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彩色の魔女  作者: 唄海
序章
14/115

深淵

14話です!

おかしなところがあれば是非御指導お願いします。


「ねぇ、さっちゃん」

「ん?」

「放課後暇?」


昼休みに入ると海千流がそう話しかけてくる。


「んー、特に無いかな…… あ、でも小夜が──」

「小夜ちゃんはいいの。 さっちゃんが空いてるか聞いてるの」


海千流は少し怒ったような表情になりながら言葉を遮る。

ちなみに小夜は噂を聞きつけた他のクラスの生徒達にも質問攻めにあっている。教室の入口に凄い人数の生徒が集まっているところだった。


「ごめん。俺は何もねーよ」

「そう、ならどこか遊びに行かない?」

「えぇ……めんどい……」


正直俺は今朝の件だけでもうヘトヘトだった。

結局あの後の授業は半分寝てたくらいに。


「せっかくの女の子からのお誘いなのに断るなんてもったいない奴ね」

「酷いな……てかみっちゃんも俺なんかよりもっと遊びに慣れてる奴らと遊んだ方がいいだろ」


俺は昨日ふと湧いた思いを口にする。

それを聞いた海千流は悲しそうな顔をして


「そんな事無いよ。 私はさっちゃんと遊ぶのが好きなんだから」


そんな事を言った。

なんでそんな……と湧いた疑問は、悲しそうな海千流の表情によってかき消されてしまった。


「いや、そんな悲しそうな顔するなよ…… わかったよ!遊びに行けばいんだろ!」

「本当に? やった!」


俺は諦めたように海千流の提案を受ける。

でも、海千流が嬉しそうだったのでまぁよしとしよう。

それにしてもなぜ海千流はそんなにも俺に構うのだろうか?


