第134章:十一人の朝 - 封印が解けた者たちが初めて見た世界の色
序章 - 最初の朝について
最初の朝は。
特別だ。
二度と来ない。
どんなに良い朝でも。
最初の朝だけは。
一度しかない。
新しい場所で。
初めて目を覚ます朝は。
その場所が何者かを。
決める朝だ。
好きになるか。
嫌いになるか。
居心地が良いと感じるか。
そうでないと感じるか。
最初の朝が。
全てを決める。
十一人にとって。
今日がその朝だった。
万年ぶりの。
最初の朝が。
第一章:朱鷺白の夜明け
朱鷺白の部屋 - 夜明け前
朱鷺白は眠らなかった。
眠ろうとしなかった。
ではなかった。
眠れなかった。
部屋の窓が大きかった。
マスターが選んだ部屋の窓が。
王国の全てを見せていた。
夜中ずっと。
その窓の前に立っていた。
灯りを見ていた。
家の灯りを。
市場の灯りを。
宮殿の廊下の灯りを。
人が動いていた。
夜でも動いている人がいた。
警備の者が歩いていた。
夜が明ける前に起きる職人がいた。
「動いている。」
朱鷺白は思った。
封じられていた間。
何も見えなかった。
何も聞こえなかった。
何も動かなかった。
ただ存在するだけだった。
しかしここでは。
何かが常に動いていた。
夜の中でも。
何かが生きていた。
東の空が白み始めた。
朱鷺白は見ていた。
色が変わっていく空を。
黒から。
藍から。
灰から。
橙から。
「色がある。」
朱鷺白は思った。
封じられた空間には。
色がなかった。
ただ闇があった。
しかし今。
目の前の空が。
一秒ごとに。
違う色になっていた。
「美しい。」
朱鷺白は言った。
声に出した。
万年ぶりに。
美しいという言葉を。
声に出した。
日が出た。
王国に光が満ちた。
朱鷺白は窓から離れた。
厨房に行こうと思った。
アクアという者に。
礼を言おうと思った。
第二章:厨房での対話
厨房 - 朝
アクアはすでに動いていた。
朱鷺白が来た時に。
朝食の準備が半分終わっていた。
「アクアという方に用がある。」
朱鷺白は言った。
アクアは振り返った。
静かに。
「何ですか。」
「昨夜の部屋を。」
朱鷺白は言った。
「あなたが選んでくれたと聞いた。」
「違います。」
アクアは言った。
「マスターが選びました。」
「しかし。」
アクアは包丁を置いた。
向き直った。
「窓の方向は私が提案しました。」
アクアは言った。
「あなたが長く閉じていたから。」
「外が見える場所が良いと思って。」
「なぜそう思った。」
朱鷺白は聞いた。
「三万年。」
アクアは言った。
「私も封じられていました。」
朱鷺白が止まった。
「お前も。」
「はい。」
アクアは言った。
「だから。」
「封印が解けた後に。」
「何が見たいかを知っています。」
「何が見たかった。」
「外です。」
アクアは言った。
「ただそれだけです。」
「外が見たかった。」
「世界が動いているところが見たかった。」
朱鷺白は。
アクアを見た。
長い間。
「外を見ました。」
朱鷺白は言った。
「昨夜。夜通し。」
「どうでしたか。」
「暖かかった。」
朱鷺白は言った。
「夜なのに。暖かかった。」
アクアは頷いた。
「それが外です。」
アクアは言った。
「三万年前から変わっていません。」
「夜は暖かい。」
「正確には。」
「外にいる者たちの灯りが。」
「暖かいのです。」
朱鷺白は窓の外を見た。
王国が動き始めていた。
朝の王国が。
「...ここに来て良かった。」
朱鷺白は言った。
小さく。
確かに。
アクアは何も言わなかった。
包丁を持った。
また料理を始めた。
しかし。
今日の包丁の音は。
いつもより。
少し柔らかかった。
第三章:輝夜の朝 - 月が沈んだ後
廊下 - 朝
輝夜が廊下を歩いていた。
月が沈んだ後で。
太陽が昇ってくる前の。
短い時間に。
廊下が静かだった。
誰もいなかった。
「静かだ。」
輝夜は思った。
封じられていた空間は静かだったが。
あれは死の静けさだった。
しかしここの静けさは違った。
