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彩色の魔女  作者: 唄海
2章 英国の闘い
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対策

 手に持った真槍を、ペタペタと撫で回す。触った感触としては、普通の金属のようだった。


「触っても消えないし、魔力の吸収も起こらない……」


 軽く振ってみると、僅かにしなる。


「ご主人様自身の真槍はどうなんですか? ワタクシのとはまた違うのでは」

「試してみる」


 魔法陣を呼び出し、中から真槍を出現させる。それを恐る恐る掴むと、やはり何も起こらずに掴めた。

 どうやら、真槍なら誰のものでも触れるようだ。


「うーむ……」


 槍はおよそ2メートルほどの長さだ。それを両手に持ちながら、思考を巡らす。


「ご主人様の槍、触ってもいいですか?」

「気をつけろよ」


 ほれ、と右手に握った真槍をアニマへと手渡す。それをアニマは何の躊躇いもなく掴む。

 すると真槍は消えることなくアニマの手の中に存在していた。


「お前も大丈夫なのか」

「ふっふっふ。ご主人様の荷物を持てずして何が下僕であるというのですか」

「本音は?」

「なんかじわじわ吸われてます! 無理!」


 みるみる元気が無くなってくるアニマ。それでも槍を離さないのは、やはりアニマとしての意地なのだろうか。


「お前も触らない方がいい」

「すいません⋯⋯」


 アニマの持っていた槍を受け取る。やはり俺は触っても何も起こらない


「アニマの場合、吸収はしてるがガルほど一気には持って行かれない⋯⋯」


 ガルの時とは違い槍も消えず、魔力もじわじわと吸収する様になっていた。


「魔力の吸収にも耐性がある? だとすると俺はアニマよりも耐性が⋯⋯参ったな、もしベルが耐性があったら勝てる気がしねぇ」


 別の手段としては、肉弾戦という手もある。見た感じベルはそこまで力があるようには見えなかった。恐らく身体能力を上げて殴れば勝てる。

 しかし肉弾戦に持ち込むには近づかなければならない。肉弾戦を主とする魔女狩りの奴らと戦う魔法使いが、対策をしてないとは思えない。


「いや待て、耐性のあるアニマが触っても槍は消えなかった。て事は、吸収が起きないか起きにくい相手には物理的に効くんじゃ⋯⋯」


 思えば物に当てた時は、物理的に作用していた。あれは元々の物体に魔力が無いから吸収が起きなかったと考えれば、筋が通る。

 つまり、効かないならそのまま刺せばいいという事だ。


「とりあえず真槍を撃ちまくって、チャンスがあれば殴りに行く。これでいいな」


 完璧な作戦とは言えないが、最善だと思う。


「ご主人様、1つ忘れてますよ」

「ん?」


 何を忘れているというんだろうか。全く思い当たる節がない。


「転移魔法ですよ転移魔法! ご主人様、自分で喋ったのに忘れてるじゃないですか」

「あぁ⋯⋯」


 思わず苦い顔になる。


「ご主人様どうしたんですか苦い顔して。まさか転移魔法は嘘でしたなんて言わないで下さいよ?」

「いや、それは本当なんだ。ただ⋯⋯」


 ただ、どうやって使うか分からない。条件も使用方法も知らない、使ったのは一回だけと言う状況だ。


「正直行ってまぐれレベルだし、練習しようにも練習のやり方がわからない。この屋敷なら使える魔法使いもいるかもしれないけど、小夜がいないんじゃ探しようがない。それに──」


 ベルは言っていた。魔女狩りに対抗する為に、魔法使い同士の繋がりを強くすると。


「ここの大半の魔法使いはガルと小夜が結婚して、魔女狩りの奴らと渡り合える力を付けたいと思っているらしい。つまり、俺は邪魔者だ」

「ははぁ⋯⋯つまり快く協力してくれるとは限らないと」

「そうだな」


 少しだけ怒りが湧く。協力してもらえないからではない。小夜の意思など無視して、自分達の利益だけを優先しようとする考えにだ。

 確かに魔女狩りに対抗するにはそれが一番正しいやり方だと思う。俺が知らないだけで、魔女狩りと魔法使い達の争いはかなり熾烈なのかもしれない。


「俺は成り立ての魔法使いだから魔法使いの情勢なんて知らないし、ベルや小夜の親父さんがどんな考えをしてるのかも知らない」

「じゃあご主人様はなんで戦おうとするんですか? 別にご主人様は何をしようと関係ないじゃないですか」


 アニマはにやにやと笑いながら問い掛けてくる。とっくに知ってるハズなのに、わざと知らないフリをしている様だ。


「決まってんだろ」


 とっくに決めていた事だ。もしかしたら、初めて会った時から決めていたのかもしれない。


「小夜の為だ。小夜が困ってんなら、俺はその原因を消す」

「一途ですねぇ、妬いちゃいますよ全く。ご主人様は小夜さんの為に魔女狩りどころか他の魔法使いすら敵に回してるんですよ」

「ははは、敵とまではいかねぇだろ⋯⋯」


 だが、味方でもないのも事実だ。正直状況は悪い。何か良い案は無いかと頭を捻らせるが、あまり良さそうな案は思い浮かばない。

 やはりここは、一番使いそうな真槍の練習をするべきだ。


「なぁアニマ、やっぱり転移魔法は無理だ。使えるか分からない物より、今は使える物を使うべきだと思う」

「そうですか。ご主人様がそうおっしゃるならそうしましょう」


 決まりだ。真槍で何が出来るか、どうやって使うかを考えよう。


「あ、そうそう。あの目つきの悪い方いらっしゃいましたよね」

「ガルか。アイツがどうかしたか?」


 そういえば、と今更になって思い出す。確か用事があると言って出て行った筈だ。


「せっかくだから練習相手になってもらいましょう。あの方なら、ご主人様の相手の代わりにもなりそうですし」

「あぁ、なるほど」


 今までの話を聞く限り、血縁者は使える魔法が似ているのだろう。例えそうでなくても、ガルならばベルの魔法について色々と聞ける。


「と言うか俺、今までベルがどんな魔法を使うかとか全く聞いてないな⋯⋯危ない危ない」


 今更ながら、自分の馬鹿さに気づく。真槍の練習なんかよりも、まずはそれが最優先だろうに。


「ご主人様、割と忘れっぽいですね」

「う、うるせぇ⋯⋯」


 反論のしようもない。


「とりあえず、まずはガルの捜索だな。俺は屋敷の中を探す。もしガルと入れ違いになったら、伝達回路で教えてくれ」

「りょーかい!」


 アニマを部屋に残し、屋敷の探索を始める。


「さて、どこ行くかな⋯⋯」

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