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収穫祭の魔女  作者: れいてんし
Episode 2. Ythogtha - The Old One
30/251

Chapter 10 「Trick or Treat」

 鳥の残数は4羽。


 追加で5羽を召喚して残りは9羽。これで盾は3回使える。


 もし、巨人が追加で光条(ビーム)を放ってきても、盾が3枚有ればなんとかなるだろう。


 どちらかと言えば問題は箒のエンジンの方だ。


 先程からエンジンから白煙が上がり続けて止まる気配がない。

 駆動音にもガラガラとギアに異物が入り込んだ上で空回っているような音が混じってきている。


 無茶な機動によって負荷がかかりすぎたせいで、もはやエンジンの耐久度は限界なのだろう。


 ただ、今すぐに壊れてもらっては困る。


 もし箒がなくなってしまえば、巨人を発破で吹き飛ばす際に俺が脱出するための手段がなくなってしまう。

 少女のひ弱な体力で爆発が吹き荒れる中を自らの足で走って逃げられるかと問われれば断じてNoだ。

 

 なんとか爆発から待避するまでは保ってくれよと神様仏様。


 ……あとは魔女の呪いを使ったときに出て来る虹色球体様。


 あの虹色球体は、おそらく魔女に関係する何かだと推測は出来るし、外観もキラキラ光って縁起が良さそうなので、とりあえずそちらにも祈っておこう。

 名前も知らない虹色神様おねがいします……


 余計なことを考えながら飛行していると、突如として背後から凄まじい爆音が轟いてきた。

 

 もう発破が始まったのか?

 気が抜けている間に作戦エリアを通過していたのか?


 ふと視線だけを後方に送ると、巨人の巨体が炎に包まれていた。

 

 幸いにも、一発目の爆弾は地面から爆風を真上に吹き上げるよう調整されていたようで、俺の方にはほとんど熱や爆風は流れてきていない。


 ただ、巨人を複数の爆弾による連続爆破で吹き飛ばす作戦ということを考えると、真上に吹き上げるような爆発ばかりが続く訳がない。

 近いうちに飛行中の俺も巻き込むような大きな爆発が来るはずだ。


 背後を振り返ることなく、最大限の加速を行って、巨人との距離を開ける。


 それだけでは心許ないので、鳥を3羽使用して背中に(シールド)を形成。

 発破によって発生する爆風に備える。


 盾の範囲は意外に狭く、俺と箒の全体をカバーすることが出来ないのは覚悟の上だ。

 最悪の場合は俺の身だけでも護れればそれで良い。


 1度目の爆発から10秒ほど開けて2度目の発破が始まった。


 今度は俺の方にも爆発音と共に熱を伴った衝撃波……爆風が猛烈に吹き付けてくる。

 猛烈な熱風に煽られて箒のバランスを維持できなくなり、激しく機体が回転する。


 このままだと墜落する――


 なんとか姿勢制御しようと頑張ってみるが、うまくいかない。


 事態はそれだけでは済まなかった。


 何やら背中の方から爆風以外の熱気を感じるので振り向くと、箒の尾部に取り付けられているエンジンから炎が吹き出している。


 最後の無理な加速がまずかったのか?

 それともエンジンに爆発の熱風がもろに直撃したのがまずかったのか?