「それじゃあ放課後にね!」


海千流はそう言うと自分の席に戻っていった。

代わりに小夜が質問攻めから戻ってきた。


「つ、疲れた……」

「お、おう。 なんか大変そうだったな……」


どうやらかなりの人数から質問を受けたらしい。まぁ、大半はそれをきっかけに小夜とお近づきになろうとしてる奴らだろうが。


「てかなんだそれ?」


戻ってきた小夜は大量の袋を手にしていた。


「なんか貰ったのよ。 プレゼントとからしいけど」

「プレゼント?」


俺は袋をのぞき込む。中にはパンやらジュースやらがぎっしり入っていた。どうやら物で気をひこうとする作戦らしい。


「うわぁ……すげぇ……」

「そう? でも私、こんなに食べられないわ」

「逆に食べたらビビるわ」

「ふふ、そうね。それじゃあ一緒に食べましょ?」

「いいのか? 小夜が貰ったやつだろそれ」

「いいのよ。 どうせ食べられないから勿体無いわ」

「おう、んじゃ遠慮なく」


俺は基本昼食は購買で買っている。今日はまだ買いに行ってないので買う手間が省けた。


「それにしてもなんで小夜はこの学校に転校生として来れたんだ?」


俺は今朝からずっと気になっていた事を聞く。なぜ外国から密入国紛いの女の子がこの学校に来れるのか不思議だった。

やはり魔法で何とかしたのだろうか。


「はんへも、ほひいはんは」

「食ってから喋れ……」


小夜は食事中のハムスターみたいになっていた。可愛い。


「なんでも、おじいさんが手配してくれたそうよ」

「じいちゃんが?! どうやって?!」

「この学校の関係者達と色々関わりがあって、だそうよ」

「えぇ……バレたらヤバイじゃん……てか、あのジジイ何者なんだよ……」

「おじいさんは「人を探すなら人の集まる所の方が見つけやすい」なんて言っていたわ。 どうやら真とおじいさんは同じ様な考えだったのね」


つまりあれか、祖父は小夜を情報収集がしやすいように学校に行かせたのか。

なるほど、今朝の企んだような目はこれだったのか。


「本当にありがたいわ。 制服まで貰ってしまって」

「その制服まさかじいちゃんの私物じゃないよな?!」

「違うわよ……知り合いの卒業生から貰ったらしいわ」


色々と準備のいい祖父だった。準備が良すぎて怖いくらいだ。


「なるほど、大体わかった。 それじゃとりあえず目的の魔法使い探しは予想より楽になりそうだな」

「そうね、ついでに学校生活も楽しませてもらうわ」

「そりゃいいな」


そうやって俺達は昼休みを過ごしていった。


─────────────────────────────


午後の授業は体育だった。飯の後に体育とか頭おかしい。


「おい真、お前あの子の連絡先とか持ってるか?」


今日の体育はサッカーだった。

俺はグラウンドでゴールを準備しているとふと同じクラスの奴から話しかけられた。


「あの子?」

「ほら、あの転校生の子」

「あぁ、小夜のか。 持ってるけどどうかした?」

「教えてくれ! 何かお礼はするから!」

「あ! お前だけ抜け駆けはずるいぞ!」

「俺も教えろ!」

「俺にもだ!」


いつの間にかクラスの男子大半が集まってきた。どんだけ小夜と仲良くなりたいんだこいつら……


「まぁ、小夜に聞いてみるよ。 本人に聞かずに広めるのも悪いしさ」

「本当だな?! OKだったらちゃんとよこせよ!」

「わかったってば」


……どうやら本当に小夜は人気らしい。わからんでもないが。


「よっしゃ、やるか!」


俺はゴールを設置し終え配置につく。

うちのクラスの男子は20人、丁度10人でチームが組める。

女子はグラウンドの反対側でバトミントンをしていた。


「真ー! 頑張ってー!」


ふと、女子の方から声援がとぶ。何事かと思い振り返ると体育着姿の真がブンブンと手を振っていた。

やべぇ、体育着姿超可愛い。

俺は内心ドギマギしながらも手を振り返す。


「ずるいぞお前!」

「俺もあんなふうに声援が欲しい……」

「リア充死ね!」

「羨ましい……」

「女の子から応援されただけで調子に乗るなよ! 羨ましい! バーカ!」


酷い言われようだった。なんか今日は罵倒しかされてない気がしてならない。


「まぁ、悪い気分じゃないな」


俺は小夜の声援を思い出しサッカーに勤しむ。


──ちなみにこの後嫉妬からかめちゃくちゃ狙われた事と魔法の影響かそれでも10点ほど決め、重力を無視したような大活躍をした事は記述しておこうと思う。





─────────────────────────────


「なあ小夜、どうやら俺の身体能力の強化は常時発動するタイプの魔法らしい」


体育も終わり、グラウンドから帰っていた小夜に話しかける。

俺はサッカー中にいつもより体が軽いことが気になっていた。

調子が良かった、と言えばそれまでなのだろう。

しかし調子が良かったからと言っていきなり10得点も出来るわけがない。途中何回か重力を無視したような動きもできた。


「普通そんな事したらすぐ魔力が尽きて倒れちゃうわよ……」

「そうなのか? でも俺は元気だぜ」

「黒色ってホントに底知れない色ね」

「まるで深淵だな」


その言葉を口にし、はっとする。

深淵────底の見えない沼、深い淵から覗く底。

人間の行き着く終着点だと言う人もいる、真っ黒な闇───

もし黒色が本当に深淵なのだとしたら俺はどうなるのだろうか。


「深淵を覗き込む時、深淵もまたこちらを覗いてくる……」

「ニーチェね」

「いや、誰かまでは知らなかった。ただ、どこかで聞いた事を思い出しただけだ。」

「そう、でも大丈夫よ」

「何が?」

「もし真が深淵に落ちたら、私が助けるから」


真は俺の考えを見抜いていた。


「そんな心配してるわけじゃねぇよ。ただ何となく思っただけだ。しかも今出てるのはやたら体が動くだけで別に何も異常はねーよ」

「そう、何かあったらすぐ言ってね。これでも私は治癒魔法が使えるから力になれるわ」


そう言えば彼女の色は癒しと水だったな、と俺は思い出す。

何かあれば治してもらえるだろう。


「そんな事がないように頑張るよ」

「それが一番ね」


俺はひとまず自分の力について少しわかった気がして安心した。

もしこれからも何かあれば小夜に相談しよう、そう思った。


「ところで真、言いにくいんだけど……」

「ん、なんだ? 俺の話聞いてくれたからちゃんと聞くぜ?」


小夜は申し訳なさそうな困ったような顔になり───


「あの、そろそろ女子更衣室に着くわよ……」



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