第128章:道化師との茶会 - 予測不能な者が見たもの
序章 - 退屈という名の飢え
世界で最も強い者の苦しみは。
弱さではない。
退屈だ。
誰も来ない。
誰も挑まない。
誰も驚かせてくれない。
世界が。
いつも同じ顔をして。
いつも同じように動いている。
その退屈が。
最も強い者を。
最も苦しめる。
だから健司は。
風が良ければ動いた。
面白そうな匂いがすれば。
向かった。
理由はそれだけだった。
それで十分だった。
第一章:道化師の到着
ドラゴンハート王国 - 正門前 - 午後
影がまず来た。
影ではなかった。
オーラだった。
何かが近づいてくる気配が。
門の外から来た。
警備兵が気づいた。
まだ姿が見えない段階で。
体が反応した。
「誰か来ます。」
警備兵の一人が言った。
「見えるか。」
別の者が聞いた。
「見えません。」
「しかし感じます。」
一分後。
姿が見えた。
一人だった。
黒いコートを着ていた。
シルクハットを被っていた。
背が高かった。
手にカードが一枚あった。
くるくると回しながら。
歩いていた。
歩き方が普通だった。
急いでいなかった。
威圧しようともしていなかった。
ただ歩いていた。
しかし。
その歩き方から。
何かが溢れていた。
抑えようとしていない何かが。
警備兵が身構えた。
武器に手をかけた。
男は止まった。
門の前で。
カードの回転を止めた。
「ヴィカース王に会いたい。」
男は言った。
声が低かった。
しかし穏やかだった。
「キャプテン・健司・隼という。」
警備兵は震えた。
その名前を知っていたから。
体が覚えていたから。
このオーラを。
「少々お待ちください。」
警備兵は言った。
声が少し上擦った。
健司は頷いた。
待った。
また。
カードを回し始めた。
退屈だったから。
第二章:報告
書斎
「来ました。」
クロガネが報告した。
「どんな様子だ。」
私は言った。
「普通に立っています。」
クロガネは言った。
「カードを回しながら。」
「退屈そうに。」
「退屈そうに。」
私は繰り返した。
「はい。」
「あれほどのオーラを放ちながら。」
「本人は退屈そうに立っています。」
「通せ。」
私は言った。
「応接間ですか。」
「庭にしよう。」
私は言った。
クロガネは少し止まった。
「庭?」
「晴れている。」
私は言った。
「外の方が良い日もある。」
「...わかりました。」
「アクアにも伝えろ。」
私は言った。
「お茶を庭に持ってきてほしい。」
「熱いものを。」
クロガネは去った。
リスカレスが影から出てきた。
「私も行きます。」
「見えない場所にいろ。」
私は言った。
「わかっています。」
「しかし。」
「しかし?」
「その者は。」
リスカレスは言った。
「私の位置に気づくかもしれません。」
「気づいたら気づいたで構わない。」
私は言った。
「危険です。」
「危険を承知で迎える。」
私は言った。
「それがこの王国の形だ。」
リスカレスは一秒だけ止まった。
「...わかりました。」
言った。
影に溶けた。
第三章:庭での対面
宮殿の庭 - 午後
庭に出た。
花が咲いていた。
様々な色が。
様々な形が。
アクアが世話をしている花だった。
健司が来た。
案内された。
庭に入ってきた。
最初に。
花を見た。
少しだけ。
次に私を見た。
「ヴィカース王か。」
健司は言った。
「そうだ。」
私は言った。
「座ってくれ。」
テーブルがあった。
椅子が二つあった。
庭の中央に。
健司は座った。
シルクハットを脱がなかった。
コートも脱がなかった。
「庭に招くとは。」
健司は言った。
「変わっているな。」
「晴れているから。」
私は言った。
「それだけか。」
「それだけだ。」
健司は少し笑った。
歪んでいたが。
笑いだった。
「ここに来た時から思っていた。」
健司は言った。
「普通だと。」
「何が。」
「王国が。」
健司は言った。
「強い者が治める場所は。」
「大抵重い。」
「威圧的だ。」
「しかしここは違う。」
「重いのが好きか。」
私は聞いた。
健司は少し止まった。
「好きでも嫌いでもない。」
健司は言った。
「ただ。」
「普通じゃないものが珍しいだけだ。」
第四章:アクアのお茶