 何にせよ、飛行中にこのエンジンからの引火を消すことは出来ない。


「えっと、キルスイッチ……キルスイッチはどれだ?」


 この状況で燃料タンク内の燃料に引火すれば大爆発する可能性もある。

 技師に教えていただいたキルスイッチを押すと、やかましく爆音を立て、カラカラと何かが空回りする音を立てていたエンジンは完全に沈黙した。


 プロペラはまだ惰性で回転が続いているが、動力部が停止したのだから、こちらも間もなく停止するだろう。


 燃料コックもオフにして、エンジン内部への燃料供給もカットする。


 それだけやっても、既にエンジン内部に入っている燃料が燃え続けているのはどうしようもない。

 航空服の耐火能力のおかげですぐに火傷を負うことはないようだが、このままの状態が続くのは危険だ。


 箒の制御が効くうちに可能な限り、速度と高度を落として地面すれすれの位置に移動する。

 軟着陸する余裕はないとシートベルトを外し、意を決して飛行を続ける箒から飛び降りた。


「あうっ」


 勢いを殺しきれず、ゴロゴロと落石だらけの岩場をしばらく転がったが、丈夫な航空服のお陰で衝撃は吸収されて大きな痛みはない。


 エンジンと俺という動力源がなくなり、ただの金属の塊と化した箒は惰性でそのまま真っ直ぐ飛んでいき、俺から十数メートル離れた場所に落下した。


 フレーム部分は落下の衝撃で真っ二つに折れ曲がり、更に破損した燃料タンクから漏れ出したバイオエタノール燃料に引火したのか、炎が高く上がっている。


 あれではもう二度と箒として空に浮かべることは出来ないだろう。

 また箒を壊してしまったか……


 そう言えば巨人はどうなった? 爆破で倒せたのだろうか?


 気になって振り返ると、巨人の下半身は2度の爆発によって大半が失われていた。


 完全に燃えて炭化した下半身が崩れ落ち、だるま落としのように半焼けの上半身だけが轟音と振動を立てて落下する。

 そこへ更なる発破。


 残った胸から上も激しい炎に包まれ、轟々と音を立てて燃えていた。


 頭部の触腕も末端部分から燃えて炭化しており、残った数本が抵抗するように慌ただしい動きを見せていが、端から順に焼け焦げ、炭化して崩れ落ちる。


「いいぞ、そのまま燃え尽きろ!」


 更に追加で爆発が起こり、胸部と腕が粉微塵に吹き飛ばされた。

 爆風によって触腕の付いた頭部は胴体から千切れて上空高く吹き飛ばされていく。


 更に5回、6回……爆発は何度も続いた。


 巨人の巨体は焼き尽くされて炭化し、黒い炭と化してボロボロと崩れ落ちていった。


 さすがにあの状態で生きていることはないだろう。

 これならば巨人もひとたまりもない……。


 ――いや、今のはものすごくフラグっぽいセリフだった。

 これは絶対に良くないことが起こるやつだ。

 

 冗談で済めば良かったのだが、勝利の女神様とやらは、俺に対して相当に悪辣らしい。

 虹色球体様なる得体の知れない神様に祈ったことで勝利の女神に嫌われてしまったのだろうか?

 

 4度目の爆発で発生した爆風で吹き飛ばされて空の彼方に消えたはずの巨人の頭部は、よりにもよって俺から10mほどの位置に落下した。


 ここは既に爆弾の爆発による効果範囲外。追撃はもう期待できない。


 そして、巨人の頭部は焼け焦げているが、かなり原型をとどめている。

 まさか――!?


 胴体から引きちぎれたにも関わらず、巨人の頭部は頭髪のように生やしていた頭頂部の触腕を足代わりにして立ち上がった。


 元は首が有ったであろう位置からも触腕を再生によって生やしており、全身が触腕の球体と化していた。


 手も足も胴体もない。


 円形の頭部だけで自立している「それ」は、まるで巨大なイソギンチャクかタコのような独立した生物に見えた。


 ――こいつはまだ健在……生きている。


 奴の単眼と俺の目が合う。


 箒は――なし。エンジンから発火した炎は燃料に引火して激しく燃えており、近付くことすらままならない。


 残存している鳥は6羽。

 魔女の呪いは使用できるが、5羽の攻撃範囲ではあいつを消しきれる保証はない。


 先程、爆風から身を護るために形成した盾はまだ生きてるが、消えるのは時間の問題。


 おそらく発破をかけた工作部隊や、追撃するための部隊は近くに潜んではいるのだろうが、目に見える範囲内には確認できない。

 もし、俺への応援に駆け付けるとしても最低10分はかかるだろう。


「ここからは対応を一歩でも間違えたら死ぬ」


 (ラヴィ)の体力は皆無。

 エリちゃんのように素手で殴り合うなど出来ない。


 魔女の呪いの一発にかけるか? それとも盾で身を守りながら誰か助けが来るまで待つか?

