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第18話 魔力の視える青年

  そんなこんなで、トーヤ達はルクの工場に着いた。

  ナガトの手の上に乗せられたルクは、「あの幻の八八艦隊機に乗れるなんて夢のようだ!」と言って、終始、感涙していた。

  地下にいる時は気がつかなかったが、操縦席は揺れが少なく、思ったよりも乗り心地が良かった。

  そうこうしているうちに工場に着く。

  ルクの工場は郊外から少し離れた場所にある。

  金属や鉱石で出来た工場は古いが、掃除が行き届いており、大切に使っている事が分かる。工場の周囲は広い平地になっている。その隅の方に、レンガで囲った小さな花壇が作られ、様々な薬草が植えられている。

  ルクの誘動に従い、トーヤがナガトに指示をして工場の中へと入った。

  すると、奥の休憩室からドワーフ達がワラワラと出て来た。

  六人、ルクを入れたら全部で七人ーー。

  少人数制の小さな工場だ。

  ドワーフ達がナガトを安置する為に、テキパキと準備をする。

  すると、ルクが降ろして欲しいとトーヤに頼んだ。

  ナガトに命じて、ルクを降ろすと、仲間のドワーフ達と共にナガトを誘動する。

  ナガトを所定の位置に収めると、ドワーフが慣れた手つきで、タラップを設置した。

  トーヤがそのタラップを伝って降りる。

  地面に足をつけた途端、ドワーフ達が騒ぎ立てながらトーヤを取り囲む。

  興奮しているドワーフ達は口々に、ナガトはどこで見つけたのか、乗り心地はどうなのか、本当に八八艦隊機なのか、等、矢継ぎに質問が飛ぶ。


  「おい!お前達!やめろ!」


  ルクが怒鳴り声をあげた。ドワーフ達を押し退け、トーヤを守るように前に立ち、群衆を手で払う。ルクの剣幕にドワーフ達もたじろぎ、後ろに下がる。


  「ワシらの恩人であるアリシア様の御子息になんたる無礼だ!恥を知れ!」


  ルクの言葉にドワーフ達がハッとして我にかえる。互いにバツが悪そうに顔を見合わせた。

  そして、口々に「すみません」「申し訳ありません」「出過ぎた真似をしました」等、謝罪の言葉を口にした。

  トーヤが別に謝るような事では無いから、気にしなくてもいいと伝えると、ドワーフ達は安堵したかのようにホッとした表情をした。


  「持ち場に戻れ!これから、ナガトを調べるぞ!」


  ルクのげきが飛ぶ。

  ドワーフ達は親方であるルクの言葉を受け、威勢良く返事をし、散開した。

  それぞれの持ち場へと戻りナガトを調べる為の作業を開始する。

  皆、慣れた様子で、きびきびと動く。

  何かの資料らしきものを見ては指示を出す者、梯子車を操作する者、その梯子に登り、鉄筋を組み立て足場を作る者、ナガトの機体を調べる者と、それぞれの作業に勤しんでいる。

  ナガトは全く動かず、されるがままになっている。トーヤは少し心配になった。

  ルクの工場の技術者たちの腕は確かだ。

  信用もしている。

  だが、それは普通のロボットだからだ。

  ナガトは普通のロボットでは無い。

  それに隣国の罠の可能性も完全には捨て切れていない。

  もしもナガトの話が本当なら、ルクの資料によると、ナガトは既に失われた技術で作られているらしい。


  (下手に弄って壊れたりしないよな……)


  「トーヤ様、少し宜しいでしょうか」


  心配そうにナガトを見守るトーヤにルクが声をかける。


  「ああ」


  ナガトからルクへと視線を落とす。そこには、神妙な顔をしたルクの姿があった。改まった態度で深々と一礼する。


  「ぜひとも、お見せしたいものがございます。ご同行、お願いしてもよろしいでしょうか?」


  真剣なルクに少し、たじろいだトーヤだったが、それを悟られないよう、毅然とした態度で接する。


  「勿論だ。ぜひ、見せてくれ」


  ルクの顔に安堵の色が浮かぶ。


  (相変わらず、実直な男だな)


  ルクはいいヤツだとトーヤは改めて思った。ルクに限らず、ドワーフという種族は豪放で豪快、時に頑固だが仲間思いの気の良い連中だとトーヤは思っていた。

  ただ酒に呑まれて何かとやらかすのが、玉にきずだなと、トーヤは苦笑する。


  「トーヤ様?」


  「すまない。なんでもない。その事をナガトに伝えてもいいか?」


  「勿論ですじゃ」


  トーヤは再び、ナガトに視線を移す。

  先程と変わらず、素直に調べに応じている。ナガトが突然、暴れ出す恐れも無くはない。ここは一応、断ってから離れるべきだろう。そう判断し、ナガトに声をかける。


  「ナガト」


  「はい。トーヤ様」


  「ルクと話がある。少し席を外すが、このまま検査を受けてもらっていいか?」


  すぐに返答が返ってこない。僅かな沈黙が辺りを包む。

  やはり、ダメなのかと、思い、トーヤが口を開こうとするとーー


  「ーー了解しました。トーヤ様」


  ナガトが答えた。すると、ドワーフ達が一斉に、ざわめく。「本当にしゃべったぞい!」「すごい!すごいぞ!」と子どものように、はしゃいでいる。

  ルクの資料や文献によると、八八艦隊機はかなり高性能なロボットだったらしいが、これ程まで技術者に琴線に触れるとは、トーヤは思いもしなかった。

  祭りの夜のように騒ぐドワーフ達にルクが、再び、檄を飛ばし、ようやく騒ぎは収まった。

  ルクがそのうちの何人か集め、なんやら話し合ったのち、

  「トーヤ様、こちらへ。ご案内致します」と言って、トーヤを工場の外へと連れ出す。

  その様子をナガトは、トーヤの姿が見えなくなるまで、ジッと見守っていた。

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