生きている静けさだった。
誰かが眠っている音が聞こえた。
誰かの寝息が。
扉の向こうから。
かすかに聞こえた。
「生きている音だ。」
輝夜は思った。
廊下の端まで歩いた。
窓があった。
外を見た。
太陽が出てきた。
最初の一条の光が。
山の向こうから。
射してきた。
「月とは違う。」
輝夜は思った。
「太陽の光は直接だ。」
「月の光は間接だ。」
「どちらが良いという話ではない。」
「ただ違う。」
その時。
後ろから声が来た。
「おはよう。」
輝夜は振り返った。
ハナがいた。
翅を畳んで。
廊下を歩いてきた。
「眠れなかった?」
ハナは聞いた。
「少し眠った。」
輝夜は言った。
「しかし目が覚めた。」
「私もそう。」
ハナは言った。
「新しいことがあった日は。」
「眠れなくなる。」
「そうか。」
「ご飯できるまで。」
ハナは言った。
「一緒にいる?」
輝夜は少し考えた。
「良い。」
輝夜は言った。
二人で窓の外を見た。
太陽が昇っていった。
空が橙になった。
「きれいだね。」
ハナは言った。
「そうだな。」
輝夜は言った。
「輝夜さんも月が好きなの?」
「月の精霊だから。」
輝夜は言った。
「好きというより。」
「月が自分の一部だ。」
「太陽も好き?」
輝夜は少し考えた。
「今日から好きになれそうだ。」
輝夜は言った。
ハナが笑った。
翅が少し動いた。
「私も月が好きになった。」
ハナは言った。
「輝夜さんが来てから。」
輝夜は。
ハナを見た。
「お前は。」
輝夜は言った。
「不思議な者だ。」
「そう?」
「出会って一日も経っていないのに。」
輝夜は言った。
「月が好きになったと言える。」
「だってきれいだもん。」
ハナは言った。
「きれいなものは好きになる。」
「それだけだよ。」
「シンプルだな。」
「シンプルが一番だって。」
ハナは言った。
「アクア姉が言ってた。」
輝夜は少し笑った。
万年ぶりの笑いが。
朝の廊下に漏れた。
第四章:宵紫と雷光 - 予想外の共通点
庭 - 朝
宵紫が庭にいた。
影の精霊が。
日の光の中に立っていた。
奇妙な光景だった。
影の精霊が。
日向にいる。
しかし宵紫は。
太陽を見ていた。
まっすぐに。
「不思議だ。」
宵紫は思った。
「影は光があれば生まれる。」
「光がなければ影もない。」
「敵ではない。」
足音が来た。
雷光が来た。
体から静電気が散っていた。
朝の空気に。
青白い光が漏れていた。
「お前も外にいたのか。」
雷光は言った。
「太陽を見ていた。」
宵紫は言った。
「俺も。」
雷光は言った。
「雷が太陽を見るのか。」
「雷は光だ。」
雷光は言った。
「光には光が引かれる。」
「なるほど。」
宵紫は言った。
「私は影だが。」
「影も光があれば生まれる。」
「光がなければ存在できない。」
「だから光に引かれる。」
「同じだな。」
雷光は言った。
「真逆の存在が。」
宵紫は言った。
「同じ理由で太陽を見ていた。」
「面白い。」
雷光は言った。
「封じられていた時は。」
宵紫は言った。
「影しかなかった。」
「光がなかった。」
「だから影が生まれなかった。」
「私が私でいられなかった。」
「俺は。」
雷光は言った。
「放電できなかった。」
「雷は放電しなければ苦しい。」
「しかし封じられた空間では。」
「放電する場所がなかった。」
「苦しかったか。」
「苦しいという感覚が。」
雷光は言った。
「途中から麻痺した。」
「感じなくなった。」
「それが逆に恐ろしかった。」
「感じなくなることが怖かったか。」
「そうだ。」
雷光は言った。
宵紫は少し黙った。
「私もだ。」
宵紫は言った。
「感じなくなっていくことが。」
「最も恐ろしかった。」
「しかし感じなくならなかった。」
雷光は言った。
「そうだ。」
宵紫は言った。
「消えなかった。」
「何かが残っていた。」
「あの王が言っていたな。」
雷光は言った。
「消えなかったことが強さだと。」
「信じているか。」
雷光は少し考えた。
