彩色
イベントやってたら更新遅れてしまいました……
6話目です、よろしくお願いします!
「そういえばアンタはどうしてあんなとこにいたんだ?」
魔法についてあれこれ聞いた後に俺はふと湧いた疑問を少女にぶつけてみる。
この土地は確かに都会で人は集まるが魔法や魔女繋がりのものと言えばせいぜい教会くらいしかない。
そんな土地になぜ魔女がやってきたのか。
「俺の予想としては観光だと思うんだが。それならこの街に詳しい奴を紹介できるぜ」
「違うわ、全然」
「違うのか、じゃあなんだ?実は魔法関係で何かここにあるのか?」
「いいえ、それも違うわ。いや、違わないかな。人を探しに来たのよ。この街に」
違わない、という事はおそらくその人は魔法関係なのか。
「誰なんだそいつは?有名なやつなのか?」
「それが……わからないのよ。魔法使い、という事だけはわかってるのだけれど」
「なるほど、んでそいつにあってどうする予定だったんだ?」
「そこまで詳しい事は話せないわ。アナタを巻き込みたくはないから」
「いや、魔法とかこの街に魔法使いがいるとか魔女狩りのヤツに喧嘩売った時点で十分巻き込まれてる気がするんだが……」
「そうね、それは確かにそうだわ。だからこの事は内緒にね。」
そう言って少女はしーっと唇に指を当てこちらを見てくる。
その仕草はとても可愛かった。
「わかった。てか話しても信じてもらえないだろうけど」
「そう、でも日本の人は皆そんな話するの好きじゃない」
だから誰だこの少女に日本人の趣味について曲解した事を教えたのは! 当たってるがそれは架空の話だ!
「ま、まぁな。とりあえず大丈夫だと思うよ。ところであの大男はどっから出てきたんだ?追っ手か?」
「あなたさっきの話聞いてた?」
「いや、やっぱ気になるし…」
「しょうがないわね全く。まぁ、助けてくれたお礼に話してあげるわ。特別にね」
「やったぜ。」
「アイツは私がここに人を探す事をしって待ち伏せしてたのよ。どうして知ったかは知らないけどね。もしかしたら上からの命令かもしれないし独断かもしれない。そこはわからないけどとにかくアイツは私を狩りに来たのよ」
「それは大変な事で……いや待てよ、それ庇った俺って結構やばくね?」
「だから巻き込みたくないって言ったじゃない。話聞いてないわねアナタ」
「うわぁ…短い人生だった」
「さすがにそんなことはされないわよ。魔女狩りのヤツらは基本聖職者気取りだから魔女や魔法使い以外には酷いことはしないわ。例外もいるけど」
「ちょっとまて例外ってなんだ例外って」
「例えば教会の教えなんか気にせずに魔女狩りの事しか考えてないヤツとか」
「もう嫌だー!記憶消したーい!」
「残念ながら青色はその系統は使えないのよ。紫色あたりなら使えるらしいけど」
「そんなこと聞いてねぇ…てかそうだ、あんたさっき言ってたよな。実は誰でも魔法は使えるって」
「えぇ、言ったわ」
「なら俺も使えるんだろ?どうやって使うか教えてくれ!」
「あなただから人の話聞いてた?」
「いやもう大体聞いちゃったし。ほら、自衛の為にも使えるじゃんか、魔法」
「あなたもっとマジメに考えなさいよ。魔法使ったらそれこそ狩られるわよ」
「いやもう知っちまったし例外の人達からしたらその時点で標的だろ。ならもういっそのことそこまで踏み込んじまおうかなと思ってさ」
「ホントに狩られる覚悟があるの?ホントに?」
「あぁ、言っただろ。日本人はこういうの大好きだしさ」
「はぁ………自衛用だけよ。それにちゃんと隠しておくのよ?テレビとかに出たらそれこそ狩られるからね」
「わかったわかった。ほら、早く教えちまった方がいいぜ。あの大男が来るかもしれん。そしたら自衛する前におじゃんだ」
「来たらとっくに来てるわよ。わかったわ。それじゃあまずはアナタの『色』を知らなければならないわ」
「俺の……『色』」
『色』はその人特有の属性みたいな物でこれによって使える魔法の種類が違う。そんな話だったな。
