黒点
「なぁサリィ、どう思う?」
とりあえず今の電話の内容をサリィに伝える。あんな話を聞いた以上、平気な顔で先輩の前に出るにはもう少し時間を空けた方が良さそうだ。屋上の隅に座り、夕日を見つめて考え込む。
「ご主人様と敵対するなら、それは倒せばいいだけなのでは?」
「そうなんだけどさ。何か対策をして、狙われづらくしたりとか出来ないかなって」
「なるほど。無益な殺生はしないと」
「別に殺す訳じゃ⋯⋯いや、どうだろうな」
命のやり取り。殺す殺されるの関係の奴らに、加減などして勝てるものだろうか。そこまで考えて、俺は命をそんな簡単に考えている自分に恐怖を覚えた。
人の命、それは多分この世で一番重い。それは俺だって心から思っている。だけどもそれは、命のやり取りとは無縁な生き方をしてきただけだから言えるのかもしれない。
「どうなんだろうな。人を殺すって」
「殺すなら殺される、それだけです」
「案外冷めてるんだな、お前」
「死神ですからねぇ」
抑揚のない声で死神は語る。そんなサリィに、俺は何も感じなかった。恐怖も怒りも、喜びも愉悦も。ただ、一つの言葉に過ぎなかった。
「まあ、その時になったら考えましょう。しかもご主人様の魔法、殺す事は難しそうですし」
「⋯⋯そうだな」
心の奥底に暗い気持ちを沈める。今は、ただどう対処するかだけを考えればいいはずだ。即殺し合いになるだなんてのは、無いはず。
「うっし、戻るか」
「はーい。お待ちしてますよ」
立ち上がると、少し心が軽くなった。悪い方に考えないようにしよう、そう自分に言い聞かせる。大丈夫、何も起きやしないさ。
きっとこの胸のざわめきは、夏のせいなのだ。悪い予感ではない。まだ、夏は始まったばかりだ。