「あの王の言葉は。」
雷光は言った。
「なぜか信じられる。」
「理由がわからない。」
「しかし信じられる。」
「私もだ。」
宵紫は言った。
二人は黙って。
太陽を見続けた。
影の精霊と。
雷の精霊が。
並んで。
「そういえば。」
雷光は言った。
「何だ。」
「お前は影の中にいる方が楽か。」
「楽だ。」
宵紫は言った。
「しかし今日は。」
「日向にいたい気分だ。」
「俺も同じだ。」
雷光は言った。
「いつもは放電して落ち着く。」
「しかし今日は。」
「静かにしていたい。」
「新しい場所のせいか。」
「そうかもしれない。」
「良い場所だと思うか。」
雷光は少し間を置いた。
「まだわからない。」
雷光は言った。
「しかし。」
「嫌いではない。」
「それで十分だ。」
宵紫は言った。
「そうだな。」
二人が沈黙した。
良い沈黙だった。
第五章:紅夜叉と深水 - 朝食前の出来事
池の近く - 朝
深水は池の前にいた。
夜からずっと。
池の水面を見ていた。
紅夜叉が来た。
朝の散歩をしていた。
宮殿の周りを歩いていた。
池の前で止まった。
「お前も眠れなかったか。」
紅夜叉は言った。
「眠りませんでした。」
深水は言った。
「眠れなかったのではなく。」
紅夜叉は言った。
「眠らなかったのか。」
「眠る気になれませんでした。」
深水は言った。
「なぜ。」
「水の音がします。」
深水は言った。
「それが聞きたかったか。」
「封じられていた間。」
深水は言った。
「音がありませんでした。」
「水の音も。」
「風の音も。」
「何もなかった。」
「俺は。」
紅夜叉は言った。
「炎の音が聞きたかった。」
「暖炉の音を聞いた。」
「それで少し眠れた。」
「炎の音。」
深水は言った。
「それがお前の水の音か。」
「そうだな。」
紅夜叉は言った。
「お前は厳しそうに見える。」
深水は言った。
「そうか。」
紅夜叉は少し止まった。
「しかし。」
深水は続けた。
「炎の音で眠れる者は。」
「厳しくない。」
「炎の音は優しい音だ。」
紅夜叉は。
深水を見た。
「水の精霊が。」
紅夜叉は言った。
「炎の音が優しいと言うか。」
「水と炎は相反しない。」
深水は言った。
「どちらも生きるために必要だ。」
「水は潤す。」
「炎は温める。」
「どちらも必要だ。」
紅夜叉は少し黙った。
「...良い言葉だ。」
紅夜叉は言った。
「事実だ。」
深水は言った。
「お前は変わっているな。」
紅夜叉は言った。
「どう変わっているか。」
「水の精霊は静かなものが多い。」
紅夜叉は言った。
「しかしお前の言葉には。」
「力がある。」
「深い水は力があります。」
深水は言った。
「静かに見えても。」
「そうか。」
紅夜叉は言った。
「俺は。」
「表面がうるさいが。」
「深いところは静かかもしれない。」
「そうかもしれません。」
深水は言った。
「炎は表面で燃える。」
「しかし。」
「中に静かな核がある。」
「その核がなければ。」
「炎は持続しない。」
紅夜叉は。
池の水面を見た。
自分が映っていた。
「...池に映った自分を。」
紅夜叉は言った。
「久しぶりに見た。」
「どうですか。」
「思ったより。」
紅夜叉は言った。
「怖くない顔をしていた。」
「紅夜叉という名前が合っている。」
深水は言った。
「夜叉は怖いだけではない。」
「守る者でもある。」
紅夜叉は少し間を置いた。
「その名前を。」
紅夜叉は言った。
「最初聞いた時。」
「なぜ夜叉なのかと思った。」
「悪魔の精霊には。」
「もっと威圧的な名前が合うと。」
「今は。」
深水は言った。
「今は。」
紅夜叉は繰り返した。
「合っていると思う。」
「守ることが。」
「私の本質かもしれない。」
「何を守りたいですか。」
紅夜叉は少し考えた。
「まだわからない。」
紅夜叉は言った。
「しかし。」
「あの王国を守りたいと思った。」
「昨夜。」
「王国を見ながら思った。」
「それが答えかもしれません。」
深水は言った。
池の水が揺れた。
