File.27「再会・命名」
◆御角 陽彩 (みかど ひいろ) 15歳(高1)
本作の主人公。運動神経抜群だが能天気。瀕死体験をきっかけにクロッカスを志した。
ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。
◆白百合 結衣 (しらゆり ゆい) 15歳(高1)
人見知りな性格で、陽彩とは入試で協力し合った仲。
ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。
◆黒華 苧環 (くろばな おだまき) 15歳(高1)
クロッカス入隊試験首席合格の優等生だが、キザで性格に難あり。
ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。
◆明智 柚葉 (あけち ゆずは) 15歳(高1)
フレンドリーなクラスのムードメーカー。可愛いものが大好き。
ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。
◆根茂平 侑 (ねもひら ゆう)16歳(高1)
陽彩とは隣の席で、清楚な見た目ながら芯が強く、プライドが高い。
ヒュドール学園高等部戦闘護衛部隊"クロッカス"に所属している。
◆牡丹田 朱里 (ぼたんだ あかり) 27歳
厳格な性格で、常に冷静沈着。
戦闘護衛部隊"クロッカス"の総指揮官を務めている。
◆アカツキ
陽彩の相棒である初代ルミナスクロー。かつては牡丹田朱里のパートナーだった。
お嬢様口調で、派手な見た目をしている。
放課後、俺は指定されていた場所へと向かった。
「これがヒュドール総合研究所、か……」
ヒュドール学園から徒歩5分の場所に併設している大学と共有の研究所が姿を現した。見るからに10階建て以上はある。その近くには日本が誇る大企業”ヒュドールカンパニー”の本社ビルがそびえ立っていた。
牡丹田曰く、ここの3階にルミナスクローを開発・生産している部署が存在しているらしい。
俺はエレベーターで3階に上がると、指定されていた集合場所の”大会議室”まで辿り着いた。牡丹田は会議室のモニター横で既に腕を組んで待機している。
「よし、全員集まったな……今から隣の研究室で個別にルミナスクローを配布するので、出席番号順に来るように。使用方法の説明は全員への配布が終わり次第、こちらの部屋で行う。では、明智から順に来たまえ」
「ですですぅ~!行ってくるのですぅ〜!!」
牡丹田に呼び出された明智は、上機嫌な様子で俺たちに向けて敬礼をした。
1分ほど経過し、明智が何かを引き連れて戻ってきた。
「みなさんっ!見てくださいよ~この子!!明智のパートナーですぅ~!可愛いのですぅ~!!」
明智の傍を歩いてきたのは体長30~40cm程の2代目ルミナスクローだ。おおよそ2頭身で、ツインテールのように頭部から長く垂れ下がった羽を持つが、腕は生えておらず、短い足でヨチヨチと明智の周囲を歩き回っている。
初代と大きく異なる点は、言葉を発しないところだろう。
パートナーが既に決まっている俺を除き、ルミナスクローを目の当たりにしたクラスメイトの熱気は高まっている。
その後クラスメイトは次々にパートナーを引き連れてくるが、それぞれ見た目や性格が微妙に異なるようだ。チラッと白百合の方を横目で見ると、白百合とクローが互いにモジモジしており、一方の黒華はやらしい手つきでクローの羽や顔を撫で回している。
「はっは!ボクに似て美しいフォルムじゃないか……まあボクには到底及ばないが……ネッ☆」
どうやらパートナーとなるルミナスクローは所有者の見た目や性格をベースに生産されているようだ。
それから30分ほど手持ち無沙汰で椅子に腰掛けていると、遂に俺の番がやってきた。
俺は研究室まで足早に移動し、扉の前で背筋をピンと張る。
「アカツキ……遂に再会できるのか……」
何だか妙に緊張感が走るが――
ウィーン……
「ヒ・イ・ロ~~~♡」
「どわーっ!!」
自動ドアが勝手に開くと、アカツキが俺の顔面目がけてドロップキックをかましてきた。
俺は驚いてその場に尻餅をつく。
「いってて……って、アカツキ!感動の再会だってのに蹴りを入れるな!」
「うふふ、ミーなりの愛情表現ですわ♡」
「相変わらずウゼぇ……」
研究室内を覗くと、巨大な機械や最新のコンピューターが多数備わっており、最先端の研究を行っている施設と呼ぶに相応しい様相を呈していた。
その奥から牡丹田がコツコツとヒールを鳴らしながら近づいてきた。
「……アカツキ、一旦御角から離れろ」
「ハイッ」
どうやら牡丹田の前では随分と従順なようだ。ただ恐怖に戦慄いているだけかもしれないが……
呆れた様子の牡丹田は気を取り直すと、俺に視線を向ける。
「御角、改めてお前の”一時的な”パートナーとなるアカツキだ。前話した通り、今月末のライセンス試験で不合格となればコイツは処分される」
「ガクガクガク……見捨てないでおくんなまし……」
アカツキは俺の脚に身を潜めながら牡丹田を警戒している。
「わかってますよ指揮官、そのようにはさせねぇっすから!」
「ヒイロ♡ちゅき♡」
「おえー……」
コイツは本心で言ってるのか冗談で言ってるのか分からんから質が悪い。
「茶番はそこまでだ、早く会議室に戻れ。既にお前らはパートナー登録されてるから、こちらで行う作業もないしな」
「りょ、了解っす……」
俺たちは半ば追い出されるようにして会議室に戻ってきた。俺はアカツキに小声で語りかける。
「アカツキ、あんま余計なことはするなよ……?」
「何故ですの?」
「何故って……」
ただでさえ見た目が派手なのに、こんな流暢に喋られたら異様に目立つからだろうが……!
