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File.46「狂戦士・黒百合」

◆御角 陽彩 (みかど ひいろ) 15歳(高1)

 本作の主人公。運動神経抜群だが能天気。瀕死体験をきっかけにクロッカスを志した。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆明智 柚葉 (あけち ゆずは) 15歳(高1)

 フレンドリーなクラスのムードメーカー。可愛いものが大好き。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆白百合 結衣 (しらゆり ゆい) 15歳(高1)

 人見知りな性格で、陽彩とは入試で協力し合った仲。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆黒華 苧環 (くろばな おだまき) 15歳(高1)

 クロッカス入隊試験首席合格の優等生だが、キザで性格に難あり。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆田中 大葉 (たなか たいよう) 15歳(高1)

 クラスの中心人物で、爽やかな好青年。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。


◆田中 蓮華 (たなか れんげ) 15歳(高1)

 気だるげな性格だが、彼氏の大葉にはデレデレ。

 ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。

「えーっと……御角くん?いま何て……」


「聞こえなかったか?合格を、諦めて欲しいんだ」


 俺と明智の空隙に一陣の風が吹き、彼女の色鮮やかなツインテールが靡く。眉間に皺を寄せている彼女は今、酷く困惑しているはずだ。


「……ごめんなさい、聞こえています。その言っている意味が解らないです」


「……まあ、だろうな」


 普段の姿からは想像もできないほど素っ気ない返事に、俺は少しばかり怯んでしまった。いつもの天真爛漫な彼女の面影は、何処かへ消え去ってしまったようだ。


「どうしちゃったんですか急に……さっきまでのやる気は何処に行っちゃったんですか……?」


「すまん、言い方が悪かったな。別に戦意喪失したわけじゃねぇさ。ただ、白百合さんを救うための手段がこれしか思いつかなかったんだ」


「結衣ちゃんを……?」


 白百合の名前を出した途端、明智の表情にわずかな変化が生じた。


「ああ。彼女を救うために、彼女を合格に導くために、俺はこの試験の掟を破るつもりだ」


「掟……もしかして、結衣ちゃんのチームと協力を?でも、双方が協力したら結衣ちゃんのチームも不合格になっちゃいますよね?」


「確かに、お互いが合意のもと協力したらこの作戦は成功しない。そこでだ……」


 俺はメモリングを起動し、明智にルールブックの画面を見せる。


「さっき、ルールブックを見返してみたんだ。そしたら、ここの注釈に……」


「『チーム同士の合意が無かった場合、協力に加担した側のチームが不合格となる』ですか……」


「そうだ、俺はこれを利用するつもりだ」


「……」


 明智は瞳を閉じ、しばしの間葛藤する。それもそう、自己犠牲を払ってまで友人の合格を優先するのだ。普通の人間であれば二つ返事でNOと答えるだろう。


 追試を受ければいいだけ――と言ってしまえばそれまでだが、ここまでに費やしたメンタルや労力を簡単に蔑ろにするのも難しい話だ。


 だが、明智柚葉という少女は、そんな普通の枠に収まるような利己的な人間ではない。彼女も俺と同じく、利他的な行為をすることで己の存在意義を見いだしていたのだ。友人の為ならどんな自己犠牲も厭わない――本当に変わった子だ。


「……わかりました、御角くんを信じます。試験前に約束しちゃいましたからね。『結衣ちゃんを助けるために、御角くんが何をやろうとしても止めないで欲しい。そして、結衣ちゃんがどんな秘密を抱えていたとしても、今まで通り接してあげて欲しい』って。もちろん守りますよ。ただ、ひとつ明智からもお願いがあります」


