表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/46

第21話 魔力の視える青年

  トーヤは森の中を歩く。ナガトを見つけた森とは違い、歩きやすいのが助かった。

  ドワーフが通っているおかげか、草があまり生えておらず、道も平坦だった。

 

  「キュゥー」


  肩に乗るグリーンフォックスリスが、不安げに鳴き、トーヤの顔に頬ずりした。

  指の腹で頭を撫でると、気持ちよさそうに目を閉じる。

  可愛い供の姿に少しだけ心が和んだ。

  クマに似た大岩を通り過ぎ、しばらく進むと、嫌な臭いが漂って来た。

  ーー血と臓物と獣の臭い。

  グリーンフォックスリスがブルリッと身を震わせ、全身の毛を逆立たせる。

  牙を剥き出しにして、「シャー!」と威嚇するような声をあげた。

  トーヤが落ち着かせようと、優しく頭を撫でる。依然として、全身の毛を逆立てたままだが、少し落ち着いたようで、牙を収める。

  その様子を見て少し安心したが、密猟者か、なにかが、潜んでいる可能性もあるので、気を引き締める。

  近づけば、近くほど、臭いが強くなり、むせ返るようだ。思わず、腕で鼻と口を押さえる。

  鼓動が早くなり、足も重い。

  一歩、一歩、近づいて行く。覚悟していたとはいえ、きつい。

  ノインが言っていた木が見えて来た。四メートルぐらいの広葉樹だ。目一杯、伸ばした枝に艶々とした深緑の葉っぱが生え、赤い実が色鮮やかになっている。


  (想像以上に酷いな……)


  目の前に広がる無惨な光景……。

  生き生きとした広葉樹とは、対極にいる存在だった。

  地面に赤黒い血が一面に広がっている。

  そこに、ぶち撒けられたブツ切りにされたユニコーンと夜光鹿の残骸……。

  必要以上にバラバラにされている。

  首を切り落とすなり、毒を塗った矢で射抜くなりした方がずっと楽に狩れる。

  密猟者にしては不自然なやり方だ。

  第一、ユニコーンと夜光鹿が一緒にいる事自体がおかしい。

  気性が荒く神経質なユニコーンと警戒心が強く大人しい夜光鹿。

  通常ならまだしも、夜光鹿にいたっては繁殖期で気が立っている時期だ。こんなに集団でいる事自体がありえない。

 

  (何故、こんな面倒な事を……)


  特に顔を細かく切り刻んでいる。

  切り落とされた耳、鼻先、そして角の無い頭部……。

  気は進まないか、血だまりの地面を踏みしめながら、周囲を探索する。

  バラバラになった夜光鹿とユニコーンの毛が血で汚れている。特にユニコーンの純白の毛は赤黒い血と相成って一層、惨忍さが引き立っていた。

 

  (しかし、一体、どうやって一ヶ所にユニコーンと夜光鹿を集めたんだ?魔法か?)


  いや、それこそ、ありえない話だ。

  野生の動物を操る魔法は高度な魔法だ。

  小さな野ネズミ、一匹、操るのさえ容易ではない。集中力と細かな魔力配信が要求される。使い魔として複数の獣を従える魔術師も存在するが、その為には獣と契約を交わさなければならない。ここにいる夜光鹿とユニコーン全部と契約したとは考えにくい。

  仮に契約したとしたら、殺すには危険が大きすぎる上に損失の割り合いの方が高い。

  だとしたら、他に……。

  トーヤが考えを巡らせていると、グリーンフォックスリスが「キュィィ」っと不安げに小さく鳴き、トーヤの頬に自分の頬を擦り付ける。

  おぞましい光景と血肉の匂い。

  無理もない。ただでさえ、仲間と別れ、不安だろに……。そう思うと、急に気の毒になった。喉元を指で撫でると、気持ち良さそうに目を細める。


  (ルクかノインに連れて行かせるべきだったな)

 

  不思議な事に何故か、自分に懐いてるグリーンフォックスリスを引き離すのを不憫に思い、その場しのぎの供として、ごまかす為に連れて来たが今更ながら後悔していた。

  すると、いきなりグリーンフォックスリスが顔を背け、片耳を二、三度、ピクピクと動かしたかと思うと、ぬくっと立ち上がった。

  トーヤは、グリーンフォックスリスの不審な行動に嫌な予感を覚え、手を伸ばそうとした時だった。

 

  「キュィン!キュィン!」

 

  グリーンフォックスリスは何かを訴えるような悲痛な鳴き声をあげ、シャツの襟元に尻尾を引っかけると、ぐいぐいと引っ張った。

 

  「ここから離れろって、言ってるのか?」


  ーーこのグリーンフォックスリスは賢い。

  今までの行動からしてそう考える事が自然だろう。

  だとしたら、とる行動は一つだ。


  「分かった。ここから離れよう」


  グリーンフォックスリスの背中を指で一撫でし、足音を立てないよう、そっとその場を離れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