いていたのだが。
「ここ、どこだ?」
気づけば人気のないところにいる。先ほど地図を見て校内には食堂がないことを確認し、敷地内を歩いていたのだが広い敷地のために軽く迷子になっていた。
「入学式は長引くし、腹は減るし、迷子にはなるしでツイてないな。道を聞きたいけど周りに誰かいないかな?」
キョロキョロと周りを見回し道がわかりそうな人を探す工藤。そこに都合よく女子生徒の制服に身を包んだ人を発見し声をかけるために近づく。
「すいませーん。食堂に向かいたいんですけどどこにあるか知りませんか?」
「えっ?」
そして工藤は目を見開き声を掛けたことを後悔する。
そこには女子の制服に身を包み、入学おめでとうという安っぽい造花を胸につけた、
男子生徒がいたのだった・・・。
ここには登場した魔法を書いていきます。正直魔法はすべて作者があればいいなぁ程度の妄想の産物です。
生活魔法クリーン
汚れやシミを簡単に落とせる。これで頑固なシミも簡単に落とせる。汎用性が高いためまた出てくる可能性は高いです(笑)




