(死)神出(吸血)鬼没
「ご主人様⋯⋯」
「お前は相変わらず神出鬼没だな。死神と吸血鬼だけに」
「ご主人様、笑えないです」
「はは」
どこか乾いた笑い声を上げる俺と、そんな俺をらしくない表情で覗き込むサリィ。精神的に追い詰められると、全てをどこか他人事のように見てしまうのが俺の悪い癖だ。
「分かってる、俺が分かっていなかったことも分かってる。何世紀も続いて築き上げられた価値観は簡単には変えられないって事も分かってる。魔女狩りの奴らが、一体何人の魔法使いに手をかけてきたかも知らないけど分かる」
何より、自分がどれほどまでに間抜けで能天気かも分かった。何が政略結婚だ、何が決闘だ。
ベルが、小夜が。何を背負わされて生きてきたかも考えずに、軽い気持ちで魔法使いになった俺が介入するなど、馬鹿馬鹿し過ぎて笑えてくる。
「そうだよな。ガルもライヴも、小夜もベルも。皆、ずっと魔女狩りと戦ってるんだもんな」
また後悔だ。海千流の時と同じ、自分の愚かさが招いた結果に対する後悔だ。
「クソ⋯⋯そりゃ大勢の魔法使いが俺を煙たがる訳だ。何しろ700年の歴史を一般人にぶっ壊れるんじゃ、たまったもんじゃないよ。闇討ちされないだけマトモだ」
俺が相手側だったら、間違いなく罵倒を浴びせてるだろう。無関係を装って貰えるだけ、十分に幸せだ。
「ごめん、少し休むわ。起こさないでくれ」
「⋯⋯はい。少しですよ」
どうしようもない罪悪感で、体が押しつぶされそうになる。堪らずベッドに横になり、瞼を閉じる。眠ると言うよりは、無心になって思考を停止させる感じだった。
どうやらサリィは、俺の言いつけ通り起こす気は無いらしい。
「⋯⋯⋯⋯」
閉じた瞼の上から、腕を影らせ視界を完全に闇に落とす。何かやらなければならないはずなのに、何も思いつかない。
「ベルの言った通り、俺は魔法使いに向いてないな」
眠らないが覚めもしない意識の中、いつかベルから言われた言葉を思い出した。
「⋯⋯小夜」
意識が遠のいていく。現実から逃げるように、俺は徐々に徐々に意識を停止させていく。
そんな中発した少女の名前は、一体なんの意味があったのか。