「とりあえず紙とペンを借りていい?そこにあるヤツ」
少女は隣にある机を指さす。机は少女の方が俺より近いのに……と俺はふと湧いた愚痴を心に留め机に向かう。
「おう、はいこれ」
俺は机の上にあったペンと大きめのメモ用紙を少女に渡す。
少女はそこへ不思議な模様を書き始めた。
完成した模様を見るとそこには、
「魔法陣?」
「そうよ、大体魔法関係は魔法陣を使うでしょ?」
「こんなペンとメモ用紙でいいのか?もっと羊皮紙とか羽ペンとかじゃなくて」
「あなたそれ凄く古いわよ」
「あぁ…そっすか」
どうやらRPGなんかの魔法使いさん達は古いらしい。
もしかしてスマホのお絵かきアプリとかで書いた魔法陣でも効果は発動するんだろうか。夢がない。
「とりあえずここにあなた特有の物……そうね、血がいいわね。この魔法陣に血を垂らしてみて」
「えぇ…痛そう」
余談だが俺は痛いのは嫌いだ。
「なんであなた狩られるのは怖がらないのに血は怖がるのよ」
「いや狩られるのも怖いよ。とりあえず血だな。ちょっと待っててくれ」
そう言うと俺は1階からカッターナイフを持ってくる。そして親指の先を切るとそこから出る血を魔法陣へ垂らす。
「そのくらいでいいわ。後はそこで待ってて」
そう言うと彼女は魔法陣へ手を添えて目を瞑る。
しばらくすると魔法陣は淡い燐光を放った。そしてその光が消えると少女は目を開き魔法陣を見る。
と、少女の目には驚きが浮かぶ。
「何色だったんだ?俺は」
「……驚かずに聞いてくれる?」
「なんだか嫌な予感しかしないんだが聞く」
「そうね、私も嫌な予感しかしないわ」
そう言うと彼女はこちらをじっと見つめて
「──────あなた、『黒』なのよ」
そう、はっきりと告げた。
─────────────────────────────
「『黒』……?」
「そう、『黒』よ。黒色。驚かずに聞いて。黒色は魔法の世界においてもたった1人しかいなかったのよ。今までの全ての歴史においてね」
「そんな物がなぜ俺に?」
「わからないわ。けれどあなたは本来こちら側の人間である可能性が高いわ。あなた、ご両親は?」
「普通の人だぞ、海外いるけど」
「なんで……いや、思えば不思議だったの。なぜあなたがあの時私達を見つけられたのか」
「なぜって……俺は廃墟とか巡るの好きだから偶然に……」
「なるほど、引き寄せられたのね。こちら側の力に」
こちら側、とはおそらく魔法の世界だろう。
となればやる事は1つだ。
「予定変更だ。俺を弟子にしてくれ。俺も魔女狩りと戦う」
せっかく貰った力だ。元々魔法の素質があったのなら使わなきゃもったいない。
「馬鹿じゃないの?たまたま『黒』だったからってわざわざこちら側に来る必要なんかないのよ?それに約束したでしょ、自衛だけって」
「いやぁ、なんか凄そうな力があるって聞いたらめっちゃ燃えてきたわ。それに───」
「それに?」
俺はずっと気になっていた事がある。
少女はさっきから座りっぱなしなのだ。起きた時からずっと。紙とペンの時だってわざわざ遠い方にいた俺に取らせた。
つまり少女は─
「まださっきのダメージあるだろ。しかも結構ヒドめに。それじゃ戦えないだろ」
「そ、それは……そうだけど……でも追ってこないなら戦わなくていいじゃない!」
「どうせこの街で人探しするんだろ?だったらまた来る可能性があるじゃないか。だったら今のうちに潰しておいた方がいい」
「でもそれじゃあ、あなたは何も得しないじゃない」
「得ならあるさ、あんたと共に戦える」
そう、俺は燃えていたのだ。自分に特別な力があった事に。このシチュエーションで燃えなきゃ男じゃない。それに───
「なんだがあんたはほっとけない。あんたは実はちゃんとお礼が言えるいい子だ。さっきだって助けてくれたお礼に、と俺の質問に答えてくれたじゃないか」
そう、少女は実は優しい。この短時間でもそれは十分わかった。
だからこそ危なっかしい。
「だから俺を弟子にしてくれ。そして俺に魔法を教えてくれ!
