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彩色の魔女  作者: 唄海
2章 英国の闘い
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帰還の黒

 決闘から一夜明けた今日。俺は一足先に、日本へと戻る事にした。帰還する前、俺は決闘の勝利報酬を受け取るためにアルクリアに会いに行った。


「約束通り、君には日本支部の設立をしてもらう。後日連絡が行くだろうから、その指示に従ってくれ」


 アルクリアはあの後、以外とあっさり俺の頼みを承諾してくれた。彼は彼なりに、迷いが晴れたのかもしれない。

 それに、ベル達とはまた別の手段で協力していくと言っていた。


「最初からそうすれば良かったんじゃない?」

「う、む⋯⋯でも、それでは小夜は守られなかっただろうし⋯⋯」

「⋯⋯そうかもね。でも、今なら大丈夫よ。真君が、きっと守ってくれるわ」


 蒼夜とアルクリアが、期待を込めた目で俺を見つめていた。


「心配は無用だ。小夜は何があっても、絶対に守ってみせるよ」

「素敵ね。惚れちゃう」

「蒼夜⋯⋯?!」

「嘘よアル。私は今でもアナタに惚れてるわ」

「⋯⋯あ、じゃあ俺は帰りますね!」


 何だかいたたまれなくなった俺は、颯爽と部屋を後にした。

 対立していたせいで一緒にいる所を見なかったが、今のやりとりだけで十分仲の良い夫婦だと言うことが分かったから良しとしよう。あれ以上いたら、砂糖を吐き出してしまいかねない。


「⋯⋯そろそろ、時間か」


 帰りはライヴが魔法で送り返してくれるらしい。いつもの研究室で待ってるから、時間になったら来いとライヴは言っていた。


「お土産も持った、部屋もあらかた掃除はした。うん、大丈夫だな」


 指折り最終確認を終え、俺は研究室の前に立つ。


「お、来たな」


 俺の到着を待っていたとばかりにガルが出てくる。相変わらずの目つきだが、それにももう慣れてきた。


「なんだ、見送りしてくれるのか。ありがとよ」

「気にすんな」

「全く楽でいいわね、本当に送るのはコッチなんだから」

「なんだライヴ、自信無いのか?」

「そうね。もしかしたら、海の真上に送っちゃうかもしれない」

「勘弁してくれ」


 ここへ来た時の事を思い出す。海の真上に転送された俺は、溺れて死にかけたのだ。思い出すだけで、鳥肌が立ってくる。


「ライヴ、緑さん。また少ししたら会いましょう」

「ええ、サリィも元気で」

「緑じゃなくてガルだ。じゃあな」


 いつも通り、突然サリィが魔法陣から顔を出す。思えばコイツはここで生まれたから、故郷はここになるのだろうか。

 ふと、ガルが俺の後ろをキョロキョロと見渡した。


「小夜はどうした。一緒に日本に行かないのか?」

「いや、小夜は後から来るらしい。荷物やら何やらの準備をしなきゃならないんだとさ。別に一緒に行ってもいいけど、何か忘れ物があっても困るだろうし」


 また服でも忘れてもらったら困る。それに、俺の方も彼女の為に準備がある。

 何、心配はない。彼女とは、またすぐに会えるのだから。


「待って。小夜と一緒にって事は、アンタ小夜と同じ家に住むってことなの?」

「俺ん家にホームステイ⋯⋯て事になるのかな?」

「へ、変態! 最低!」

「何で?!」


 何故か顔を赤らめながら罵倒するライヴに、ガルがゲラゲラと笑いながらこう言った。


「コイツがそんな事出来るわけねぇだろ。ヘタレオブヘタレだぜコイツ。せいぜい覗きが関の山だろうよ」

「そうそう⋯⋯ん?」


 ガルの言葉にうんうんと頷く。何だか馬鹿にされてる様な気もするが、かと言って否定するとそれはそれでライヴに何か言われそうなので黙っておく。

 この平和な結末。これも全て決闘に勝利したからこその結末だ。この結末を迎えられた事が、今は何よりも嬉しい。今日一日くらいなら、勝利の余韻に浸ってもバチは当たらないはず。


「ありがとな、二人共。お前らのおかげで、俺は俺の答えを出せた」


 手を差し出す。名残惜しいが、そろそろ行かなくてはならない。後から来るみんなの為にも、まずはさっさと残した仕事を片付けてしまおう。


「ああ」

「ええ」


 二人と握手を交わす。ほのかに胸が熱くなり、この二人と会えて本当に良かったと喜びが心を満たす。いつか何かを返せるよう誓い、俺はゆっくりと背中を向ける。


「じゃあライヴ、頼む」

「はいはい。海に落ちたら頑張って」

「大丈夫だ。信頼してるからな!」

「⋯⋯馬鹿ね」


 世界が歪む。割れたガラスの風景。その破片一つ一つに、この三日間の思い出が映る。その一つを掴もうを手を伸ばすが、届かない。

 それでいい。これから先、もっと沢山の思い出が作れる。それはやがて、破片ではなく一枚の大きな絵となるだろう。


「さて、帰ったら何からやろうか」


 これから続く未来に思いを馳せる。何はともあれ、俺は自分なりに今回の答えを出せた。この先も、小夜達と一緒に答えを出し続けながら歩いていこう。

 未来はきっと、まだ書きかけのキャンパスなのだから。

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