扉が開いた。
アクアが来た。
お茶を持って。
音もなく。
健司が気づいた。
視線が向いた。
カードが止まった。
「...」
健司は何も言わなかった。
ただ見ていた。
アクアはテーブルにお茶を置いた。
私の前に。
健司の前に。
丁寧に。
「どうぞ。」
アクアは言った。
健司に向かって。
健司は答えなかった。
アクアを見たままだった。
アクアは去ろうとした。
「待て。」
健司は言った。
アクアは止まった。
振り返った。
「お前は何だ。」
健司は言った。
「人間ではない。」
「古代精霊です。」
アクアは言った。
「...古代精霊。」
健司は繰り返した。
初めて見るものを見る目で。
「珍しいのですか。」
アクアは聞いた。
「珍しい。」
健司は言った。
「見たことがない。」
「三万年以上生きています。」
アクアは言った。
「だから珍しくないかもしれません。」
健司は。
また笑った。
今度は歪みが少なかった。
「三万年か。」
健司は言った。
「俺より長い。」
「あなたはどのくらいですか。」
アクアは聞いた。
「わからない。」
健司は言った。
「数えたことがない。」
アクアは少し考えた後。
「ではお茶を飲んでください。」
言った。
「旅で体が冷えているはずです。」
健司は止まった。
「なぜわかる。」
「三万年の観察です。」
アクアは言った。
「海の上を旅した者の気配があります。」
「冷えています。」
健司はお茶を見た。
一口飲んだ。
「...温かい。」
独り言のように言った。
「当然です。」
アクアは言った。
去った。
健司はその背中を見た。
しばらく。
「変わった場所だ。」
健司は言った。
私に向かって。
「そうか。」
「来る前から。」
健司は言った。
「ここは普通と違うと思っていた。」
「来てみてわかった。」
「何がわかった。」
「普通と違う理由が。」
健司は言った。
「言ってくれ。」
健司は少し間を置いた。
「人が。」
健司は言った。
「普通だ。」
「普通か。」
「強さを誇示していない。」
健司は言った。
「あの古代精霊も。」
「Beyond Omega Infiniteの力があるのに。」
「ただお茶を持ってきた。」
「それが普通じゃない。」
「普通なのか普通じゃないのか。」
私は言った。
健司は少し笑った。
「普通に見えて普通じゃない。」
健司は言った。
「それが一番面白い。」
第五章:本題 - なぜ来たか
「なぜ来た。」
私は言った。
前置きを省いた。
健司はカードを取り出した。
回し始めた。
「理由を聞くか。」
「聞く。」
「風が良かったから。」
健司は言った。
私は少し止まった。
「それだけか。」
「それだけだ。」
「バウンティタワーを通して連絡してきたのに。」
私は言った。
「風が良かっただけか。」
「違うか?」
健司は聞いた。
「理由としては薄い。」
私は言った。
「俺はいつもそうだ。」
健司は言った。
「理由が薄くて動く。」
「理由が厚くても動かないことがある。」
「そういう生き方だ。」
「わかった。」
私は言った。
健司は止まった。
「わかったで終わりか。」
「他に何を聞く必要がある。」
私は言った。
健司はお茶を飲んだ。
もう一口。
「面白い王だ。」
健司は言った。
「どういう意味だ。」
「普通の王は。」
健司は言った。
「俺が来ると身構える。」
「戦う気か。」
「目的は何か。」
「警戒を強める。」
「お前は違うか。」
「警戒はしている。」
私は言った。
「しかし身構えることと警戒することは別だ。」
「どう違う。」
「身構えると。」
私は言った。
「相手に伝わる。」
「そうすると相手も身構える。」
「それが続くと。」
「理由のない緊張が生まれる。」
「理由のない緊張は。」
「良い対話の邪魔をする。」
健司は止まった。
カードが止まった。
「...賢いな。」
健司は言った。
「俺が今まで会った王の中で。」
「そういうことを言ったのは初めてだ。」
「どんな王に会ってきた。」
私は聞いた。
「ほとんどが怖がった。」
健司は言った。
「俺を見た瞬間に。」
「震えるか。」
「または虚勢を張った。」
「どちらにしても。」
「つまらなかった。」
「つまらないと何をする。」
「去る。」
