対話
暗い。遥かな暗闇が、辺りを埋め尽くしている。もう見慣れた光景だが、相変わらず好きにはなれない光景だ。
「よお」
「やあ」
そろそろコイツとの会話も慣れてきた頃合だ。軽く挨拶を交わすと、おそらくは地面があるべき場所へと適当に腰を下ろす。
「魔法の使い方には慣れた?」
「いや、あんまり。と言うかむしろ、使い方が下手過ぎて一回死にかけた」
「死にかけたか、それは困るな。真に死んでもらっちゃあ世界が救えないや」
カラカラと笑う声の主は、どこか楽しそうだった。
「救うって言っても、具体的には何をすればいいんだ? どうせやるなら、早く救った方が良いんじゃないか?」
「そうだね。出来ればそうしたいんだけど、残念な事に今はまだその時じゃないんだ」
「ふーん⋯⋯」
言っておくが俺は別に早死したい訳では無いし、死が恐ろしくない訳でも無い。けれどもそれ以上に、小夜達が消えてしまうのが恐ろしかった。
「でも、例えこの世界が救われたとしても⋯⋯きっと魔女狩りは続くんだよな」
今日のように、また罪の無い魔女達が巻き込まれてしまう。だとしたら俺が死んでしまっては、小夜を守ることは出来なくなってしまう。
「なら残された時間で、奴らを残らず滅ぼせばいい。どうせ時期が来るまで待たなくてはいけないからね」
「そいつは良いな」
問題は、この夢が覚めた後に覚えているかという事だ。この夢の中にいる限りは、自分自身の命を使って世界を救う事も、その為に俺の魔法が必要な事もハッキリと思い出せる。けれどそれは所詮夢、目覚めれば忘れてしまう。
「この仕様どうにか何ねーの?」
「諦めて」
「ウーン⋯⋯」
空が白みがかって来たのが分かる。どうやら、今回はここまでの様だ。
「また、会いに来てくれ」
「あぁ。また何か、相談に来るよ」
立ち上がり、その場から背を向けてる立ち去る。
「ねぇ真。今は、幸せかい?」
「ん?」
ふと最後に、背中に向かってこんな質問が飛んできた。幸せ。そんなのは、言うまでもない答えだ。
「俺はいつだって幸せだよ」
「そうか。ならいい」
そうしてまた夢は覚める。俺はまた戦い続け、未来へと歩き続けるのだろう。
例えそれが、死へと向かう道だとしても。
「⋯⋯あれ、ところで今更なんだけどアイツの名前聞いたことねえな」
まあいいや、と歩を進める。どうせ次もまた、下らない話をしに来るのだから。