風が来た。
朝の風が。
第六章:白龍と雪見 - 空について
宮殿の屋根の近く - 朝
白龍が高いところにいた。
宮殿の屋根の近くに。
飛んでいた。
人型だったが。
浮いていた。
「良い空だ。」
白龍は言った。
下から声が来た。
「そこから見えますか。」
下を見た。
雪見が立っていた。
地面に。
「良く見える。」
白龍は言った。
「上がってくるか。」
「龍のように飛べません。」
雪見は言った。
「では降りる。」
白龍は降りた。
雪見の横に立った。
「空が好きですか。」
雪見は聞いた。
「龍は空にいる。」
白龍は言った。
「だから空が自分の場所だ。」
「しかし今日の空は。」
「いつもより良く見えた。」
「なぜですか。」
「封じられていた時の空は。」
白龍は言った。
「空ではなかった。」
「壁だった。」
「どこまでも続く壁が。」
「空の代わりにあった。」
「壁の空。」
雪見は言った。
「しかし今は。」
白龍は言った。
「本当の空がある。」
「どこまでも続いている。」
「終わりがない。」
「それが良かった。」
「雪は。」
雪見は言った。
「どこからでも降ります。」
「空に終わりがないなら。」
「雪が降る場所も終わりがない。」
「お前は雪を降らせるか。」
「まだ制御できていません。」
雪見は言った。
「封じられていた間に。」
「力の扱い方を忘れました。」
「俺も同じだ。」
白龍は言った。
「飛べているが。」
「本来の力の十分の一も出ていない。」
「回復するかな。」
「するはずだ。」
白龍は言った。
「しかし急がなくていいと思う。」
「なぜ急がなくていいのですか。」
「あの王が言っていた。」
白龍は言った。
「急いで無理をすれば誰かが傷つくと。」
「全員がいることが大切だと。」
「そう言っていましたね。」
「信じるか。」
白龍は聞いた。
「はい。」
雪見は即座に言った。
「即答だな。」
「あの王は。」
雪見は言った。
「一人で来ました。」
「暗黒大陸に。」
「一人で。」
「そして私たちに来てくれと言いました。」
「その言葉だけで来ました。」
「理由はそれだけで十分でした。」
白龍は頷いた。
「俺も同じだ。」
白龍は言った。
「あの言葉だけで十分だった。」
「何と言いましたか。」
「来てくれるかと言った。」
白龍は言った。
「命令ではなかった。」
「頼みでもなかった。」
「ただ聞いてきた。」
「来てくれるかと。」
「その問いかけが。」
雪見は言った。
「一番効きました。」
二人は空を見た。
青い空を。
白い雲が流れていた。
「いつか雪を降らせられるようになったら。」
雪見は言った。
「この空から降らせたい。」
「見に来よう。」
白龍は言った。
「本当ですか。」
「約束だ。」
雪見は。
白龍を見た。
「...ありがとうございます。」
雪見は言った。
白龍は答えなかった。
ただ空を見続けた。
しかし。
その横顔に。
満足した表情があった。
第七章:陽向の発見 - 光の当て方
宮殿の廊下 - 朝
陽向が廊下を歩いていた。
光の精霊が。
光の使い方を試していた。
廊下に影があった。
窓の形の影が。
床に落ちていた。
「面白い。」
陽向は思った。
窓の形が床に映っていた。
四角い光が。
斜めになって。
落ちていた。
陽向は手を出した。
光の中に。
光が手に当たった。
暖かかった。
「外の光が入ってきている。」
陽向は思った。
「自分の光ではない光が。」
「この場所を明るくしている。」
「面白いことだ。」
誰かが来た。
ルナだった。
精霊メイドが。
廊下を歩いてきた。
「あ。」
ルナは言った。
「陽向様ですか。」
「そうだ。」
陽向は言った。
「おはようございます。」
ルナは頭を下げた。
深く。
「礼は要らない。」
陽向は言った。
「え?」
「まだここに来て一日も経っていない。」
陽向は言った。
「礼をされるほどのことをしていない。」
「でも。」
ルナは言った。
「マスターに認められた方々ですから。」
「マスターに認められたから礼をするのか。」