頼む!」
「……ホントのホントにこちら側に踏み込んでくる気はあるのね?」
「あぁ、もちろんだ」
「まぁ、別にここに居られなくなるわけじゃないし……まだ見つかってないしね……うん、わかったわ。あなたを私の弟子にしましょう」
「よっしゃあ!」
「でも私は青色だから黒色は教えられないわよ。教えられるのは魔法使いの基礎だけ」
「十分だ。」
「そう、なら大丈夫よ。魔法は自覚があれば自然と使えるわ」
「そうか、なら大丈夫だ。早速あの大男探しに行ってくるわ」
「いきなり実戦?!本気なのあなた?!」
「この時点で俺ももうそっち側だろ?だったら家襲撃される可能性もある。とっととぶっ飛ばした方がいいさ」
「そう……じゃあ約束して。狩られないって」
「おう、大丈夫だ。初陣は勝利フラグだからさ」
「勝利フラグ?」
「いやなんでもない。とりあえず寝ててくれ。俺がヤツをぶっ飛ばしてくるからさ」
「いや、さすがに初陣の魔法使いが魔女狩り連中に通用するわけないわ。私も行く」
「えぇ……マジでェ……」
「相手は何人も魔女を狩ってきた。さすがにあなた1人じゃキツいわよ。私だって歩けるくらいには回復してるし」
そう言うと少女は立ち上がって部屋を出る。
「さぁ、行きましょう。あの大男はまだあの場所にいると思うから」
「あ、そうだ!」
「何よ?」
「武器持って行っていいか?無いよりはマシだろ?」
「好きにしなさい」
俺は物置から武器になりそうな物を物色する。さすがに刃物類をぶん回して戦うほど度胸はないので、修学旅行の醍醐味とも言える木刀にした。これなら扱いやすい。剣道とかは全く知らないけど。
「道案内をお願いできる?」
「あぁ、そっか。気絶してたもんな。わかった。任せろ」
「さっき通った道は使わないほうがいいわ。回り道して行きましょう」
「わかった。そういえばまだ聞いてないことがある。俺の魔法はどんな系統の魔法なんだ?てかあんたはどんな魔法がつかえるんだ?」
「私の青色は水と癒し関係の魔法ね。前にも言ったけどあの龍をけしかける魔法は数少ない攻撃用の魔法なのよ」
「ちょっと待てそれガッツリサポート役だよな。絶対戦闘役じゃないだろ」
「そうよ。今更気づいたの?」
「うわぁ…俺の魔法が攻撃用だといいぜ……」
「それなんだけど……」
少女が凄く申し訳なさそうにこっちを見つめてくる。
なんだか凄く嫌な予感がする。
「黒色は前例が1人しかいない上にその1人も謎だらけなのよ。だからあなたの魔法、何が使えるかわからないわ」
「それ家出る前に言ってよ?!」
「まぁ大丈夫よ、今ここで調べるから。あなたは『色』を自覚した。何かしら魔法は使えるわ。とりあえず力を込めてみて」
俺は言われた通り体にある不思議な力を込めるイメージで体を強ばらせる。
「そういえば呪文とか詠唱しなくていいのか?」
「あれ実は意味無いのよ、詠唱。なんか間違った知識が出回ってるけど別にいらないわよ」
「ちょ、紙とペンで魔法陣書いたり呪文の詠唱しなくてよかったり色々とイメージ崩れるな……」
「さすが日本ね……」
違うと思うぞ、それ。日本人への風評被害だ。
「で、解ったのか?俺の魔法」
「えぇ、とりあえず身体能力の強化は解ったわ。それ以外はよくわからない物だらけだけど」
「身体能力の強化か…とりあえず攻撃っぽくてよかった」
もっとビームみたいな撃ったりしたかったがそれは後から研究するとしよう。そんなことを考えながら歩くとあの廃墟が見えてきた。
「あんたはここで待っていてくれ。考えたくないがもし何かあったらサポートしてくれ。逃げるから」
「わかったわ。無理はしないですぐ逃げるのよ」
「了解!」
俺は隠れていた樹から身を出して廃墟の様子をうかがう。
大男は廃墟の屋上に佇んでいた。回り道をしたおかげかどうやら背後をとることができていたようだ。
俺はこっそりと先程少女を助ける時に飛び降りた屋根を掴むとよじ登る。確かに身体が強くなってる気がしなくもないと感じる。
「この魔法って常時発動するタイプなのか?」
てか魔力とかどうなってるんだろ。後で聞いてみよう。
そう考えながら屋上まで登り終わると貯水タンクのあった高台に立ち───
「おい」
────!?
大男が驚きこちらに振り返る。
いいぜ、その表情。相手を出し抜くのは気持ちがいい。
俺は自分を鼓舞するために、そして相手に威圧をかけるために言葉を紡ぐ────
「逃げた身で言うのもなんだがお前をぶっ飛ばしに来た。だが俺は初陣なのでな。手加減してくれよ?」
顔に笑みを浮かべながらそう、大男を見据えた。
俺は思った。
「最高だ」
ただそれだけ思った。
感想をユーザーのみではなく誰でも書けるように設定し直した(というか設定し忘れてた)ので是非感想等お願いします!
キャラ設定についてもネタバレにならない範囲にお答えします。