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収穫祭の魔女  作者: れいてんし
Episode 4. Dream Lands
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Chapter 16 「隧道」

 目の前には切り立った岩肌がそびえ立っていた。


 雨が少ないこの地方特有の赤黒い岩が太陽の光を反射して、くっきりと影を作っている。


 住民たちはわずか300メートル先にある隣の集落へ行くために、大きな岩山を半日近くかけて迂回せざるを得なかった。

 この山にトンネルさえあれば……。


 昔から村人は何度も岩山に隧道(ずいどう)を穿つことに挑戦し続けていた。

 だが、分厚くて固い岩盤を小さいタガネだけで掘りぬくには、あまりにも金も道具も人手も足りなかった――


「――という曰くつきの場所に、隣の集落までの隧道を掘ります」


 仲間たち、そして住民は俺から50メートルほど距離を取らせている。

 山肌の反対側2キロ以内には誰もおらず、何の施設もないことは鳥の偵察により確認済だ。


「鳥を3羽解放(リリース)。そして発射!」


 超高熱の熱線が構えた箒の先から放たれた。


 熱線は、今まで多くの村人が振るうタガネを跳ね返してきた硬い岩盤を容易く貫く。

 そのまま隣の集落までの150メートルを超えて、はるか先まで飛んでいった。


 後に残るのは、砂漠とは別の熱気と、様々なものが焼け焦げた臭いのみだ。

 だが、それは拡散してすぐに消えるだろう。


 照射が完全に終了した後に仲間たち、そして住民が駆け寄ってきた。


「綺麗に撃ち抜いたので、すぐに崩れてくることはないと思います」


 今のところ落石などはない。

 熱線で焼いた断面は完全に溶けているからだ。


「それでも噴き出してくる地下水を排出するための仕組みと、トンネルの補強工事は必要です。内容を説明しますのでこちらへ」


 なぜ俺たちがこんなトンネル工事を行っているのかを説明する必要があるだろう。


 サルナスの町へ向かう道中にあった村での話だ。

 隧道がなくて隣の村までの移動が不便という話を聞いたので、一晩の宿と食事を提供してもらう約束で隧道を掘ることになった。


 この隧道は村の住民だけではなく、俺たちがサルナスの町へ行くためのショートカットルートとしても使える。

 俺たちにも村の住民たちにもメリットがある作業だ。

 やらない理由がない。


 本の受け売りでしかない知識ではあるが、住民たちに簡単にトンネル工事について説明する。

 地下水が湧き出てくること、補強工事をしないと落盤の危険性があることなどについてだ。


 ただし、俺は土木工事に関しては完全に素人だ。


 本当に聞きかじりの浅い話しかできない。

 あとは専門家を呼んでなんとかしてもらう、ということでまとまった。


 山に穴さえ開けばどうとでもなるという住民たちの声がありがたい。


 専門家とやらがどの程度の知識を持っているのかは不明だ。

 だが、一番時間と手間がかかる山に穴を開けるという工程が済んでいるのだから、あとは何とかなるだろう。知らんけど。


「ラビさんお疲れ様です」

「まあ全然疲れてないけどな」


 モリ君が手を掲げていたのでハイタッチで応える。


「終わったなら飯にしよう。とっておきの酒を出してくれるって話だし、早く行こうぜ!」


 何もしていないカーターはそう言うと真っ先に村の方へと駆け出していこうとしていた。

 なので、スーツの裾を掴んでそれを阻止する。


「おい土木課職員! 飯に行く前に専門家の意見を出してくれ!」

「ジャンルが違うからよく知らん。それに、測定器もないし、コンクリで固めたわけでもない。強度計算なんてどのみち無理だぞ」

「それはそうだけど、素人よりは知識はあるだろ」

「それじゃあ、簡単にだけど」