「...はい。」
ルナは言った。
「それは私への礼ではなく。」
陽向は言った。
「マスターへの礼だ。」
ルナは少し考えた。
「...なるほど。」
ルナは言った。
「では。」
陽向は言った。
「私に礼をするより。」
「私が礼をしよう。」
「え?」
「この王国に迎えてもらった礼だ。」
陽向は言った。
陽向が頭を下げた。
ルナが慌てた。
「そんな!上位の方が頭を下げることは!」
「上位も下位も関係ない。」
陽向は言った。
「礼をしたければする。」
「...マスターと同じだ。」
ルナは呟いた。
「何と言った。」
「マスターも同じことをします。」
ルナは言った。
「礼は立場に関係ないと言って。」
「いつも礼をします。」
「そのマスターの場所に来た。」
陽向は言った。
「それは礼を学んだということかもしれない。」
ルナは陽向を見た。
「...陽向様は良い方ですね。」
「まだわからない。」
陽向は言った。
「しかし良い方だと思ってもらえるよう。」
「これから努める。」
「はい!」
ルナは言った。
目が輝いた。
「朝食ができたらお知らせします!」
ルナは言った。
元気よく歩き始めた。
陽向は。
ルナの背中を見た。
「小さな光だ。」
陽向は思った。
「しかし確かに輝いている。」
第八章:神珠尾と私 - 朝の問い
庭 - 朝
私は庭に出た。
朝食前に。
少し歩くために。
神珠尾がいた。
木の横に。
人型で立っていた。
九本の尾を。
意識的に縮めていた。
「朝から外にいたのか。」
私は言った。
「外が好きです。」
神珠尾は言った。
「大陸にいた時も外にいましたが。」
「あの外とここの外は違います。」
「どう違う。」
「大陸の外は。」
神珠尾は言った。
「私の領域でした。」
「私が管理していた。」
「しかしここの外は。」
「誰のものでもない。」
「みんなのものです。」
「それが好きか。」
「はい。」
神珠尾は言った。
「自分のものではない場所にいる方が。」
「楽です。」
「なぜ。」
「自分の場所だと。」
神珠尾は言った。
「管理しなければならない。」
「守らなければならない。」
「しかしここは。」
「ただいればいい。」
「ここも守っている者がいる。」
私は言った。
「知っています。」
神珠尾は言った。
「あなたが守っている。」
「それだから私は楽でいられる。」
「重くないか。」
私は言った。
「何が重いのですか。」
「私が守っているということが。」
私は言った。
「重くありません。」
神珠尾は即座に言った。
「なぜ。」
「私は十万年。」
神珠尾は言った。
「一人で守っていました。」
「大陸を。」
「一人で。」
「それは重かった。」
「しかしここは。」
「あなた一人ではない。」
「多くの者がいる。」
「私もいる。」
「一人で守っていない。」
「それは重くない。」
私は少し考えた。
「その通りだな。」
私は言った。
「一つ聞いていいですか。」
神珠尾は言った。
「どうぞ。」
「大陸の三つの存在について。」
神珠尾は言った。
「ネロという者から情報が来たと聞きました。」
「聞いていたか。」
「私は感覚が鋭い。」
神珠尾は言った。
「聞こうとしなくても聞こえる。」
「三つについて何か知っているか。」
「はい。」
神珠尾は言った。
「大陸にいた時に。」
「遠くから感じたことがあります。」
「どう感じた。」
「虚無の覇王は。」
神珠尾は言った。
「感じると無くなる気がします。」
「自分の中の何かが。」
「引き抜かれる感覚です。」
「侵食か。」
「そうかもしれません。」
「だから近づきませんでした。」
「賢い判断だ。」
「永遠の蛇女王は。」
神珠尾は続けた。
「近くにいるだけで。」
「次の行動が読まれている感覚があります。」
「何をしようとしているかを。」
「知られている感覚。」
「運命を読む力だ。」
「毒滅の蛇王は。」
神珠尾は言った。
「一度だけ遭遇しました。」
「遠くで。」
「どうだった。」
「空気が変わりました。」
神珠尾は言った。