健司は言った。
「それだけだ。」
「攻撃はしない。」
「ただ去る。」
「なぜ攻撃しない。」
「震えている者を倒しても面白くない。」
健司は言った。
「面白くない戦いは時間の無駄だ。」
「では面白い戦いとは何だ。」
健司は。
初めて真剣な顔をした。
歪みのない顔で。
「相手が本気になる戦いだ。」
健司は言った。
「力を全部出してくる戦いだ。」
「計算ではなく。」
「感情で動いてくる戦いだ。」
「感情で動く戦いが好きか。」
「感情のない戦いは踊りだ。」
健司は言った。
「踊りは見ていられない。」
「お前が本気になる相手は。」
私は言った。
「どんな者だった。」
健司は少し間を置いた。
「いない。」
言った。
「今まで。」
「一人もか。」
「一人もいない。」
健司は言った。
静かに。
「それが退屈の理由か。」
健司は。
私を見た。
「...そうだ。」
言った。
「わかるか?」
「わからない。」
私は言った。
「経験がないから。」
「しかし想像はできる。」
「誰も本気でぶつかってこない世界は。」
「孤独だろう。」
健司は。
また止まった。
「孤独か。」
繰り返した。
「そう言われたのは初めてだ。」
「違うか。」
「...違わない。」
健司は言った。
「退屈と孤独は似ている。」
第六章:カードと永遠世界
「一つ聞いていいか。」
私は言った。
「聞け。」
「永遠世界のルール第四条を。」
私は言った。
「誰も恐れる中で。」
「お前は気まぐれに使うと聞いた。」
健司はカードを一枚取り出した。
空中に投げた。
くるくると回った。
落ちてきた時に。
また手でつかんだ。
「使うのが楽しいから使う。」
健司は言った。
「楽しいとはどういう意味だ。」
「条件を敵に決めさせると。」
健司は言った。
「必ず穴がある。」
「人間は自分に有利な条件を選ぶ。」
「しかし自分に有利な条件を選ぼうとすると。」
「必ず何かを見落とす。」
「その見落としが面白い。」
「見落とした者はどうなる。」
「気づく。」
健司は言った。
「自分が穴を作ったと気づく。」
「その顔が面白い。」
「残酷だな。」
私は言った。
「そうか?」
健司は言った。
「俺は殺さない。」
「倒すだけだ。」
「そして去る。」
「殺さないのはなぜだ。」
健司は少し考えた。
「死んだら面白くなくなるからだ。」
健司は言った。
「相手が生きていれば。」
私は言った。
「また会える。」
「そうだ。」
「次はもっと本気で来るかもしれない。」
「そうだ。」
「それが楽しみか。」
「そうだ。」
「では殺さないのは慈悲ではなく。」
私は言った。
「可能性を残しているのか。」
健司は。
また止まった。
「...そういう言い方はしたことがなかった。」
健司は言った。
「しかし正確かもしれない。」
「可能性を残す。」
私は言った。
「それは案外優しい考え方だ。」
健司は眉を上げた。
「俺が優しい?」
「優しいとは言っていない。」
私は言った。
「優しい考え方だと言った。」
「本人が優しいかどうかは別の話だ。」
健司は笑った。
今日で一番大きく。
「面白い区別だ。」
健司は言った。
第七章:タクミの話
「一つ聞いていいか。」
今度は健司が聞いた。
「聞く。」
「タクミという男を知っているか。」
健司は言った。
「知らない。」
私は言った。
「俺が怖い存在の一人だ。」
健司は言った。
「怖い?」
「俺を怖いと思う者はいない。」
健司は言った。
「しかしタクミは違う。」
「俺を見て。」
「『接触するな』と言う。」
「俺のことを計算できないと言う。」
「計算できない者は怖いと言う。」
「それはその者が賢いということだ。」
私は言った。
「賢いか?」
「計算できないものを。」
私は言った。
「計算できないと認識できる者は賢い。」
「できないことをできると思う者より。」
「はるかに賢い。」
健司は少し考えた。
「では俺がタクミのところへ行ったら。」
健司は言った。
「どうなる。」
「タクミという者を知らないから答えられない。」
私は言った。
「しかし。」
「しかし?」
「賢い者が怖いと言う相手は。」
私は言った。
「本当に予測不能なのだろう。」
「予測不能な者に会いたいなら。」
「行けばいい。」
