ヤバイ奴
「ぐぇっ!」
後ろから物凄い力で引っ張られ、研究室の外までぶん投げられる。おそらくライヴだろう。
「いいって言うまで入ってこないで!」
「はい、わかりやしたすいません」
物凄い殺気を感じたので、素直にその場に座ってライヴを待つ。
「なんで俺までぇ?!」
遅れてガルが飛んでくる。顔面から落下したガルは、そのままゴロゴロと5メートルほど転がっていく。
「怖! アイツ怖!」
「ったく、テメェのせいでひどい目にあった」
「俺に言われてもなぁ……」
アニマの容姿なんてそれこそランダムなんだから、俺がどうこうできる問題じゃない。
「だけどよ……」
フラフラと立ち上がり、ガルは俺の方へと歩いてくる。
「………」
「………」
ガルから手を出される。俺は無言のまま、握り返す。そう、男の熱い友情の握手だ。俺達の心は今一つになっている。 ……いや、カッコよく言ってるけど実は
「ラッキースケベの機会をくれてありがとう!」
「ぐっへっへ、おヌシも中々やるのう」
といった感じの握手だ。
「ラッキースケベっていいもんだな……」
「あぁ……」
そのまま2人で並んで座り込みながら、黄昏れる。最早、言葉は不要だ。
「──様ー!」
「ん?」
声が聞こえる。誰だろう、ガルの声じゃない。
「ご主人様ー! アナタの後ろに這い寄るアナタのアニマですよー!」
「そのネタ危ないからやめて!」
思わず叫ぶ。ヤバイ、色々と俺のアニマヤバイ。
「どうしたいきなり叫び出して」
「あ、いや。俺のアニマが……」
この声はどうやらガルは聞こえてないらしい。
「繋がったか。それはテメェとアニマとの伝達回路だ。そいつを使えば、アニマと離れていても会話できる」
「はー、なるほどね」
テレパシーの様なものだろうか。いかにも使い魔らしい力だった。
「ご主人様ー! この紫のおちびさんが物凄い殺気で睨んでくるんですがどうしたらいいですかねー!?」
頭の中に声が響く。
「おーい俺のアニマ、聞こえてたら返事をくれ」
どうやって会話するのかわからないので、脳内で直接会話を試みる。まさか、一方通行の会話な訳でもないだろうし。
「コイツ、直接脳内に?!」
「聞こえてるみたいだな」
どうやらこれで良いみたいなので、会話を続ける。もういちいち突っ込むのも疲れたし。
「いいからとりあえず服を着ろ。以上」
「イエッサー!」
元気な返事が返ってくる。これでライヴも退いてくれるだろう。というかライヴ、自分の裸ならともかく俺のアニマの裸を見せないのはどうかと思う。別に見たいわけじゃないが。決して。
「あー、ご主人様ー……」
安心しかけた瞬間、アニマから申し訳なさそうな声が聞こえてくる。
「何があった?」
「いやー、それがですね。服を着ようにも服が無くてですね、服を作ろうと思ったんですよ。魔力で。でも、作られたばっかりなので魔力が空っぽなんですよ」
「あぁ……なるほど」
「それで、魔力を分けてくれませんかね」
「……やってみる」
イメージする。先程出した魔法陣に、更に魔力をブチ込むイメージだ。多分、これで魔力を分けれるハズ。
「魔力キターッ!」
そんな叫びと共に、何やら研究室の方から聞こえてくる。
「なんだったんだアイツ……」
「さぁ……?」
ガルと俺は、キョトンとした顔を向かい合わせる。
「はぁ……疲れた……」
しばらくして、ライヴが研究室からのっそりと出てくる。どうやらアニマは、服を着てくれたようだ。
「なんであんな格好させるのよ変態」
俺の顔を見た途端、ゴミを見るような目でライヴは罵ってきた。正直こっちが聞きたい。
「ご主人様ー! 改めてこんにちはー!」
「は、速い!?」
ライヴの冷ややかな視線を堪能していると、研究室から物凄い速さで白い頭が飛び出してきた。