「毒が空気に混じる感覚。」
「すぐに距離を取りました。」
「九尾でも難しいか。」
「難しい。」
神珠尾は言った。
「しかし。」
「しかし?」
「今は一人ではありません。」
神珠尾は言った。
「十一人います。」
「それに。」
「あなたがいます。」
「私が戦うとは限らない。」
私は言った。
「知っています。」
神珠尾は言った。
「しかし。」
「あなたがいるということが。」
「力になります。」
「理由はわかりません。」
「ただそうです。」
私は少し黙った。
「朱鷺白が同じことを言った。」
私は言った。
「誰ですか。」
「母の精霊だ。」
私は言った。
「朱鷺白という名前を与えた。」
「朱鷺白。」
神珠尾は繰り返した。
「美しい名前です。」
「会いに行くといい。」
私は言った。
「同じ母型の存在として。」
「話が合うかもしれない。」
「そうします。」
朝食の鐘が鳴った。
「食堂へ行こう。」
私は言った。
「はい。」
神珠尾は言った。
二人で歩いた。
庭から食堂へ。
エピローグ - 十一人が揃った朝食
食堂 - 朝
全員が揃った。
十一人が。
私が。
ハナが。
アクアが。
食堂に。
アクアが料理を出した。
一人ずつの前に。
全員が食べ始めた。
昨日より自然だった。
箸の持ち方が。
座り方が。
「朝食はいつもこうなのですか。」
輝夜が聞いた。
「そうだ。」
私は言った。
「毎日。」
「毎日。」
輝夜は繰り返した。
「毎日こうやって食べる。」
「良いものだな。」
雷光が言った。
「そうですね。」
雪見が言った。
「私は。」
紅夜叉が言った。
全員が向いた。
「何ですか。」
深水が聞いた。
「いや。」
紅夜叉は言った。
「毎日こうなら。」
「悪くないと思っただけだ。」
「紅夜叉さんらしくない。」
ハナが言った。
「どういう意味だ。」
「もっとかっこいいことを言うと思ってた!」
紅夜叉が少し黙った。
全員が少し笑った。
静かに。
しかし確かに。
「毎日こうなら。」
私は言った。
「悪くないという言葉は。」
「十分にかっこいい。」
紅夜叉は。
私を見た。
「...そうか。」
紅夜叉は言った。
「そうだ。」
私は言った。
食堂に静けさが来た。
良い静けさが。
食べる音だけが聞こえた。
アクアが新しいお茶を持ってきた。
全員の分を。
「これは。」
陽向が聞いた。
「届いたお茶です。」
アクアは言った。
「届いた?」
「今日届いたものがあります。」
アクアは言った。
「だからそう呼んでいます。」
「何が届いたのですか。」
朱鷺白が聞いた。
アクアは。
全員を見た。
「十一人が朝食を食べています。」
アクアは言った。
「それが届いたものです。」
十一人が。
アクアを見た。
「朝食を食べることが届いたものですか。」
白龍が言った。
「三万年の経験では。」
アクアは言った。
「当たり前のことが。
最も大切です。」
「当たり前のことが当たり前にできる。」
「それが届いたということです。」
しばらく誰も言わなかった。
「...そうだな。」
神珠尾が言った。
「当たり前に朝食を食べている。」
「万年ぶりに。」
「それが届いたということだ。」
全員が頷いた。
一人ずつ。
お茶を一口飲んだ。
「美味い。」
雷光が言った。
また最初に言った。
「雷光さんはいつも最初に言う。」
ハナは言った。
「そうか?」
「昨日の朝食も。」
「美味いって最初に言った。」
「...覚えていたのか。」
「覚えてるよ!」
ハナは言った。
雷光は少し困った顔をした。
しかし嫌そうではなかった。
食事が続いた。
朝が続いた。
外から光が入ってきた。
秋の終わりの光が。
食堂を満たした。
「良い朝だ。」
私は思った。
「最初の朝が良かった。」
「十一人の最初の朝が。」
「良かった。」
それが全てだった。
それで十分だった。
届いたお茶の湯気が。
朝の光の中に。
ゆっくりと。
立ち昇っていた。
【キャラクター設定公開】アクア——水を統べる至高の精霊、そして封じられた一撃
皆さん、こんにちは!
