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彩色の魔女  作者: 唄海
2章 英国の闘い
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舞踏会

「よし」


 手足の感覚を確かめ、俺はゆっくりとベッドから立ち上がる。太陽は、遥か遠く頭上にどっしりと位置していた。

 朝、メイドさんは朝食と共に


「丁度正午に外に来るように、だそうです」


 と言った伝言を持ってきてくれた。

 外は眩むような晴天。からりとした空気は、戦いの雰囲気を十分過ぎる程に肌に伝えてくる。


「そろそろ正午ですね。準備は大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。お前の方こそ、魔力は十分か?」

「えぇ、バッチリです」


 俺から少し離れた場所で座っていたサリィは、ニッコリと鋭い八重歯を光らせながら笑う。真っ赤に染まった口が、この上なく頼もしい。

 先程、少しだけ血を分け与えた。


「今回は呪いがかからない程度に抑えたので、支障をきたす事は無いはずです」

「当たり前だ。あったらまずはお前をぶっ飛ばすからな」

「うひゃー、ご主人様いつになくピリピリしてますね」

「やべ、リラックスリラックス」


 おどけて見せながら、深呼吸を繰り返す。分かってはいるが、どうも緊張してしまう。


「さてと⋯⋯いつまでもここにいる訳にもいかない。行くぞサリィ」

「はい!」


 部屋を後にして、外へと向かう。小夜達はもう先に待っているそうだ。

 朝食が終わった後、小夜達は揃って部屋に来てくれた。頑張れよ、と短く励ましてくれたガル。負けたらぶっ殺す、と脅しにも似た激励?をくれたライヴ。要約すると敵の動きをよく見ろ、とアドバイスをしてくれたグルフ。大丈夫でしょう、となぜか余裕綽綽の蒼夜。そして──


「真」

「──あぁ、任せろ」


 彼女と交わした言葉はそれだけだった。それだけでもう十分過ぎる程に、伝わった。


「俺はきっと大丈夫だ。なぁ、サリィ?」

「もちのロンです。だってご主人様なんですから」


 外へと踏み出す。刃物の様に研ぎ澄まされた空気が頬を撫でる。

 外には、何十人もの人達が俺とベルの結末を見届けようと集まっていた。その中に、ハッキリと小夜達の姿も見える。


「よう、ベル。遅くなったな」

「いいや、丁度だ」

「そりゃあ良かった。俺は時差ボケが酷くてね、眠いったらありゃしねぇ」


 あからさまに調子が悪いといった素振りを見せながら、ベルの方へと歩み寄る。もちろん嘘だし、こんな簡単な嘘がバレないとも思ってはいない。ただ、少しでもいいから緊張を和らげようするとどうしても口数が増えてしまう。


「さっさと始めようぜ。暑くて仕方がねぇ」


 額を伝う汗を拭い、真槍を引き抜く。サリィも大鎌を手に、今か今かと待ち構えていた。

 だが、肝心のベルは何一つ変わらずに悠々と立ったままだ。


「舐めプか?」

「いや、君を見ていた。どうやら私が見ていた君は、数年前の君だったらしい」

「そいつはどうも。夏休みの観察日記にでもしたら多分楽だぜ。朝顔じゃ、イマイチ成長が見えづらいからな」


 ゲラゲラと笑いながら、それでも目だけはしっかりと敵を捉えている。ベルが本当に油断ならない相手だと、今更ながら感じる。


「⋯⋯始めようか」

「そうだな」


 一呼吸の内に、二人は距離を取って向かい合った。一人は獣のような笑みを浮かべ、一人は悠然と佇んでいた。


「ウィリディス家三十九第目当主、ベル・ウィリディス──」

「黒の魔女、黒峯真──」


 風が吹き荒れる。全ての魔法使い達が固唾を呑んで見守る中、火蓋が切って落とされた。


「いざ」

「参る!」

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