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二人の年齢を地味に変更。他シリーズとの辻褄が合わなかったので。



4時間目の国語が終わると、さっさと教科書を机の中にしまって、お弁当片手に教室を飛び出した。


友達の想良がビックリして声を掛けてきたけど、私はまともに答える余裕がなくて、「約束があるの」とだけ答えて中庭に向かった。

珍しく国語の林サマの小言がなかったのは、嬉しい限り。




「建介さんっ」



中庭に着くと、既に建介さんはそこにいて、昨日と同じ場所に座っていた。仕事だから当たり前だけど、建介さんは作業服姿。いつもの黒とかの服を着ているときとギャップがあって、なんだか可笑しい。



「意外と早かったね、彰チャン」

「うん。授業が終わってすぐ走ってきた」



建介さんの横に座りながら頷いた。



「走って? 別に急がなくてもよかったのに」

「いいの。私が早く来たかっただけなんだから」



ちょっと驚いたような建介さんの言葉に首を振って、お弁当を伸ばした足の上に広げた。すると、建介さんがパン片手に私のお弁当を覗きこんだ。



「お、美味しそう」

「お母さんが作ったんだよ。私、朝起きるの遅いから」

「ああ、なんか彰チャンっていつも眠そうだもんね。ここ来たらしょっちゅう寝

てるし」

「失礼な。そんなに寝てないし」

「嘘だぁ。いっつもここで寝転がってるでしょ?」

「……そんなことない」



ムッと口を閉じて言い返してみても、建介さんは可笑しそうに笑うだけ。

いや、事実を言っちゃえば、中庭来たらほとんど寝てるんだけどね。なんか素直に肯定するのは癪だ。



「建介さん、そんなに私ばっかり見てたらロリコンって言われるよ」

「ええっ、ひでーなぁ」



建介さんの顔も見ずに意地悪して、素っ気なく言ってみた。それでも建介さんは言葉のわりに悲しんでる様子はない。むしろ楽しんでるみたい。



「じゃあ、彰チャンはオジサン好き?」

「は? 違う……と思う」

「そこで躊躇しないでよ!」

「だって建介さんとは何歳離れてるか分かんないもん」



私の言葉に変に焦る建介さんが可笑しくて、笑ってしまう。



「あ、俺、年言ってなかったっけ? 25なんだけど」



25?!

思わず勢い良く建介さんを見上げてしまった。



「私と9歳も違うじゃん!」

「じゃあ、彰チャンって16なの?」



建介さんの言葉に首を縦に振って肯定する。

年上とは思ってたけど、9も上だったんだ。



「でも、建介さん25には見えないよ」

「あ、ほんとに? 嬉しいなぁ」



本当に嬉しいようで、にこーって顔が笑ってる。

ああ、建介さんのこの笑い方好きだなぁ。



「あ、そういや、昨日買ったチーズケーキどうだった?」



急に思い出したようにパンを食べながら、建介は聞いてきた。私はお弁当の唐揚げを口に放り込んで、昨日のチーズケーキの味を思い出す。



「ああ、あれ全然甘くなかった」



昨日、お風呂のあとで楽しみにして食べたチーズケーキは、ほんと今流行りみたいの『甘さ控えめ』だった。結構楽しみにしていて、食べた瞬間甘くないのが分かると、すぐにお母さんのチョコレートケーキと交換したんだっけ。



「やっぱり?」

「うん。チョコレートケーキは美味しかったよ」

「あー、失敗したなぁ。やっぱりチーズケーキは彰チャンとこのじゃないと駄目か」

「それ、古谷さん聞いたら喜ぶよ。古谷さんも甘いの好きだからね」



古谷さんのケーキが誉められたのが嬉しくて、顔が弛む。



「じゃあ、今日楽しみにするよ。古谷さんにも言っといて」

「分かった」



古谷さんはたまにホールに出て接客もするから、その時にでも建介さんのこと教えてあげよう。古谷さん、自分みたいに男で甘いの好きな人ってあんまりいないって嘆いてたし、喜ぶだろうな。



「それに、今日は彰チャンを送ってあげないとね」

「え! あれ本気だったの?」



建介さんの言葉につい大きな声をあげる。てっきり昨日のは、私にネックレスを渡すための嘘かと思っていた。

それが顔に出たのか、建介さんは苦笑して私に笑いかける。



「本気だよ。嫌?」

「え、嫌ではないけど……」

「じゃあ、決定ね」



強引に話を決めて、建介さんは食べ終えたパンの袋を手の中で丸めた。

なんだか建介さんに悪い気がしないでもないけど、建介さんが笑ってるから、まぁ、いっか。



「じゃあ、チーズケーキ奢ってあげる」

「お、ラッキー」



建介さんがカフェに来るなら、チーズケーキくらい安いもんね。






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