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支流

作者: 山通 雪グ

未来に面したこの湾にも、今日は雪が降り積もる。

僕が涙を垂らした川が未来へ逃げていくのが見える。

あの川は、僕の川。

その流れを支えた水は、僕の気づかぬうちに枝分かれして、別の湾に注いでしまった。

僕はそれをどうしても引き止めることができなかった。


僕の川がおかしいのは分かっている。

川はいくつもの支流が合わさって、1つの湾に注ぐのだ。

けれど僕の川は、次々と枝分かれして、別の湾へと流れていった。

僕はあの山のせい、あの谷のせい、あそこの土の固さのせい、あそこに根を張った大木のせいと、喚きたてては堰を切った。

それでも、彼らは帰ってこなかった。君の川は支離滅裂だ、そう言って。

僕の川は地下へと潜っていった。


地下に潜った僕の川は、ヘドロをたたえ、腐臭をまとった。

ビニール袋が、空き缶が、ラベルのついたままのペットボトルが、支流から僕の川へ流れ込んできた。

僕の上から鼠色の管を通って僕の川へ注ぎ込む彼らの流れに、僕は成す術もなく従った。

そうして辿り着いたのが、この湾だった。

紅白の煙突が立ち並び、塩素の臭いが鼻につく、この湾だった。

僕の川は海へ、塵とヘドロと悪臭を届け、川としての命を終えた。

清らかな頃に岐れた彼らのことを思いながら、今日も僕は湾の不規則な潮流に身を任せる。



拝読ありがとうございました。

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