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【Web版】威圧感◎  作者: 日之浦 拓
本編(完結済)

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おとうさんの猫人族講座(夜の部)

ケモナーなオッサンがその好みをガッツリ語りますので、苦手な方はご注意下さい。

次回に今回のあらすじを記載しますので、駄目そうなら気にせずに読み飛ばしてください。

「おぉ、そうかそうか。興味があるか。そりゃまあ若い男なら興味があるよなぁ。ああいいぞ。当然だから恥ずかしがるこたぁねぇ。むしろ無い方が驚きだ」


 今日一番の笑顔を浮かべて、ガラルドさんが何度も大きく頷いている。その様子にちょっと早まった気がしなくもないけど、ほんのちょっと前にミャルレントさん……というか、猫人族(フェリシアン)とそういうことをするのはどうなんだろう? という疑問を感じた僕としては、同じ人間の男であるガラルドさんの実体験を交えた話は是非とも聞いてみたい。それは純粋な好奇心であって、決してやましいことではないのだ。頭の上に戻ってきているえっちゃんがプルプル震えて何かを伝えてくるが、そんな浮ついた気持ちではないのだ。無いったら無いのだ。


「えっと、それじゃお願いします」


 何となく厳かな気持ちになって正座をして姿勢を正す僕に、ガラルドさんは最後に満足げに大きく頷いてから顎に手を当て思案顔になる。


「よーしよし。そうだな。まずは何から……ああ、アレだ。猫人族(フェリシアン)を撫でる行為についてからいくか? うん、まずはそこからにするか。

 と言っても、基本的には人間とかと変わるわけじゃない。子供の頭を撫でるくらいなら問題ないが、頬や顎を撫でたら駄目だ。そんなの猫人族(フェリシアン)じゃなくたって、普通の人間の女の子でも駄目だろ」


「あー、はい。全くその通りだと思います。本当に御免なさい」


 言われてみればその通りだ。ミャルレントさんの身長も僕より大分小さかったので、感覚的には150センチくらいだと思う。で子供だと更に小さくて、さっき思わず撫でちゃったミャリアちゃんは1メートルは絶対無い……多分70センチくらいだったと思う。その辺になると「だいぶ大きめの猫」な感じが強くて思わず撫でちゃったけど、これ日本に置き換えれば、公園で遊んでいた見ず知らずの女の子の頬やら顎やらを撫で回していたってことだ。

 うん、事案だよね。声をかけて挨拶するだけでも回覧板に注意喚起されちゃうご時世に、直接タッチは完全アウトだ。ここは日本では無くファンタジーな世界なのでその辺は大らかな可能性もあったけど、少なくとも父親が見て駄目だと判断するようなことをしたら駄目だろう。大いに反省して繰り返さないことを心に誓うしかない。


「まあ顔見知りの子供なら話は別だろうが、子供を攫う屑どもと間違われたくないならあんまり無茶はすんな。

 で、それはまあ常識として、猫人族(フェリシアン)を撫でるときに気をつけるのは、逆撫でしないことだ。ほとんどの猫人族(フェリシアン)は毛並みに強い美意識を持ってる。故にそれを乱す逆撫では大抵の場合嫌がられるから気をつけろ。俺が知る限り、例外は1つしかない」


「逆撫では駄目……と。それで、その例外というのは?」


 出来ればメモを取りたいところだけれど、流石にメモ帳なんてものは見たことが無い。仕方ないので言葉に出して忘れないように復唱しつつ、ガラルドさんに次の言葉を促す。と、ガラルドさんはニヤリと笑って……


「そりゃ勿論、惚れた相手に性感帯を責められる時だ」


「……おぉぉ…………」


 その口から飛び出したダイレクトな単語に、僕としては小さく唸るくらいしかできない。


「毛並みにこだわりがあるだけあって、猫人族(フェリシアン)の手触りは抜群だ。長毛種と短毛種でも違うが、俺の嫁さんは短毛種でな。サラサラした雪のような柔らかな手触りは1000年撫で続けても飽きる気がしねぇ。ベッドの上で抱きしめるなら当然俺だって素っ裸なわけだろ? そうすると全身でその毛並みを堪能できるわけで、あれは正しく天国だな。

 それと、猫人族(フェリシアン)は人間基準だとちょっとだが体温が高い。それがまた抱きしめると暖かくてな。今みたいな夏場だとちょっと熱いくらいだが、それもまた趣があっていい。汗だくで抱きしめ合うのもいいもんだ。