 カーターはそう言うと、岩山に近づいて、近くに転がっていた石を拾い上げた。

 掴んで岩壁に投げつけた後に、再度拾い上げる。


「ここらの岩は見た通り、投げつけても壊れないくらい丈夫なので崩落を起こしにくい」

「岩山を掘ることは問題ないんだな」

「だけど、補強なしだと150メートルの長さはギリギリだ。木でも石でもいいから、トンネルを支える構造を作る。できればコンクリで補強はしたい」

「他には?」

「真ん中くらいにトンネルとは別に、横向きの細い穴を別に一本掘った方がいい。地下水の水抜き穴だ」

「横向きの穴は深夜のうちにやっておくけど、補強については、住民の前で説明を頼む」

「そういうのはガラじゃないんだけどな」


 カーターは面倒なのか頭の後ろをわざとらしくかきはじめた。

 だけど、こいつは一応振った仕事はやってくれるし、住民のためにならばその手間は惜しまない。

 そういう善性は知っているし、頼りにしている。


「ワシも何もしとらんのだが、酒をよばれて良いのかの」


 タルタロスが申し訳なさそうに俺に声をかけてきた。


「いえ、気にしないでください。俺たちは未成年なので酒を飲めませんが、村の方の好意を断るのも失礼です。成人のカーターとタルタロスさんで飲んでください」

「すまんの、何から何まで」


 カーターもタルタロスのように何か一言だけでも言ってくれたら、こちらも気にしないというのに。


「ラビさんも成人ですよね」

「23歳ですけど……と言いたいところだけど、身体は中学生だから酒は飲めないよ」


 俺は元々それほど酒を飲む方ではなかったので、酒を飲めないことについて特に問題はない。


 ただ、調理に使用できる料理用の酒が手に入るとなると話は別だ。

 調味料代わりに何種類かは確保しておきたい。


 それはそれとしてだ。


「それよりも、このお子様たちは何事なの?」


 レルムとドロシーの2人が、何故か俺の両手を握ったまま解放してくれない。

 それどころか何かを期待する目で俺を見つめてくる。


「師匠すごいです。僕にも必殺技を教えてください」

「うちも必殺技使いたい。カッコいい」

「本当にカッコいい」


 カッコいいという言葉の意味が分からなかったので一瞬考えた。

 俺が隧道を穿つために使用した「魔女の呪い」の熱線放射のことだと気付いた。


 全身に光る紋様を浮かべながら、強力な熱線放射。

 使っている方は別に楽ではないのだが、あれを見て自分たちも同じような必殺技を使いたいと思ったのだろう。


 しかし、魔女の呪いは他人に教えられるものではない。

 超特殊な例すぎて、教えられることなど何もない。


 どうしたものかと、モリ君とエリちゃんに「助けて」と懇願の視線を送ってみるが、笑って誤魔化されてしまった。


 ここは前向きに考えよう。

 逃げずに向き合えば、子供たちを成長させるチャンスでもある。


 スキルを使うための最低限の訓練だけは、ヘルハウンド戦の前に急場しのぎで少しやったものの、まだまだ問題が山積みだ。


 基礎を固めないまま、いきなり応用なのもどうかとは思うが、モチベーションが大事なのは確かだ。

 食事の後に少し教えるとしよう。


   ◆ ◆ ◆


 食事を終えて少し休憩を取った後に子供たちにスキルの使用方法についての指導を行うことにした。


 村から少し離れた、なるべく周りに民家などがない空き地に移動して、スキルの指導開始だ。


「まずはスキルの重ね合わせにチャレンジしてみよう。2つのスキルを全く同じタイミングで同じ場所から発動させるんだ。2つのスキルを混ぜることを意識して」

「混ぜる?」

「そう、ドロシーちゃんは第2スキルの水鉄砲と第3スキルのハイドロカノン。どちらも水を出すスキルなので、いつもより水の量が増えた砲弾を発射する」

「なるほど」


 ドロシーの返事はいつも淡々としているので、分かっているのか否か分かりにくい。

 一応分かったということで話を進めよう。

 

