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File.48「流星・俄雨」

◆御角 陽彩 (みかど ひいろ) 15歳(高1)

 本作の主人公。運動神経抜群だが能天気。瀕死体験をきっかけにクロッカスを志した。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆明智 柚葉 (あけち ゆずは) 15歳(高1)

 フレンドリーなクラスのムードメーカー。可愛いものが大好き。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆白百合 結衣 (しらゆり ゆい) 15歳(高1)

 人見知りな性格で、陽彩とは入試で協力し合った仲。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆黒華 苧環 (くろばな おだまき) 15歳(高1)

 クロッカス入隊試験首席合格の優等生だが、キザで性格に難あり。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。

 夜空が怖くなった。


 ――あの日を、思い出してしまうから。



 上を向いて歩くことが辛くなった。


 ――あの日を、思い出してしまうから。



 あの事件の直後、結衣は転校を余儀なくされた。


 コロニー外に無断で足を踏み入れたことと、メモリングを許可無く外した原因が小長井さんにあったこともあり、結衣は学校側から罪に問われることは無かった。しかし、凶暴化した結衣が小長井さんを巻き込んで全治1ヶ月の大怪我を負わせたことは瞬く間に学校中に広まり、気がついた頃には結衣の居場所は何処にもなかったのだ。



『なあ、アイツの噂ってマジ?』


『マジマジ』


『うわ~怖ぇ〜』


『私もう関わるのやめよっかな〜』


『人間じゃねーよ、アイツ』



 冷酷な言葉の矢が毎日のように結衣の頭上を飛び交った。目を閉じても、耳を塞いでも、この漆黒に包まれた魘夢(えんむ)は生きた心地がしなかった。


 ついには両親からも見限られ、結衣に残された道はクロッカス(ここ)しかなかった。決して交わることのない、もう一人の結衣――”黒百合(くろゆり)ちゃん”を唯一活かせる場だ。


 単なる小長井さんに対する罪滅ぼしではない。これは、唯一の心の支えだった菊ちゃんに対する、結衣なりの供養だ。


 あの時トキシーに殺されていれば――とは考えたくなかった。


 ”肉体的な死”よりも、”精神的な死”の方が辛い――そんな気がしたから。



 生きる希望をここで失うわけにはいかなかった。


 ――人生は、たった一度きりなのだから。



『菊ちゃん……!結衣が……菊ちゃんの分まで……精一杯……悔いなく、生きるからっ……!!』



 菊ちゃんの亡骸の前で振り絞った誓いも、この夢が覚めてしまったら終わってしまうのだろうか……


 こんな結末は、笑い話にすらならない。


 結衣の”精神的な死”は、もう訪れてしまったのだろうか……



 一筋の銀の糸が結衣に降り注ぐ。


 ……流れ星?


 嗅ぎ慣れた独特な匂い。流星のごとく降り注ぐ、俄雨(にわかあめ)だ。


 これが流れ星なら、結衣の願いだってきっと叶えてくれるだろうに。


 頬を伝っているのは、雨かあるいは……それすらも解らないほど、結衣の意識は曖昧だった。


「――らゆりさんっ!!」


「……」


 男の子の声が薄っすらと聞こえる。


「白百合さんっ!!!」


「結衣ちゃん!しっかりですぅ〜!!」


 御角さんと……明智さん……?


「とりあえず、白百合さんは俺が運ぶから、明智さんは後衛を頼む!!」


「了解ですぅ~!!」


 何が……起きているの……?


「ヨイッ……ショッと!」


 気がつくと結衣は御角さんに抱きかかえられていた。


 危なっかしいけど、誰よりも頼れる大きな背中に、結衣は身体を預けるしかなかった。


「――う、だい……からなっ!!」


 次第に聴覚が遮断され始め、状況が整理できないまま結衣の意識はそのまま遠のいていった。



————————————————————◇◆



 ――遡ること数分前、人工森林・深淵部


「とにかく、白百合さんを何とかしねぇと……!」


「キミ如きに彼女を制御できるとでも?」


 拳を握りしめながら白百合を遠目で見つめる俺を、黒華は鼻で嗤う。


「そんなの……やってみねぇとわかんねぇだろ!!」


 無謀かもしれない。でも、動かなければこの状況は打開できない。


 俺は僅かな可能性に賭け、狂戦士化した白百合――”黒百合”に近づき両腕を広げる。


「白百合さんっ!!俺だ!!陽彩だ!!」


「あぁん?誰だよテメェは。ユイちゃんの獲物を横取りする気か?邪魔すんじゃねぇ!!」


「いやちが――うおっ!!」


 俺を一切認識していない黒百合は、(またが)っていたトキシーの背中を足場にして俺に飛びかかってきた。


「くたばれぇえええええええええっっ!!!!!!」


 黒百合は俺に殺意を向け、顔面目がけて拳を突きつける。


「待って白百合さ――グべボワッッッッッッッ!!!!!!!」


 俺は反射的に盾を構えたものの、防ぐことができるのはトキシーの攻撃のみ。黒百合の強烈なパンチは俺の顔面に直撃し、俺は回転しながら黒華の足元まで派手に吹っ飛ばされてしまった。