 で、猫人族(フェリシアン)って背が小さいだろ? こう抱きしめてやるとな、ちょうど手が相手の尻尾の付け根の上くらいにいくんだが、ここが猫人族(フェリシアン)の性感帯なんだよ。そこを優しく逆撫でしてやると、ぞわぞわした刺激が伝わるらしくてな。スゲェいい声で鳴くんだよ。こう喉の奥から絞り出すような、甘くて切ない感じでな。そんな声を聞かされたらたまんねぇだろ? なあオイ?」


「あ、はい。そうですね……?」


 凄く熱く語るガラルドさんに生返事を返しつつ、僕もそう言う状況を想像してみる。脳内に浮かぶビジュアルは、全裸で猫に抱きつく僕……うん、これだとただの変な人だ。あまりお友達になりたくない類いの趣味の人にしか見えない。


 でも、これで相手がミャルレントさんだったらどうだろうか? そこにはちゃんと意思があり、感情がある。互いを好きだと思うからこそ抱きしめ合い、そういう感じのことをしたら、そういう感じの反応が返ってきて……


 おぉう。これは駄目だ。この妄想はいけない。少なくともこれからまだ人前に立つ予定があるときに考える事では絶対に無い。立った結果立てなくなるなんてアホなことが浮かぶくらいにはヤバイ。僕は何とか頭を振って妄想を追い出そうとするが、絶好調なガラルドさんの言葉は止まらない。


「知ってるか? 猫人族(フェリシアン)ってのは、人間と違ってオッパイが8つもあるんだが、うち真ん中の4つはちっちゃい乳首がついてるくらいで毛並みに隠れてほとんど見えない。まあだからこそ敏感だったりする奴もいるからそこを責めるのもアリなんだが……いやそうじゃねぇ。残る4つ、一番上の胸と一番下の胸は、ちゃんと膨らむんだ。勿論個人差はあるしどんなにでかくなったって人間としてならかなり小さい部類に入る程度だが、それでもちゃんとオッパイな感じになる。わかるか? 上だけじゃなく、下もだぞ? 下のオッパイは、ヘソより下だ。正面から抱き合ったら、男の腰の位置にオッパイがあるんだぞ? 甘い鳴き声でいきり立った勇者を、聖母の如き柔らかい優しさが受け止めてくれて……」


「アナタ?」


「「うひっ!?」」


 突然背後から声をかけられ、僕とガラルドさんは揃って変な悲鳴をあげてしまった。バッと振り返れば、そこにいたのは雪のように真っ白な輝く毛並みの猫人族(フェリシアン)の女性。腕を組み仁王立ちし、ピンと立った尻尾をゆーらゆーらと揺らしている姿は迫力満点だ。


「や、やあマイスイートハート。こんなところでどうしたのかな?」


「どうした? どうしたですか……私がここに来たのは、子供をほっぽらかして戻ってこないどうしようもない駄目男を探しに来たんですが……」


「へ、へぇ! そんな駄目な奴がいるのかい? それは大変だ。一緒に探そうか?」


「いえ、もう見つかりましたのでご心配なく。もっとも、見ず知らずの若い男性を捕まえて、こんな日の高いうちからする様な内容ではない話を声高に叫ぶという最低をさらに下回る屑の所行を見せつけられては、見つけたところで連れ帰る必要は無さそうですけどね」


「い、いやいや、これは違うんだって! これはそんな下世話な話じゃなくてだな、もっとこう崇高な目的が……な!?」


 怒り半分呆れ半分、つまり屑を見る目100%で睨み付けられ、ガラルドさんが必死に僕に同意を求めようとしてくるけど、正直どうしていいか解らない。心情的にはガラルドさんを助けてあげたいけど、だからといってしていたのはエロトークに他ならないので、どう擁護すればいいのかが僕には全く思いつかない。ただひとつ、ほぼ間違いないけど確認しないといけないことがある。


「あー、えっと、すいません。僕、あの、自分はトールという者なんですけど、貴方は?」


「トール? ああそう……私はミャルトルテ。そこにいる路傍の石ころより価値の無い駄目男の妻……いえ、貴方にならこう言った方がいいかしら?」


 そう言ってミャルトルテさんがニコリと笑い、その尻尾がシュピンと伸びて――


「初めまして。ミャルレントの母です」


 ……グッバイ初恋。

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