「レルム君は第2スキルのエレキボールと、第3スキルのエレクトロビームの組み合わせだ。自由に曲げられるビームというイメージで2つのスキルを同時に使う」

「真っすぐにしか飛ばないビームをコントロールするということですね。分かりました、師匠」


 まあ、一発目から成功はしないだろう。

 失敗した理由は基本の能力が使いこなせていないからだと説明して、しばらくは基礎訓練に励んでもらうことにしよう。


「では始め!」


 2人が同時にスキルを発動させた。


 ドロシーはいつもよりも水量が多めのジェット水流を放出。

 レルムは自由に曲げられるビームを放って、目標の岩を粉砕した。


「えっと……」

「師匠、今のはどうですか?」

「うちの方がうまかったよね」


 どうすればいいのだろう。

 これからどう鍛えようか考えていたというのに、いきなり本題が終わってしまった。


「今のはあくまでも必殺技の基本だ。ここからさらに威力を高めるために、通常のスキルの方も鍛えていこう」

「通常のスキルを鍛えるというのは?」

「今はまだ、立ち止まってしっかり体を固定しないと、ちゃんと狙ったところに当てられないだろう」


 そう言うと、レルムは手のひらの上に、放電を繰り返す電気の塊を生み出した。

 スキル2のエレキボールだ。


 それを野球のボールのように掴んで、勢いよく投げつけた。

 目標とは全く違う場所へ飛んでいく……ように見せかけて、空中で勢いよく曲がって、目標にした岩に命中する。


「師匠の鳥を見ていて分かりました。狙った場所に当てられないなら、曲げて当てにいけばいいんです」

「それならうちも!」


 ドロシーが水流……スキル2の水鉄砲を使った。

 これもホースから放水するようにまっすぐ水を飛ばす技でしかないが、やはりレルムのスキルと同じように空中で不自然に曲がった。


 やはり天才か。


「うちの方が曲がった!」

「僕の方が曲がったよ!」


 そしてまたも口げんかが始まる。

 仲が良いのか悪いのか判断に困るところだ。


 一発でこちらが出した要求に応えるのは良いが、勘弁してほしい。


 それでも、なんとかなだめすかして、スキルの基礎練習を2時間ほど行った。

 とりあえず、走りながら目標に攻撃を当てるための練習だ。


 まだまだ課題は残るものの、本人たちが納得してくれたようなので良しとしたい。


   ◆ ◆ ◆


 時間も遅くなってきたこともあり、翌日に疲れが残らないように稽古は終了。

 村人たちに用意していただいたベッドへ子供たちを連れて行くと、稽古で体力を使い果たしたのか、電池が切れたようにすぐ眠りへとついた。


「子供のお守りご苦労様」


 子供たちへ毛布を掛けて部屋から出てきたところ、カーターに声を掛けられた。


「モーリスもエリスも……あのタロスってオッサンも子供に甘すぎるところがあるから、指導にはお前が向いていると思うよ」

「どっちも違うベクトルでクソガキ様すぎて辛いんだけど」

「小学生はそんなものだよ。ところで、お前って性癖の破壊者なの?」


 唐突にカーターが訳のわからないことを言い出した。


「年上の姉ちゃんがいきなり身体を密着させてきた上に両手を取ってあの指導とか、あのレルムってガキに影響を与えすぎだろう」

「そんなまさか。まだ小さな子供だぞ」

「あのくらいの年齢の子供は、近所のお姉さんに弱いんだよ。たとえそれがお前みたいなのでも」

「エリちゃんならともかく、俺に影響されるようなマニアックな子供はいないだろう」

「そういう無自覚さがマニアック路線を拡大しているんだよ! だから、もう年齢関係なく異性に身体を密着させたりするのは禁止な」


 だが、カーターの言うことにも一理ある。

 これからは適度な距離感を心がけよう。


「もしかしたら忘れてるかもしれないが、第16チームが何か仕掛けられているかもって話はちゃんと覚えているよな」


 カーターが突然そんな話をしてきた。


「もちろん覚えている」

「本当にか? 子供相手に接する態度は、完全に仲間として受け入れているだろ」

「そう……かもしれない」


 否定はできない。

 たとえ運営の罠で第16チームが操られていたとしても、完全に敵対するのはもう無理だ。


「たとえばの話をするぞ。仮に遺跡の中で死んだ人間を運営が復活させて操る手段を持っていたとする」