「……ああ、ありがとう。聞くよ」


 明智は胸に手を当て、制服を握りしめながら俺の目元をまじまじと見つめる。


「結衣ちゃんの隠してる秘密を、今すぐに教えてほしいんです。大事な友達として、聞いておきたいんです。ダメ……ですか?」


「……そう……だな」


 俺は視線を逸らし、唇を軽く噛み締める。


 正直、彼女になら話してもいい。白百合を除けば、クラス内で最も信頼できる人物だ。


 だが、これはあくまで俺の判断。白百合の意思を尊重していない。


 明智には明かさず、俺にだけ明かした秘密。遅かれ早かれ露呈するものを、わざわざ俺だけに話したのだ。恐らく、何かしらの意図があるはずだ。


 思考が纏まらずにいる中、メモリングに一斉メッセージが届いた。


《 “人工森林”に高配点トキシー発生!! 受験者は怪我人を保護しつつ、直ちに”指定された”エリアに向かえ! 》


「くそっ、こんな肝心な時にっ!」


「指定された……あっ、マップに敵さんの居場所が載ってます!」


「分散してるかと思ったら、結構密集してんな……てことは、全チームこの辺りに集まってくるってことだよな」


 しかも、高配点トキシーは倒したチーム二人にポイントが加算されるそうだ。


「結衣ちゃんたちも、きっと向かいますよね……」


「そうだな……時間も限られてるし、後は俺に任せてくれないか?とにかく明智さんはクローネちゃんの死守を頼む。それから……」


 俺は忠告を込めて厳しめの言葉を吐き出した。


「白百合さんには絶対に近づかないでくれ」


「……了解ですっ」


 話を遮断されたうえ、俺のわがままな要求には納得していないだろうが、明智は固唾を呑んで受け入れてくれた。


 あとは、他の誰よりも早く白百合と合流する必要があるな。


「さあ、急ごうぜ」


「ですですぅ~!!」



————————————————————◇◆



 試験開始から65分経過――


 俺たちは高配点トキシーの密集地帯に辿り着いた。


「この辺、だよな」


 俺がマップを確認していると、明智が俺の肩を素早く叩いた。


「んっ、どした」


「御角くんっ、あそこ……」


 明智の指差した方向には、木陰に身を潜める男女の姿があった。肩を密着させ、互いの手を固く握りしめ、遠くの何かを観察している。


「もう先客か……あれは、田中コンビか?」


「ですですっ!試験でも一緒なんて、ホント運命共同体って感じでステキですぅ~!」


「ちょっと、話しかけてみるか」


 俺は物音を立てぬようにして二人の背後に這い寄る。


「よっ、二人とも」


「……わっ、ビックリした!なんだ、御角くんか……」


 ほっと胸を撫で下ろした爽やかな好青年は、クロッカス1年の中心人物・田中 大葉(たなか たいよう)だ。彼とは対照的に、隣の田中 蓮華(たなか れんげ)は俺に強い警戒心を示している。


「あっ、すまねぇ!えっと……もしかしてアイツを狙ってるのか?」


 大葉の視線の先では高配点トキシーが周囲をぐるりと見渡していた。長い胴体、鋭い鉤爪(かぎづめ)に巨大な尻尾。その様相はまさしく怪物(モンスター)だ。


「うん……倒せば一人当たり50ptだけど……」


「蓮華こわ~い、大葉くんどうしよ~」


 蓮華は俺の存在など気にも留めず、猫撫で声で大葉の腕に抱きついている。


「うん、僕もさ。でも、蓮華ちゃんとなら、どんな壁だって乗り越えられる気がするよ」


「大葉くんっ……♡」


 バカップルの距離が一段と近づく。


「さっ、行こう蓮華ちゃん。立って」


「うんっ♡」


 大葉は蓮華の手を取り、蓮華は大葉の頬にキスをする。大葉は俺に会釈をすると、蓮華を連れて敵の元へと歩を進めた。


「俺たちは一体何を見せられているんだ……」


「まあまあ、仲良しさんで微笑ましいじゃないですか~」


「……それもそうか」


 微笑ましいというよりは、羨ましいという感情の方が勝ってしまったが。彼らの背中を眺めていると、つい創立祭でのトラウマが想起されてしまう。いい加減忘れたい。


 そんな田中コンビが戦に出向いたのも束の間、突如として金切り声が森林内に木霊した。


「……!」


 刹那、俺は背筋が凍ると同時に尋常じゃない程の冷や汗をかいていた。


「今の叫び声……敵さんじゃ……ないですよね?」


「……」


 息が詰まる。心臓が握り潰されているかのように胸が苦しい。

 

 ――来てしまったのだ。ついに、この(とき)が。


「……御角くん?」


 明智の呼び声に反応する余裕など無い。


 俺は無意識に金切り声が飛んできた方向へと身体を傾けていた。


「悪い明智さん、クローネちゃんを頼む!!」


「ちょっと、御角く――」


 俺は全力で駆け出した。本来の試験の目的など、今はどうでもいい。


「声の方角からして、恐らくここだな……」


 俺はマップでトキシーの居場所を確認し、金切り声の発生源であろうポイントへと向かった。


「待ってろ、白百合さんっ……!!」



————————————————————◇◆



「はぁ……はぁ……」


 焦燥、はたまた疲労によって俺の呼吸はたちまち荒くなっていた。


 それから森林をさらに奥地へと進んだ先、クローネちゃんを背負いながら腕を組み、ニンマリと不敵な笑みを浮かべている男が佇んでいた。


 その男は俺の存在に気がつくと、いつものように前髪をかきあげる。


「ん?やあやあヒーロークン☆丁度良いところに来てくれたねぇ」


「黒華……」


「君も見ていくがいいさ。もうショーは始まってるヨ?」


 黒華は指をパチンと鳴らすと、その指先に広がる光景を俺に見せつける。


「……なっ!?」


 俺は目を覆いたくなるような光景を前に、開いた口が塞がらなくなっていた。



「オラオラオラオラァアアアッッッ!!!!!!!!!」



 モンスター型トキシーの背中に跨り、メリケンサックのような武器を拳に嵌めた小柄な少女が、トキシーの首元めがけて強烈な打撃を浴びせていた。装甲は所々剥がれ落ち、回路は剥き出しだ。


 トキシーの悲痛な断末魔と少女の甲高い嗤い声が入り混じり、痛烈な不協和音が俺の鼓膜を(えぐ)っている。



「アハハッ!!!アハハハッッ!!!!」



 一切の迷いを感じさせない、狂気に満ちたその戦いぶりは、漆黒のオーラを身に纏った”狂戦士(バーサーカー)”と呼ぶに相応しかった。


「……」


 黒く灼けた花弁を撒き散らす彼女を前に、俺は言葉を失い、ただ立ち竦んでいた。



 ――ライセンス試験終了まで、残り20分。

こんばんは!ProjectAI.【プロジェクトアイ】です。


ついにベールを脱いだ結衣のもう一つの姿……


陽彩はどのようにして狂戦士と化した結衣に手を差し伸べるのでしょうか。


彼女がこうなってしまった経緯は、次話で詳しく!(予定)


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