そして、アカツキは俺の隣に座っていた女子生徒のクローを一瞥しては、ケッと鼻で笑う。
「それにしても、2代目ってなーんかパッとしないですわね~。はっきり言って……ブサイクですわ」
「こ、こらっ!」
「◎△$♪×¥●&%#?!」
とんでもない爆弾発言をしたアカツキの口元を慌てて両手で塞いだ俺は、隣の女子生徒とクローに何度も頭を下げる。
「あーホントごめんな!!コイツマジで性格終わってて……」
「あははっ、いいよ~別に」
女子生徒は手を横に振っているが、彼女の相棒はご機嫌斜めな様子だ。
「そういえば、まだちゃんと喋ったことなかったよね、陽彩くん」
「あれっ……俺の名前知ってるのか?」
「当ったり前じゃん!クラスでも隣の席だし。それに君、クラスの中で結構話題になってるよ?」
「えっ、何でだよ……」
いきなり下の名前で呼ばれると小っ恥ずかしいが、それはともかく一体何の話題で盛り上がってるのか凄く気になるな……
「その……えっと……ごめんっ、名前何だっけ」
「あははっ、気にしないで~。私は”根茂平 侑”っていうの。何かしらで関わる機会があるかもだけど、その時はよろしくねっ」
「よろしくな、根茂平さん」
俺は流れるように根茂平とハイタッチを交わす。
「ねねっ、折角だし私のことも下の名前で呼んでよ。ほらっ、隣の席のよしみだし」
明智とはまた違うベクトルだが、中々攻めた距離の詰め方だな。清楚な見た目とは裏腹に結構小悪魔的な性格なのかもしれない。男子からも人気がありそうだ。
「わかったぜ……侑……さん」
流石に照れるな、これ。
「ヒイロ、鼻の下伸ばすんじゃありませんの!プンスカ!」
「伸ばしてねぇわ!」
「あははっ!面白いね~その子!陽彩くんのパートナーってお喋りするんだね~」
「ああ、色々事情があって――」
「アカツキと申しますわ!えっへん!ですわっ!」
アカツキは俺の頭に乗っかり派手髪をヒラヒラと靡かせる。
「バカっ!大人しくしてろって!」
俺とアカツキのやり取りを根茂平はクスクスと笑って眺めている。周囲が騒がしいこともあり、思いのほか目立っていないのがせめてもの救いだ。
そんな茶番を続けているうちに、最後の生徒と牡丹田が会議室に戻ってきた。
「――さあ、全員席に着け。今からルミナスクローの初期設定と基本操作について説明する」
まあ俺には微塵も関係ないわけだが、一応聞いておくだけ聞いておこう。
「まず、パートナーの腹部にある円形の液晶画面にメモリングを5秒間翳してくれ」
俺は根茂平の作業工程を遠目で眺める。アカツキも牡丹田の前ではかなり大人しいようだ。
「君たちの個人情報が表示されるはずだ。間違いが無ければ認証をタップし、パートナー成立となる。管理者側で特殊な操作をしない限りは、パートナーが勝手に解消されるようなことは無いので安心したまえ」
「すげぇなぁ、最新の技術ってこんな進んでるのか」
「……無知ヒイロ」
「……るっせ」
ボソッと悪口を言われるのもそれはそれで腹立つな……
「次にパートナーの命名だが、10文字以内かつ公序良俗に反さないものや不適切な表現を含まないもので登録をしてくれたまえ」
あらかじめ決まっているわけではないのか。つまり、”アカツキ”は牡丹田が命名したということになる。なかなか良いセンスだな。
「根茂――侑さんはもう決めてるのか?」
「うーん、こういう時って迷うよね〜。一応候補はあるんだけど……」
もし俺だったら何て名付けるだろうか。
ヒイロスペシャル、ヒイロサンダー、ヒイロトルネード……マズいぞ、どう頑張っても競走馬みたいな名前になるし、俺の絶望的なネーミングセンスが露呈してしまう。名付け親の牡丹田には感謝する必要がありそうだ。
「本日から毎晩、君たちの各部屋に用意してある専用のスタンドで必ず充電を行うように。ルミナスクローに搭載してあるバッテリーの最大持続時間は100時間、用途次第では短くなることも留意しておくことだな」