「幽鬼(エイドロン)みたいなもんか」


 具体的な例を最近見ただけに、そんなことはありえないとは否定できない。


「第16チームの3人はもう死人だと?」


 想定はしていた。


 遺跡内で3人は低予算モンスターに敗北したはずだ。

 なのに、体どころか衣服までほぼ無傷で俺たちの前に現れた。

 どう見ても健康体に見えるが、実態はゾンビ状態だったとしても、納得するしかない。


「死人ってのは仮の話で、今は問題にしていない。考えないといけないのは『運営』がスイッチ1つで自由に操れる駒である可能性だ」

「3人が襲いかかってきたら、どうするのかって話か」

「もしも、襲いかかってきた相手が初対面の知らない子供ならば、さすがに割り切ることはできるだろう」

「割り切れるかどうかはともかくダメージは少ないな」


 カーターの言いたいことは分かる。

 たとえ相手が子供でも、俺たちに対して殺意を向けてきたならば、割り切って撃つことはできるだろう。


 モリ君とエリちゃんはそれができない。

 だからこそ、俺が心を殺してでもやらなければならない。


 だけど、俺たちは子供たちと……第16チームの3人と仲良くなりすぎてしまった。


 今の状況で、この3人に裏切られると、受ける精神的なダメージはとんでもなく大きくなる。


 俺たちを倒すための罠であり、撃たないといけないという理屈は分かる。

 だけど、実際にそんな場面が来たら……きっと撃てない。できるわけがない。


「まあ、そんなことが起こったら、その時はオレに任せろ。嫌われ者のオレが3人を撃ち殺す……お前が報復でオレを殺して、それで終わりだ」

「冗談でもそんなことを言うなよ」


 俺はカーターの背中を平手で力いっぱいに叩いた。

 そのまま3回ほど叩く。


「知恵を絞って全員で助かる方法を考えよう。だから、お前も嫌われるようなことをするな」

「いいのか? オレはお前たちのいうところの超越者Bの手駒だぞ」

「全員で助かる方法を考えると言っただろう。なんでお前だけ除外されると思ってるんだ」


 カーターは特に何を言うこともなく、無言で寝室に向かっていった。


 備えだけはしておかないといけない。

 今の俺にできるのは、3人が暴れたとしても、なるべく傷を与えずに速やかに制圧するための技術だ。


 スキルの練習が必要なのは子供たちではなく、俺の方だ。


   ◆ ◆ ◆


 翌朝。俺たちはサルナスの町へと旅立つ前に、村長へ挨拶をした。

 昨日に俺が掘ったトンネルを通れば、半日分……10キロ以上の移動距離を稼げる。


「宿と食事、助かりました」

「いえいえ、こちらこそ感謝をしてもしきれず……ところでこれからどちらの方へ行かれるのですか? 王都の方でしょうか?」


 王都とやらが何か分からない。

 本当にこの世界にそんなものが存在するのか分からないが、今の目標だけを伝えておく。


「私たちは、当面はサルナスの町……この街道の終点を目指しています」


 サルナスの町という名前を聞いた途端に村長の表情が突然変わった。

 明らかに何か良くない噂を聞いているが、それを伝えるべきか否かを悩んでいるようだ。


「サルナスの町に何かあるのですか?」

「おそらく貴方がたならば大丈夫だと思いますが、最近、サルナスの町の周辺にはトカゲ人間が徘徊しているという話です」

「トカゲ人間?」

「はい。詳しいことは分かりかねますが、旅の商人たちが何人も襲われたとかいう話を聞いております」


 ここに来てまたトラブル発生の予感である。

 テロスの町のヘルハウンドと同じパターンだとすると、これもなんとか対処する必要があるだろう。


 テロスの町は小さな町だったのと、たまたま召喚者がピンポイント攻撃しかしなかったので助かっていただけだ。

 本気でそこの住人を潰しにかかれば、もっと大きな被害が出る。


 サルナスの町までは、まだ5日ほどかかる見込みだ。

 なんとか大きな被害が出る前に、間に合ってくれればいいのだが。


   ◆ ◆ ◆


 湖畔の町、サルナスの城壁は磨き上げられた大理石で出来ており、壁全体が美しく輝いている。


 まるで海のような巨大な湖のたもとにたたずむこの町は、湖から得られる水産資源のおかげで、大変な活気を見せていた。