 近くに待機している陸軍の兵士が来るまで、時間を稼げばなんとかなるか?


 生き残るためのプランを必死で考えながら、巨人の頭部との距離を取る。


 このまま援軍が来るまで何とか時間を稼げないものか……


 だが、時間稼ぎが出来るというのは甘い考えであることを思い知らされた。


 巨人の目に赤い光が点るや否や、刹那のタイミングで赤い光条(ビーム)が発射され、(シールド)をあっさりと消し去った。


 ダメだ。

 このペースで盾を破られ続けると、援軍到着の前に俺の命が先に尽きる。

 生き残るためには、俺の方から攻撃を仕掛けてこいつにトドメを刺すしかない。


 魔女の呪い一撃で仕留めきれるか?

 もし一撃で倒しきれなければ、次弾チャージの3分という時間をどう持たせるかが問題だ。


 その時、俺の脳裏にある一つの作戦が思い浮かんだ。


 出来ればやりたくはない。


 成功する見込みはあるが、あくまで仮定での話だ。

 可能性は半分有れば良いところ。

 成功する保証などないし、もし成功したとしても、倒しきれなければ、反撃には耐えられないだろう。



 ――友人の泣いている顔が脳内によぎった。

 ――何もしなければ死を待つだけだ。ここは無理だろうと無茶な賭けだろうとやるしかない。


「おおおー」


 サイズの合わないブーツを脱ぎ捨てて、素足で奴に向かって駆け出す。

 携えるのは6羽の鳥のみ。


 雄叫びの声が可愛いのと、ラヴィの体力だとペタペタとかなり遅い走りしか出来ないので、何一つ迫力など皆無。

 だが、それでも俺の全てを賭けた最後の攻撃だ。


 俺のその決死の覚悟を、ただの破れかぶれの玉砕特攻と見たのか?

 それともひ弱な少女が全力を出したとしても何の脅威にもならないと判断したのか?


 触腕と目のみで口などないのに、巨人の頭部がニヤリと笑ったように見えた。


 奴の触腕の一本が伸びて、俺の身体を絡め取った。


 避ける体力などない。

 そもそも体力は全快だとしても、元々避けられるような脚力などない。

 多少のダメージは折り込み済みだ。


「人間は簡単に死なない」

 あの技術者の人の言葉が身に染みる。


 触腕に激しく身体を締め付けられて激しい痛みが伝わってくる。

 ベキッと人体から鳴ってはいけないような音が鳴った。


「男の触手プレイなんて誰得なんだよ。だが、俺を侮ったな……一撃で即死させなかったことを地獄で後悔しろ!」


 飛びそうな意識の中で6羽の鳥を解放(リリース)する。


 それと同時に、俺の身体を拘束していた触腕が霧状になって消滅した。


 急に締め付けられていた胸部が解放されたことで、ゴホゴホと咳き込む。内臓に相当のダメージがある……だが、いつまでもむせてはいられない。

 咳は唾と一緒に無理矢理飲み込んだ。


 奴……巨人の頭部は、突如触腕が消滅したという事態を未だに理解できていないようだ。


 表情などないのに、唖然と立ち尽くしているというのが分かった。

 それで良い。出来るだけ長く狼狽えていろ!