「痛ってぇ……!ホントに白百合さんとは思えないな……とんでもないパワーだ……」


「ハハッ☆だから言ったじゃないか。魔法がかかった彼女は誰にも止められないのさ。トキシーチャンがくたばるのを待つしかないよッ」


「クソッ!何か方法は……」


 パンパンに腫れた顔面を擦りながら思考していると、茂みの奥から聞き馴染みのある声が飛んできた。


「ですですぅ~!!御角く~~ん!!」


「んっ、明智さん!?どうしたんだよそんな血相変えて」


 息を切らしながらクローネちゃんを抱えてやってきたのは、チームメイトの明智だった。


「はぁ……はぁ……てっ、敵さんが、大量に、向かってきてますですぅ~!!」


「……!?」


 すると、茂みの奥から明智を追ってきた2体のモンスター型トキシーが姿を現した。


『グォォォォォォォ……!!!!!!!』


 地鳴りのような(うめ)き声に俺は反射的に耳を塞ぐが、黒百合は不敵な笑みを浮かべ、己の拳を突き合わせた。


「オラオラァ!!何体でも相手してやんよ!!くたばれぇぇぇぇえええ!!!!」


「えっ……?結衣……ちゃんっ……?」


 目の前で威勢を張っている人物が、まさかあの白百合結衣だとは思っているはずもなく、明智は目を丸くして唖然としていた。


「明智さんっ!!避けて!!!!」


「……?」


 黒百合は明智の背後で威嚇しているトキシーに向かって拳を構えながら飛びかかった。


「邪魔だぁああああああああああああああああああああああっっ!!!!」 


 このままだと明智は間違いなく巻き添えを食らってしまう。


「明智さんっ!!!!!!!」


「きゃっ!」


 俺は一か八かで明智に向かって横から飛びかかり、黒百合の攻撃を間一髪で躱した。


「痛ってて……明智さん、大丈夫か!?」


「……はいっ、明智は何とか……クローネちゃんも、平気そうです」


「そうか、よかった……」


「それよりも、結衣ちゃんの秘密って……」


 明智はトキシーの頭部を何度も殴打する黒百合を横目に、少し後ろめたそうに俺に耳打ちした。


「ああ……話すと長くなるが、トキシーを前にすると狂戦士(バーサーカー)になっちまうんだ。俺らのことも友達と認識できてないらしくて……」


「そうだったんですね……」


 彼女の脳内ではきっと複雑な感情が渦巻いているだろう。


 暫く黒百合の様子を眺めてから、明智は深呼吸をして俺に視線を向けた。


「知れて良かったですっ。どんな姿でも、結衣ちゃんは明智の大切な友達ですから!何も変わることはありませんっ!」


 彼女が最後に見せたのは、やはり太陽のような笑顔だった。


「そうだな、俺もだ!」


 ひと安心した俺も、明智に笑顔を向けた。


「雑魚がぁ!!雑魚がぁ!!!雑魚がぁ!!!!」


 対する黒百合は、鬼の形相でトキシーの急所を何度も殴打している。もはやどちらがトキシーなのか分からなくなってしまいそうだ。


 すると、明智が小さく声を漏らし、俺の肩を小刻みに叩いた。


「……御角くん!結衣ちゃんの目元……あれって、血ですよね……?」


「……!」


 指摘された彼女の顔を見て、俺は息を呑んだ。精神的なリミッターを強引に外した代償が、毛細血管を焼き切り、赤い雫となって溢れ出している。


 さらに、彼女の心情を表すかのような俄雨が、瞬く間に勢いを増して森林内に降り注ぐ。


 聴力、視力、判断力――あらゆる能力が鈍っていく。試験終了が刻一刻と迫っている中、悠長に作戦を考えている暇などもう無いと、俄雨が警鐘を鳴らしていた。



 ――自分を信じろ、迷ったら進め。



 今だけは親父の言葉に(すが)ってみようと思う。


 俺は先程よりも一層声を張り上げる。


「明智さん、俺が白百合さんに加勢するから、他のチームが近づいてきたら事情を説明して絶対に近づけないでくれっ!!」


「ビシッ!健闘を祈りますっ!」


 手短に作戦を伝え、俺は「ソード!」と唱える。


「しゃあ、トキシー共かかってこいやぁ!!!!」


 俺は剣を正面に構え、黒百合が相手していない方のトキシーに狙いを定める。


「テメェ、またユイちゃんの邪魔する気かぁ??」


 黒百合が再び俺に殺意を向ける。


「違う!俺も白百――ユイちゃんの助けになってやるのさ!」


「助けなんて要らねぇ!!テメェは大人しく指咥えて眺めてな!!」


 黒百合に気圧されそうになるが、歯を食いしばり堪える。


「ほ、ほら!2人で協力すれば戦力も2倍、忌々しいトキシーだって2倍ブッ倒せるだろ!?」


「……」


 黒百合の動きがピタッと止まった。彼女にも彼女なりの思考回路があるのだろう。


 アグレッシブな彼女には、アグレッシブな言葉を。


「……ユイちゃんがトドメを刺す。そこはゼッテーに譲らねぇからな。あとは好きにしやがれ!」


 半分ヤケクソだが、どうやら俺の提案を飲んでくれたようだ。


「サンキュー!ユイちゃん!」


「足引っ張ったらソッコー殺す!!」


「……お、おう!」


 俺は顔を引き攣らせながら黒百合にグッドサインを送った。今のうちに遺書でも書いておくか……



 如何に彼女を制御し、如何に彼女を合格に導くか。


 ルールの垣根を越えた、異例の共闘(タッグマッチ)が幕を開ける――

こんばんは!ProjectAI.【プロジェクトアイ】です。


黒百合との対話を試みた陽彩は僅かな可能性に賭け、異例の共闘(タッグマッチ)に臨んでいきます。


ライセンス試験もいよいよ大詰め……!


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