 そんなサルナスの町で、近々祭りが行われるという。


 イブ千年祭。

 怪物が巣食っていた「イブ」という町を滅ぼして、人類が勝利して、このサルナスの町を作ってから千年が経ったことを祝う祭りらしい。


 住民たちの多くは、その祭りの準備のために、みな浮かれていた。


 そして、祭りを目当てにやってくる旅行客も多い。

 湖から流れ出すアイ川沿いにある町々からは、まだ祭りは始まっていないというのに、既に多くの観光客が町を訪れていた。


 私――アデレイドとその仲間たち、ゲームマスターが言うところの第1チームがこの町に着いたのはついさきほどだ。

 凶悪犯というラヴィたち4人はまだこの町には姿を見せていないようだ。


 ゲームマスターの話だと、おそらくこの町に、観光客に混じってやってくるということだ。


「調べてみたら、実際にはイブが滅んでからは百年くらいしか経ってないらしいけどね」


 仲間のエヴァニアはよほど暇だったのか、そんな町の歴史まで調べてきていたようだ。


「百年を千年とか、随分と数字を盛ったね、それ」

「百年経ったら世代なんて全部入れ替わるんだし、そんなもんじゃない」

「それで祭りはいつからだって?」

「来週。5日後だってさ」


 5日後と聞いて改めて窓から外を見る。


 まだまだ先だというのに、すでに観光客が住民より多いくらい集まってきている。

 これからさらに増えていくだろう。


「ものすごい勢いで宿の空きが埋まってるんだけど、こんな状況で犯罪者チームは来るのかな?」


 エヴァニアの疑問ももっともだ。

 祭りの日に合わせて町に来たとしても、観光客が多すぎれば、町に入ることを諦めて、そのまま別の場所に行ってしまうかもしれない。


「最悪、この町を出て、どこか外で迎え撃つって感じになるんじゃないかな」

「それはちょっと面倒くさくない?」

「私の攻撃はもろに周りの人を巻き込むからね。できれば広いところで戦いたいってのは本音だよ」


 私に与えられた武器は、ガトリングガンという、回転式の機関砲だ。

 長い砲身からは、1秒の間に何発もエネルギー弾が発射される。


 エネルギー弾はスキルの力で無限に装填されるので、弾切れはない。


 本気で撃てば、小さなビルくらいは軽く吹き飛ばせる威力があるものの、威力が強すぎて使いどころが難しい。

 なので、武器は使わずに、殴る蹴るで勝負を決めなければいけない。


 便利なんだか不便なんだか分からない能力だ。


「じゃあ、その間にトカゲ退治ってのをしない?」

「トカゲ?」

「湖のどこかに、トカゲ人間の巣があって、そこから町にちょくちょくちょっかいを掛けに来るみたいだよ」

「そういうことなら、混ぜてもらってもいいか?」


 今まで無言で本を読んでいたジュウベイが顔を上げた。

 トカゲ退治とやらに興味が湧いたようだった。


「どうも、僕たちって実戦経験が足りてないだろ。軽く練習しておくのはいいと思うんだ」

「やめておこう。無益な殺生なんてするもんじゃないよ」


 さすがに遊びで殺生を行うような発言は耳に余ったので、軽く釘を刺しておく。

 私たちの力は、あくまでも正義のためにあるべきだ。


「えーっ? 町の人が困っているってのに?」

「困っているレベルでとどまっているからだよ。別に人が死んだり怪我をしてるわけじゃないんだよね。軽く脅して追い返すだけでいいんじゃないかな」


 そう言うとエヴァニアとジュウベイは黙った。

 血の気が多いのは良くない。

 無駄な殺し合いなんてない方がいいに決まっている。


「じゃあ5日間何をして待つの?」

「今のうちに戦略を練っておこう。向こうがどう攻撃を仕掛けてくるかも含めて。もしかしたら話し合いで解決できるかもしれない」


 こう答えたのも、私がどうもゲームマスターとやらを信用しきれてないからだ。

 もしかしたら、この手配書にあるラヴィという人も、実は濡れ衣を着せられているだけで、悪い人物ではないのかもしれない。


 そう考えてしまうのは、私の心の問題だろうか?

 本当は戦いたくなどないのだ。


 なんにせよ、祭りの日が来れば、それはすぐに分かる。

 祭りの日まであと5日。


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