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彩色の魔女  作者: 唄海
序章
3/115

邂逅

3話です

割と短め

 それは人だった。人が2人、広場のようなスペースに立っていたのだ。

 1人は表すならゴリラ、と言える程に大きく人間離れした体格の大男だった。プロテクターのような服に身を包み込んでいる。

もう1人は───『魔女』

 そう、表現するなら魔女のような人物だった。特徴的な青色のとんがり帽子とこれまた青色のローブのような服に身を包んだ人物だ。傍らには青白い海月(くらげ)のような生物が浮遊しており、幻想的な雰囲気を漂わせている。

 しかし体格はスレンダー、と言うよりは華奢な少女であり、もう1人と比べると余計に小さく見えてしまう。


 こんなところで何をしてるのか、『俺』はそう思いながら貯水タンクの陰に身を隠して現実味の無い光景を見つめていた。


「まさかこの建物、何かの撮影に使われてるから鍵が空いてたりしたのか……?」


 そんな予想をしながら2人を見ると──


「!!」


 少女は自分を中心に水の渦を作り出し、その渦が龍の姿を形成、大男に向けて放った。

大男はそれをまるで水鉄砲でも防ぐかのように手で遮り防いだ。途端、龍はまるで蒸発するかのように消えていった。


「なんじゃこりゃ…」


 驚くこちらの状況などお構いなしに少女は次々と龍を大男へと放つ。

 だが大男はまるで効いてない。そしてその巨体からは想像もつかない俊敏さで少女との間合いを詰める。

 少女は今度は足元へ水を集中させ波乗りのような動きで大男の放つ拳を避ける。が、徐々に捌ききれずに1発直撃を喰らってしまった。

 大男の攻撃を受けた少女は俺のいる建物の方へぶっ飛ばさられるとふらふらと地面へ倒れ込んだ。周りを浮遊していた海月のような物も蒸発するように消えてしまった。

───────まずい、このままでは。

 少女を助けなければ。脳内でよくわからない思考が働き始める。なぜ少女を助けようとしてるか、どうやって助けるか。様々な事が頭の中でグルグルと回り出す。

 その間にも、大男はゆっくりと少女へ歩みを進めている。

 マズイ、どうする、どうする、どうやって助ける?


「───?」


 この時寄りかかっていた貯水タンクが僅かにだが動いたのに気づいた。その瞬間脳内でエンジンに火がつくような感覚に囚われ、気がつくと俺は貯水タンクを思い切り蹴飛ばしていた。


「おおぉぉりゃぁあああああ!!!!」


 長年雨ざらしになっていたせいだろう。貯水タンクはいともたやすく地面から離れると、大男の方へ飛んでいった。


「?!」


 大男は突然の攻撃に驚き、飛び退いた。そこへすかさず俺は工場内にあった石灰の入っている袋を投げつける。屋上へ入る際何かに使えるかもと何個か持って来ていた物だ。

 大男は飛来する袋を拳で殴りつける。途端、袋は爆発し辺り一面を真っ白な煙で覆う。


「今だ!」


 俺は屋上の柵を飛び越えると、一歩目で下の階の屋根のせり出した部分に落ち、それを足場に二歩目で屋根から飛び降り少女の元へ駆け寄る。少女は目立った外傷はないものの、意識がとんでいてその場に寝転んでいた。

 少し躊躇って、俺は少女を抱きかかえて廃墟から走り去る。

 大男はまだ煙幕の中でウロウロとしていた。案外予想外の出来事に弱いのかもしれない。

 少女は軽かったし、俺も廃墟探索で日頃から鍛えられていた肉体によって思ったより楽に走れた。

 大男が追ってこないことに安堵しつつ、俺は少女を抱えたまま元来た道を全速力で走った。


家まではもうすぐだ。


貯水タンクは空だった+火事場の馬鹿力なので結構飛んでると考えて下さい

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