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30.言動理由

 嘘と本当を混ぜて話し、いかにも全て本当のことのように思わせる。

 そう提案したのは辺境伯様だった。

 そうすると決まったのは、西の森の探索から帰ってきて私が報告書を提出しに行った時のことだ。


「カルラは誰だと思う?」


 私の報告書を確認しながら辺境伯様は問うてきた。


「誰……?」

「こうして文字を見ると明らかに誰かの意図を感じる。誰が何の目的のために行なったものだと思う?」


 その言葉に私は少し思案した。

 最初は辺境伯様の地位を狙ったものだろうと思った。怪我を負ったのが彼だからというのもあるかもしれないが、貴族という立場と管理人という立場はいろんなところで使えるものだろうから。

 だけどそれにしてはやることがあまりにもずさんな気がした。いずれ誰かが気づくような痕跡を残しているし、後始末が中途半端だ。それも全て。

 魔法使いであればすぐに気づくことばかりで、わざと西の森が注目されるようなことをしているのではないだろうか。


「正直、誰が行なったのかは現段階で分かりません。だけど高級魔物が出てきた以上、高位魔法の使える魔族が関わっているのは明らかだと思います」

「そうだな」

「高位の者となれば数は多くありません。私の方で調査いたします」

「そこは君に任せよう。ただ私は今回の件、魔族だけではない気がしている」

「え?」


 やったことを考えると魔族しか出来ないようなことばかりで。

 言葉の意図を知りたく、辺境伯様をじっと見つめる。


「一つ聞きたいのだが、高級魔物の出る場所に配置される魔法使いというのはどういう者が多いんだ?」

「配置基準があるらしいのですが、基本的には高位魔法の使える魔族が配置されます。それこそ高級魔物を抑えられるほど強い……あれ?」


 西の森への配置が決定した時は急なことで見落としていたが、魔法に関してポンコツの私が配置されるのはそもそもおかしくないだろうか。

 高級魔物が出現したと分かった後に配置されたのがこの私だなんて。


「前に辺境伯様は言いましたよね? 殿下たちが探索力の長けた者を送ったと」

「ああ。だか君が先ほど言った配置基準であれば少しおかしいな」

「………………まさか。いや、でも」

「私は今回の件、王族も絡んでいると思っている」

「王、族……」


 王族であれば高位魔法が使える魔族との接点は多いだろう。上の位であればあるほど配置する魔族に口出すこともできるはずで。

 

 たらりと嫌な汗が背中を伝う。

 

 必要とされたから配置されたものだと思っていたが別の思惑があったということだろうか?


「とはいえ、何故このようなことをするのか理由が分からない」

「もしかして」


 私たちの想像のつかない思惑が絡んでいるかもしれない。

 それでも現段階で接点という接点が思い当たらない。


「……カモフラージュ?」

 

 カモフラージュかもしれないと一度そう感じてしまうとこれまで起きた出来事の全てが、何らかの目的をカモフラージュするためのものであると思えてきた。


「その可能性があるな。そこでだ。近々行われる定期報告会にて『辺境伯様に恨みを持った外部の魔族が怪しい』と報告してほしい」

「辺境伯様に恨みを持った?」

「ああ。あえて不確定の情報を流し、少々皆の反応と動きを見たい」

「それ、定期報告会で流す意味ありま…………えっ」


 意味があるのかと疑問を投げようと口にしながら思う。

 まさか内部に関係者が紛れているのではと。


「内通者などいないかもしれない。そうであればいいという私の願望もあるが。頼めるか?」

「……分かりました」


 そういった経緯の元、私は辺境伯様に恨みを持った外部の魔族が怪しいとそう口にしていた。

 

 私の目から見て、怪しい動きをした者はいなさそうだった。後ほど辺境伯様との答え合わせは必要だが、黒幕の特定は時間を要するだろうと思った。

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