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彩色の魔女  作者: 唄海
3章 第零種永久機関
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夏の空

 ようやくの昼休み。疲れきった体を少しでも休めたいが、世界はそう簡単には出来ていない。

 ガルとライヴは相変わらずだし、ベルは今どこにいるのか分からないので連絡が取れない。今動けるのは、俺と小夜だけだ。


「真、飯買いに行こうぜ」

「早くしろ。売り切れるぞ!」

「悪い、金やるから買ってきてくれ。カツサンド二つ」


 倉﨑と桐山が立ち上がり、俺の席の前に並ぶ。財布から五百円玉を取り出し、二人に預ける。カツサンド二つなら、これで十分足りるだろう。


「小夜、とりあえず一年の所に行ってみようぜ」

「お腹は減らないの?」

「いや、あのさ」

「一緒にカツサンド食べましょう?」

「あの」

「真?」

「⋯⋯」


 テコでも動かなそう。


「真、行ってやれって。ほら、返すわ」

「んじゃ、俺らは先に行ってるわ」


 なぜか早足で去っていく二人。途中チラリとこちらを振り返ると、グッと親指を立てられた。


「⋯⋯売店行くか」

「えぇ、行きましょう!」


 という訳で、一階にある売店へと行く事にした。混んでいたものの、先に行ってた二人が目当ての物を確保してくれていたので、無事手に入れることが出来た。


「細かいのはいいや。百円玉のトコだけくれ」

「いいのか?」

「いいって事よ」

「悪いな」


 カツサンドを渡すと、奴らはまた早足でどこかへと行ってしまった。


「このまま教室ってのも面白くないし、屋上でも行ってみる?」

「真が行きたいのなら、私はどこでも構わないわ」

「んじゃ屋上行くか」


 階段を上りきり、重い鉄の扉を開け放つ。さんさんと強烈な日が差す屋上には、人っ子一人もいなかった。俺はその一角に、迷うこと無く進む。


「実はここに日陰があるんだ」

「あら、上手く隠れてるわね」

「お気に入り」


 秘密基地を自慢する小学生の様に、目を輝かせながら胸を張って見せびらかす。


「いい景色じゃない」

「だろ?」


 そこに腰を下ろし、買ってきたカツサンドを食べ始める。パンにぎっしり詰まったカツが、空の胃に突き刺さる。美味い。


「それにしても、いい景色ね。空も綺麗だし、ピクニックの気分だわ」

「このまま昼寝って流れだと最高なんだけどな⋯⋯」


 食後の眠気と、心地よい風が相まってここは最高の昼寝スポットだ。だからといって油断してしまうと、午後の授業があっという間に過ぎていってしまう。


「ちゃんと授業は受けましょう。アナタと一緒なら、どんな時間でも楽しいもの」

「そう言ってくれると嬉しいよ」


 何か温かい物が、胸をじわじわと染め上げてゆく。恥ずかしくなって小夜から顔を逸らし、俺は街の景色を見て気を紛らわす。

 と、ポケットに入れた携帯が鳴り出す。着信は、どうやら海千流からのようだ。


「ごめん、ちょっと外す」

「ゆっくりどうぞ」


 小陰から這い出て、携帯を耳に当てる。


「はいはい」

「あーさっちゃん、なんか生徒会長さんが用事があるから放課後生徒会室に来てって」

涼城(すずしろ)先輩が? なんだろ」

「さあねぇ。伝言だけして帰っちゃったから」

「分かった、とりあえず行く。悪いな、わざわざ」

「気にしないで。それじゃ、遅れないようにね」

「はいはい」


 しばらく、切れた通話画面を見つめる。

 生徒会長──あの人は一体、俺に何の用だろうか。心当たりが無いだけに、不安の雲は厚く心を覆い尽くしてゆく。


「悪い、戻った」

「おかえりなさい。どうする、もう少し休んでいく?」

「まだ時間あるし、のんびりしてこう。転校生の件は、また時間があればでいいさ」


 ともかく今は、この幸せな時間を楽しむ事にしよう。俺は再び小陰に腰を落とすと、小夜と何気ない話に花を咲かせた。

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