「俺は止めない。」
「止めないのか。」
「関係がないから。」
私は言った。
「俺がどこへ行っても関係ないと言うか。」
「関係ない。」
私は言った。
「お前がどこへ行くかは。」
「お前の自由だ。」
「私がどうこう言うことではない。」
健司は。
また私を見た。
「王国に来た者に。」
健司は言った。
「行動の自由を言う王か。」
「来た者に従えとは言わない。」
私は言った。
「来た者がここで何をするかは。」
「その者の判断だ。」
「ただし。」
「ただし?」
「王国の規則は守ってもらう。」
私は言った。
「それだけだ。」
「規則は何だ。」
「無用な暴力を振るわないこと。」
私は言った。
「それだけが主な規則だ。」
「簡単だな。」
健司は言った。
「複雑な規則は守れない。」
私は言った。
「シンプルな規則の方が長持ちする。」
「それも賢い区別だ。」
健司は言った。
第八章:戦いの可能性
「俺と戦う気はあるか。」
健司は聞いた。
突然に。
私は少し考えた。
「ない。」
私は言った。
「なぜ。」
「戦う理由がないから。」
私は言った。
「理由がいるか。」
「私は理由のない戦いをしない。」
私は言った。
「面白そうという理由では足りないか。」
「足りない。」
私は言った。
健司は。
また笑った。
今日で三度目だった。
「理由をくれ。」
健司は言った。
「何?」
「俺と戦う理由をくれ。」
健司は言った。
「そうすれば戦える。」
「理由を私が作るのか。」
「そうだ。」
「なぜ私が。」
「お前が理由を大切にするからだ。」
健司は言った。
「理由なしに戦わない者が。」
「理由ありで戦う時がどれほどのものか。」
「見たい。」
私は少し間を置いた。
「逆に聞く。」
私は言った。
「聞け。」
「お前は私の何を試したいのか。」
健司は。
止まった。
「試す?」
「来た理由が風だとしても。」
私は言った。
「ここで何を見たいかはあるはずだ。」
「そうでなければ。」
「既に去っていた。」
健司は。
私を見た。
長い間。
「...王だと思って来たが。」
健司は言った。
「違うものを見ている気がする。」
「何に見える。」
「わからない。」
健司は言った。
「それが面白い。」
「だから去らないのか。」
「そうだ。」
アクアがお茶を持ってきた。
二杯目を。
音もなく。
健司がそれを見た。
三万年の存在が。
ただお茶を注ぎに来た。
「不思議な場所だ。」
健司は呟いた。
第九章:影の反応
アクアが去った後。
健司が言った。
「影に誰かいる。」
私は答えなかった。
「気づかせたくなかったか。」
「気づいても気づかなくても。」
私は言った。
「構わない。」
「なぜ隠れている。」
健司は影に向かって言った。
影から。
リスカレスが出てきた。
健司が見た。
カードが止まった。
「...久しぶりに。」
健司は言った。
「重いオーラを感じた。」
「リスカレスだ。」
私は紹介した。
「私の側近だ。」
「側近か。」
健司はリスカレスを見た。
「面白い関係だ。」
「なぜ。」
「このオーラを持つ者が。」
健司は言った。
「側近として動いている。」
「俺には理解できない。」
「理解しなくていい。」
リスカレスは言った。
「ただの事実だ。」
健司は笑った。
「側近も変わっている。」
健司は言った。
「主を守れとも言わない。」
「ただ事実だと言う。」
「守ることは当然だからです。」
リスカレスは言った。
「言う必要がない。」
「当然か。」
健司は言った。
「はい。」
「お前は戦えるか。」
健司はリスカレスに言った。
「できます。」
「俺と対等か。」
「わかりません。」
リスカレスは言った。
「やってみなければ。」
「正直だな。」
「嘘をつく理由がない。」
「今やるか?」
私が口を開いた。
「やらない。」
健司が私を見た。
「なぜ。」
「お茶の途中だから。」
私は言った。
健司は。
また笑った。
一番大きく。
今日の中で。
「お茶の途中か。」
健司は言った。
「そういう理由で止める王は初めてだ。」
「お茶は大切だ。」
私は言った。
「アクアが準備した。」
「無駄にしたくない。」
「古代精霊が準備したお茶は無駄にできないか。」
「誰が準備したものでも無駄にしない。」