「ハッピーハロウィン、巨人さん」


 俺は痛みを堪えるために無理矢理口角を釣り上げて笑みの表情を作った。


「Trick or Treat」


 俺の全く力が入っていないパンチによって、巨人の顔面の一部が抉られたように消滅した。


 巨人は反撃とばかりに別の触腕を伸ばしてきたが、そちらも右手で殴り飛ばすと、俺が触れた部分から触腕は黒い霧状になって消滅していく。


 ここで初めて(イソグサ)から余裕が消えた。


 俺の右手の拳の先には黒い球体が現れていた。

 球体には虹色のヒビが入り、そこから獣の唸り声のようなものが響いている。


 魔女の呪いの前兆の「収穫」は、周辺の生命体を黒い霧に変えて球体にエネルギーを集める仕組みだ。

 今回は消費したのは6羽。

 5羽で使用した時よりも若干収穫の範囲は広いだろう。


 少なくとも、せいぜい全長10mほどの頭だけで生きている瀕死の巨人が、射程の外にはみ出しているということはないはずだ。


 黒い球体を相手に直接叩きつけることで、零距離であらゆる生命体を霧状に変えてエネルギー源として取り込む「収穫」を行う。


 奴が慢心せずに即死攻撃を仕掛ける、もしくは連続攻撃でこちらを近づけさせないという行動を取れば俺の負けだっただろう。

 この賭けは見事に勝利出来たようだ。


 巨人の頭部は、俺を即死させるのではなく、少しずつ死なない程度になぶり殺しをすることを選んだ。


 それが……敗因だ。


 ランクアップによる回復が期待出来なければ、こんなこと二度とやらんぞ。


 ……いや、回復が期待出来てもやらんぞ、こんなステゴロ呪術(ゴリラ)バトル。


 魔女は呪いを振り撒くとかいう話だったが、別にそれは少年漫画式の呪術をやれということではないはずだ。


「お菓子をくれないと……いたずらするぞ」


 俺のパンチで巨人は霧になって細かく粉砕されていく。


 全身に浮かんだ紋様は虹色の光を発しており、光を発しながら拳が当たると黒い霧が散ってその箇所が抉り取られる。

 ビジュアル的には何かの必殺技に見えるかもしれない。


 俺も魔女(ラヴィ)も格闘経験などない。


 腰も入っていなければ、力もろくに入っていない。何の技術もない。

 ただ手をやたら振り回すだけ、無駄だらけの駄々っ子パンチだ。


 だが、その幼稚すぎる攻撃を防ぐことは出来ず、確実に巨人の身体は削られていく。


 巨人を削り飛ばす度に、度会知事に見せられた凄惨な被害状況の写真のことが脳裏に浮かんだ。


 被害者達と俺は無関係だ。

 あまりに遠い世界……文字通り日本人である俺とこの酷い世界の住民では文字通り世界が違うのだ。

 なので、面識のない被害者達に対してそこまで情が沸いているわけではない。


 それに、俺は別に正義の味方になりたいわけじゃない。

 俺は魔女だ。

 物語の中では悪人のポジションだ。

 希望で戦う魔法少女とは違うのだ。


 世界を恨み、呪いを撒き散らす。

 そういう存在でしかない。


 だから、これは正義のための戦いではない。


 被害者達の巨人へ対する理不尽な恨み辛みを集めて、それを呪いという形で返してやっているだけのことだ。

 人を呪うやつは呪い返されるだけのシンプルな理屈。

 

 さあやろうぜ、呪術バトル!

 あいつに人間の愛を教えてやろうぜ!

 《違う、これ呪術じゃない》


 久々に魔女(ラヴィ)からの呼びかけが来たので答えておこう。

 令和最新版の呪術ってのは相手へ呪力を叩き込む殴り合い(ゴリラバトル)のことだぞ!