「ダークコンチネント:生きる大陸と至高の支配者」の作者です。
今回公開するのは——
至高の精霊、
アクア。
そして——
彼女の切り札が、
なぜ封じられているのか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ アクアとは
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
水を統べる、
至高の精霊。
マスター・ヴィカスの
至高の精霊一族の
一人であり——
「マスター開発ぁぁぁ!」
——そう叫びながら、
無邪気に、
だが誰よりも忠実に、
彼を慕っている。
その存在感だけで——
不死の存在すら、
本能的な恐怖を覚える。
美しく、純粋な外見の裏に——
ダーク・コンチネント最大級の
破壊力を秘めている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ アクアの意志は、マスターの意志
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アクアの能力の根源——
それは、
マスター・ヴィカスの
意志と直結している。
マスターの意志が強ければ強いほど——
彼女の一撃は、
より破滅的なものになる。
彼女のエネルギーは——
永遠世界高度AIとも
直接繋がっており——
その攻撃は、
あらゆる障壁も、
概念も、
存在の法則さえも
無視する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 至高の攻撃——「水の支配」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
アクアの切り札には——
3つの型がある。
「絶対抹消」——
対象の魂、概念、記憶、
存在のすべてを
完全に消し去る。
転生も、
回復も、
いかなる復元も
不可能になる。
だが——
アクアは誓っている。
この型を、
決して使わないと。
「純粋破壊」——
対象を、
すべての次元と時間軸から
完全に破壊する。
この攻撃は、
選ばれた対象のみに作用し、
それ以外のすべてには
無効となる。
「再構築の波動」——
アクアが、
常に選ぶ攻撃。
対象を破壊しながらも——
その者に生きる意志があれば、
回復と治癒を
同時にもたらす。
破壊と再生、
その均衡を保つ一撃。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ わずか5パーセントで、島が消えた
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
かつて——
10億平方キロメートルの島で、
実演が行われた。
アクアが放ったのは——
彼女の力の、
たった5パーセント。
島は、
一瞬にして消え去った。
その後——
生ける宝剣ヴァジュラ・レヴェリーが、
すべてを完全な状態に
復元させた。
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◆ なぜ、マスターは禁じたのか
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その実演の後——
「アクア……
二度と、
この攻撃を
使わないでくれ。
約束してくれ。」
「はい、マスター。
私は——
力のたった1パーセントだけを
使うと誓います。」
そして、
永遠世界高度AI——
マイ・エターナルが、
静かに告げた。
「この力の
わずか50パーセントでさえ——
海の生き物たちや
人魚たちを、
全滅させていたでしょう。」
「1パーセントで——
十分だ。
それが、
お前の限界だ。」
「約束します、
マスター。」
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◆ 力ではなく、愛のために
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アクアは——
すべてを壊すために
戦うのではない。
マスターと、
その家族を守るために
戦う。
忠誠。
愛情。
破壊。
そして——
再生。
それが——
アクア、
その存在のすべてだ。
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毎日19:00更新中。
「アクアの本当の力が
解き放たれる日は
来ると思いますか?」
コメントで聞かせてください。
お楽しみに!
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