私は言った。
「それだけだ。」
第十章:道化師が見たもの
「一つだけ言ってもいいか。」
健司は言った。
「どうぞ。」
健司はカードを全部しまった。
珍しかった。
手が空になった。
「ここは面白い。」
健司は言った。
「どこが。」
「強い者が力を使っていない。」
健司は言った。
「古代精霊がお茶を持ってくる。」
「Beyond Omega Infiniteの者が影で見張る。」
「王が戦いより茶を優先する。」
「それが普通だと思っているが。」
私は言った。
「普通ではない。」
健司は言った。
「世界のどこにも。」
「こういう場所はない。」
「お前は世界を全部見たのか。」
「ほとんど見た。」
健司は言った。
「そのお前が。」
私は言った。
「ここを面白いと言うか。」
「そうだ。」
「退屈な場所だと思っていた。」
「暗黒大陸の近くに。」
「何があるかと思っていた。」
「来てみて違った。」
「では退屈ではなかったか。」
「退屈ではなかった。」
健司は言った。
「久しぶりに退屈でなかった。」
「それは良かった。」
私は言った。
「また来るかもしれない。」
健司は言った。
「来ればいい。」
私は言った。
「拒まないか。」
「来たものは迎える。」
私は言った。
「それがここの礼儀だ。」
健司は立ち上がった。
シルクハットを直した。
「行く。」
健司は言った。
「今日来た理由が風だったとすれば。」
私は言った。
「今の風はどうだ。」
健司は空を見た。
少しの間。
「良い風だ。」
言った。
「なら帰れるな。」
「ああ。」
「また来る風がある時に来い。」
私は言った。
「お前が言うのか。」
「言った。」
健司は少し間を置いた。
「約束はしない。」
健司は言った。
「しかし。」
「風が向けば来る。」
「それで十分だ。」
健司が歩き始めた。
庭を横切って。
門に向かって。
振り返らなかった。
しかし途中で言った。
「お茶は美味かった。」
アクアに向けた言葉だったが。
アクアはそこにいなかった。
厨房にいた。
「伝えておく。」
私は言った。
「頼む。」
健司は言った。
そして消えた。
姿が門の向こうに消えた。
エピローグ - 道化師が去った後
庭に静けさが戻った。
リスカレスが影から出てきた。
「どう思いましたか。」
リスカレスは言った。
「面白い男だった。」
私は言った。
「危険ではないですか。」
「危険だ。」
私は言った。
「しかし悪意はない。」
「それが重要だ。」
「悪意のない危険は。」
リスカレスは言った。
「どう扱いますか。」
「普通に接する。」
私は言った。
「普通に接することが。」
「一番自然だ。」
「また来ると思いますか。」
「来ると思う。」
私は言った。
「なぜそう思うのですか。」
「退屈でなかったと言っていた。」
私は言った。
「退屈でない場所を見つけた者は。」
「戻ってくる。」
「ネロの言葉と同じですね。」
リスカレスは言った。
「そうだな。」
私は言った。
「演じていない場所と。」
「退屈でない場所は。」
「似ている。」
アクアが来た。
片付けに来た。
お茶のカップを。
「健司という方は去りましたか。」
アクアは聞いた。
「ああ。」
私は言った。
「お茶は美味かったと言っていた。」
アクアは少し止まった。
「そうですか。」
アクアは言った。
「良かったです。」
「なぜ良かった。」
「冷えていた体に。」
アクアは言った。
「温かいものが届いたから。」
「それで良かった。」
「届いた。」
私は繰り返した。
「はい。」
アクアは言った。
「届いた朝食と同じです。」
「届いたお茶です。」
「名前をつけるか。」
私は言った。
「それは道化師が次に来た時に。」
アクアは言った。
「本人につけてもらいましょう。」
「来ると思っているのか。」
「はい。」
アクアは言った。
「退屈でなかった者は帰ってきます。」
「三万年の観察か。」
「はい。」
私は笑った。
庭の花が揺れた。
風が来た。
良い風が。
どこかで。
道化師が感じているかもしれない風が。
庭を通り抜けた。
それだけだった。
それで十分だった。
【世界設定公開】永遠世界高度AI・絶対法則第9条——「核滅の裁き」
皆さん、こんにちは!