100時間ということは、約4日といったところか。
隣にいるコイツは果たしてどうなのか、小声で聞いてみることにする。
「……ちなみにお前は何時間なんだ?」
「……ニジュウ」
「……は?」
「……20時間ですわ」
「そんなんでよく指揮官の許可が下りたな……」
「うふふっ、ですわ♡」
戦闘でバッテリーを激しく消耗したら、それこそ最終試験の時のように肝心なタイミングで充電切れを起こすかもしれない。本当に大丈夫なのだろうか。
「それと、明日から早速ルミナスクローを用いた訓練を行うことになる。充電時間を除き、登下校の際や外出の際も基本的に共に行動してもらうことになるぞ。ライセンス取得後はいつ仕事が発生するか分からないからな」
げっ、アカツキを常に連れ歩くのか……俺の精神が持たないかもしれん……
「……なんですの、その苦悶の表情は」
アカツキは俺のやつれた顔つきを見て難癖をつけた。少しは察してほしいものだ。
「ルミナスクローは戦闘で用いる以外にも、簡単な家事や雑務であれば行うことが可能だ。詳しくはメモリング内にインストールされている”ルミナスクロー取扱説明書”を参考にしてくれたまえ」
簡単な家事か……コイツにやらせれば少しは楽できるかもな。
「ミーは召使いではありませんことよ?フンッ!」
……と思ったが、期待するだけ無駄だったようだ。
「それと――」
牡丹田が話題を変えようとしたと同時に、俺の方へ視線を向ける。
「御角陽彩のルミナスクローについてだが、皆とは異なり初代のルミナスクローを用いることになった。かつて私のパートナーだったアカツキだ」
「アカツキと申しますわ!えっへん!ですわっ!」
アカツキが言葉を発した途端に会議室内はざわつき始める。不穏な空気が漂う中、それをぶった切るように牡丹田は話を続ける。
「決して忖度や差別などではない。入学試験やここ一ヶ月で取らせてもらった身体データを元に、学校側が適切に判断した結果だ。ライセンス試験の突破基準も特段変わることはない。むしろ現行の2代目よりも使い勝手が良くないからな」
誤魔化しの効く巧妙な説明だ。合っているといえば合っているし、間違っているといえば間違っている。
「ふ~ん、データねぇ……ま、いいや☆」
黒華は少し訝しんでいる様子だが、特に詰問するわけではなさそうだ。
「今日はこれで以上となる。明日からまたよろしく頼むぞ」
それだけを言い残すと、牡丹田は部屋から去って行った。クラスメイトも続々と相棒を連れて寮へと戻っていく。
「ふぅ……耐えましたわね」
「いや、何をだよ」
好き勝手行動されてこっちは散々だったぞ……
「ヒイロには関係ありませんわっ!」
「あーはいはい」
それはさておき、俺のクロッカス人生とアカツキの命は今月末のライセンス取得試験に懸かっている。俺とアカツキは一蓮托生、まさに車の両輪のようなものだ。
俺は覚悟を決めると同時にアカツキの派手な頭にポンと掌を翳す。
「これから頼むぜっ、相棒!」
「こちらこそ、足を引っ張ったら承知しませんわよ?」
――いよいよ、勝負の1ヶ月が幕を開ける。
こんばんは、ProjectAI.(プロジェクトアイ)です。
アカツキとの再会を果たした陽彩ですが、アカツキの好き勝手な性格に振り回されてしまい、早くも不安が募ります。
次回、怒濤の戦闘訓練が幕を開けます。(2回目)
そして、思いがけない出来事も……?(2回目)
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第2章のボイスドラマは近日公開予定♪詳細はX(旧Twitter)にて!
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