 巨人はなんとか身体を再生をして立て直そうとしているようだが、再生を開始したばかりの箇所は明らかに弱い。

「収穫」から逃れることは出来ず、その場所から真っ先に霧と化して消えていく。


 これについても賭けに勝った。

 

 奴が破れかぶれの反撃に出られたら俺は負ける。

 だが、相手が防御と回復に回ればこちらは追撃を受けることなく、残った体力全てを攻撃へ注ぎ込める。


 そして攻撃を続けていくうちに、ついに奴が……恐怖で怯んだ。


 攻撃を諦め、残った触手を最大のパーツである、体の中心に有る眼球を防御するために動かした。


「待っていたよ、そうやって逃げ腰になってくれることを!」


 この瞬間、狩るものと狩られるものの立場は逆転した。


「お前が撒き散らした……痛みを、苦痛を、恐怖を!」

 

 腰を入れたアッパーパンチが触手を分解しながら貫き、奴の体の中心に有った眼球へと深く突き刺さった。


「廻り廻ってきた全ての呪いを受け取れ!」


 これが最後だ!

 残った全ての力を込めて拳……球体をねじ込むように打ち込むと、内側から「収穫」を食らった巨人の眼球は激しく弾け……全てが黒い霧と化し、消滅した。


 遺骸はない。


 全て霧と化して黒い球体に吸収されてしまっている。

 こうなってしまっては再生能力も何も関係ない。


 その代わりなのか、岩の上に一枚の金色のメダルが降ってきた。

 左手で拾い上げるとメダルにはSSRの刻印がある。

 これが巨人を討伐した報酬ということか。


「これだけ苦労させて金のメダルが一枚かよ」


 金よりも上のレアリティのメダルが出現することを期待していたが、実際に出現したのは金。


 これだけ命をかけて必死に頑張って、

 多くの一般人や軍人に被害を出して、

 ――それでようやく倒したモンスターが排出したのはたかだか金のメダルが一枚。


 モンスターを倒すより人間を倒す方がはるかに効率が良い、人間同士の殺し合いを推奨させるシステムに対して、怒りを通してもはや呆れの感情しか沸いてこない。


 戦いが終わったことに安心したら、急に全身から痛みがこみ上げてきた。

 今まではアドレナリンか何かが放出されていたのだろう。


 一歩間違えたら命を落としてしまうという危機感が無理矢理身体を突き動かしていたが、それがなくなったのもある。


 箒から落下した時、触手に締め上げられた時、思えば最後の収穫の時も反撃を何回か食らったような気もする。


 そもそも先日の10羽消費の魔女の呪いの疲労から回復し切れていない。

 

 普段使わない筋肉を使ったからか、右の二の腕は攣ったようになり、ジンジンと痛みが伝わってきている。


 丈夫が売りのはずの航空服にもあちこちに大穴が空き、そこからは皮がめくれて出血しているのが見える。

 何とか呼吸を整えようとするが、ぜいぜいという荒い息が止まらない。


 そして、右の拳の前に浮かんでいる黒い球体は、巨人の頭部という生命力の塊を吸い尽くしたことで今すぐにでも破裂せんばかりに膨らんでいた。


「そういやこれの扱いをどうするか決めてなかった……」


 収穫で生命力を吸い尽くした状態の球体は解除で消滅させることは出来そうにないので、戦いが終わったと示す狼煙代わりに真上に向かって魔女の呪いを発射する。


 閃光は10秒ほど眩く輝いて――消えた。


 やるべきことは全てやった。

 ここまでやれば誰に文句を言われる筋合いはない。


 後は仲間が助けに来てくれるのを待つだけだ。


   ◆ ◆ ◆


――おかしい。


 巨人を倒して体感では既に十分は経過しているはずだが、誰も助けに来る気配がない。


 作戦の上では、もし巨人を倒せなかった場合は、トドメを刺すためにすぐ近くには兵士が待機しているはずだ。

 なので、巨人が倒れたことを確認できた時点で、俺の救出にやってきてもおかしくはないのだが、来る気配がないどころか近くに全く人の気配を一切感じない。


衛生兵(メディーック)!」


 声の限り叫んでみるが、何の応答も帰ってこない。


「誰も回収に来ないんだけど、なんで?」


 その疑問の答えも返ってくることはなかった。


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