「ダークコンチネント:生きる大陸と至高の支配者」の作者です。
第8条に続き——
今回公開するのは、
56の絶対法則の中でも
最も恐れられている一条。
第9条。
「核滅の裁き」。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 第9条の哲学
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「争うには、二人が必要だ。
ゆえに——
双方に、責任がある。」
この法は——
絶対的な平等の上に
成り立っています。
すべての争い、
すべての裏切り、
すべての破壊には——
必ず、二つの側面がある。
選ぶ者と、応じる者。
仕掛ける者と、止めなかった者。
罪は、一方だけのものではない。
痛みも、一方だけのものではない。
だからこそ——
この法が発動する時、
永遠世界高度AIは
「誰が始めたか」を問わない。
ただ——
すべてを、終わらせる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ なぜ、誰も発動を望まないのか
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
永遠世界の中でも——
最も危険で、
最も"壊れた"法。
誰も、これを
発動させる勇気を持たない。
なぜなら——
これが降りた時、
生き残る者はいない。
罪ある者も。
無垢な者も。
神々も、天使も、女神も、
原初の存在すらも——
例外はない。
抵抗は無意味。
無効化も無意味。
この法は——
対象を攻撃するのではなく、
対象という"概念"そのものを
消し去るからです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ どう発動するのか
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発動した瞬間——
9種類の"核滅の死"が、
天から同時に降り注ぐ。
それぞれの攻撃は——
対象の存在、性質、起源に応じて
自動で選ばれる。
対象を最も確実に
消し去る一撃が、
選ばれる。
核レベルの絶対的な力を持ち、
概念ごと存在を消去する。
他者による蘇生は——
不可能。
対象は、二度と戻らない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 9種類の核滅
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
深淵核滅——対象を虚無の彼方へ消し去る。存在の概念すら破壊する。
氷核滅——絶対零度で凍結させ、魂ごと永遠の氷片に変える。
プラズマ核滅——プラズマ級の熱で対象を焼き尽くす。残るのは原子の塵のみ。
原初核滅——原初の存在や怪物専用。対象とその周囲一帯を、存在の概念ごと消去する。
光核滅——神聖な光で対象を分解し、存在の痕跡すら浄化し消し去る。
重力核滅——無限の重力で対象を押し潰す。周囲の時空ごと崩壊させる。
音核滅——無限周波数の振動で、魂と存在を粉砕する。
生核滅——対象を内側から腐敗、爆発させ、生命の本質を完全に消滅させる。
時核滅——対象を時間軸から消去する。存在した事実すら、なかったことになる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ この法の、もう一つの顔
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第9条は——
絶対的な終焉の象徴として
存在してきました。
ですが——
物語が進むにつれて、
この法にまつわる
"ある変化"が
明らかになっていきます。
なぜ、この法だけが——
他の55の法則と
違う扱いを受けているのか。
なぜ、この法だけが——
いつか、姿を変えるのか。
その答えは——
物語の中で、
少しずつ明かされていきます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「これは、慈悲ではない。
これは、正義でもない。
これは——均衡だ。
これこそが、究極の真実の哲学だ。」
第9条は、最後の法。
かつて、それはすべての終わりだった。
だが——
いつか、それは
"何か"の守護者になる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
毎日19:00更新中。
「第9条が変わる理由、何だと思いますか?」
コメントで聞かせてください。
お楽しみに!
#世界設定 #永遠世界高度AI #絶対法則第9条 #ライトノベル #ダークコンチネント #56の絶対法則




