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収穫祭の魔女  作者: れいてんし
番外編 2 横浜地下迷宮
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第56話 「東議員宅の調査」

 警察の家宅捜索が終わり、俺もそろそろ引き上げるかと腰を上げたその時、スマホから着信音が聞こえてきた。

 どうやら須磨さんからの着信のようだ。


 今朝借りたドローンの件で何かトラブルでもあったか?

 そんな予感を抱きつつ通話ボタンを押して電話に出る。


『上戸さんか? 手が空いてるなら、今すぐ議員宅に来てくれ』


 須磨さんは開口一番、核心から入ってきた。


「え? どういうことです。まず状況を教えてください」

『所長の指示で議員宅を張ってたんだが……どうやら中で何かあったようだ。つい先程、警察官が乗った原付バイクが一台、玄関前に停まって1人中に入っていった』


 所長の指示?


 何度か対応してくれた八頭(やず)さんは、あくまで管理職であって所長ではない。


 俺は一度も会ったことはないが、所長というのは探偵事務所の登記上でのみ存在を確認している蘆名天彦(あしなあまひこ)さんという元警視庁の部長さんのはずだ。


 俺の中では探偵事務所としての実質のリーダーは八頭さんであり、蘆名さんは経歴を生かしたハンコ係という認識だった。


 その蘆名さんが直々に須磨さんに議員宅の監視を命じていた?

 しかも教団事務所への家宅捜索が入るタイミングで?


 明らかに俺の見えない場所で何かが起こっている。


 所長は俺の知らない情報を握っており、それを基に行動している可能性がある。


 ただ、これは考えても結論が出る話ではない。

 須磨さんから詳しい話を聞こう。


「何故私に連絡してきたんですか? 和泉さんや麻沼さんもいるでしょう」

『和泉は警察の家宅捜索のサポートに入っていて手が塞がっている。麻沼も別件で動いていて、協力を頼めそうなのは上戸さんしかいない』

 

 須磨さんの発言からは若干のきな臭さを感じる。


 だが、須磨さんには今朝のドローンなど世話になった礼があるし、議員側の動向が気にならないといえば嘘である。


 教団事務所逃走した能力者一名が議員宅で話が違うと暴れた可能性だってある。


 理由は色々とあるが、須磨さんの誘いを断る理由は特にない。


「了解です。待ち合わせは以前の公園で良いですよね。1時間以内には向かいます」

『ああ、そこで待っている』


 須磨さんの電話を切って、滞在中のホテルへと歩いていく。

 まずは装備品とバイクの回収が必要だ。


 ただ、現在の古い団地からホテルまでは徒歩だと20分ほどかかる。


 急ぎというならばタクシーを呼んでも良いが、途中あちこちに電話をかける用事がある。

 ホテルまでは歩いて戻ることにしよう。


 まずは探偵事務所にいるはずの八頭さんに電話をかける。


 須磨さんの話がどこまで本当なのか、念のため情報の出どころを押さえておきたい。


 コールが数回鳴ったあと、やや落ち着いた声が返ってきた。

 

『もしもし、八頭です。突然どのようなご要件ですか?』

 

 奇妙な違和感があった。


 俺が教団事務所で警察の家宅捜索の手続きを手伝っていたという話も、須磨さんが議員宅を張っていて救援要請を出してきたという話は当然八頭さんに通っているはずだ。

 

 だから当然、その内容の確認のために電話を掛けてきたという対応を取るはずだが、八頭さんからの反応は「突然」「どのようなご要件」である。


 果たしてどこまで話を伝えて良いものか……。


 俺が一瞬言葉に詰まると、八頭さんの方から話してきた。


『貴女が教団事務所への家宅捜索のサポートに来ていただいているという話は確認しています。不明点はそこにいる和泉に聞けば分かるはずですが』


 どうやら、俺が一瞬対応に困って言葉をつまらせたことから、今の状況を察して、持っている情報を公開してくれたようだ。


 八頭さんは教団事務所への家宅捜索しか仕事を認識していない。


 つまり須磨さんによる議員事務所の監視はチェック外だ。


『それ以外にあるのですね……須磨ですか?』


 それも当たり。

 和泉さんとは別件だとすると麻沼さんか須磨さんの二択なので、自然な帰結ではあるが。

 

「所長の指示で動いていると連絡を受けました」


 具体的に須磨さんが何をやっているという話はせずに反応をうかがってみることにする。


 返答代わりに電話の向こうからキーボードの打鍵音が響いてきた。


『この通話を他に誰か聞いていますか? 近くに和泉は?』


 わざわざそう聞いてくる時点で嫌な予感しかしない。


「和泉さんは警察に同行して調査を行うということで別れたばかりです。私の周辺には大勢の通行人はいますが、ノイズだらけと雑踏の中では特定個人の通話を拾うことは困難だと予想できます」


 人通りのない古団地から少し歩いたんぼで、現在位置はJRの駅近くだ。


 会社員の帰宅ラッシュと夕飯の買い物時間と重なっていることから、周囲には驚くほど多くの人が足早に歩いている。


 スマホはハンズフリーではなく、片手で持ってマイク部分と口元を掌で覆うように持っている。


 周囲の雑音が入りにくくするための配慮だが、同時に俺の声が周りに漏れることを防ぐのにも役立っている。


 俺のすぐ近くを尾行している工作員が居れば盗聴される危険はあるが、教団や議員側にはもう人員はほとんど残っていないはずだ。


 それに狙うならば俺ではなく、警察に同行した和泉さんの方を狙うだろう。


『須磨が所持しているスマホのGPSはオフになっています。故意に操作しないとそうはなりません』


 八頭さんからも現在確認出来る情報だけが伝えられた。


 おそらく八頭さんにも所長と須磨さんの動きは伝えられていないのだろう。

 所長と須磨さんは八頭さんや和泉さんとは別ラインで動いているということだ。


 そこにどんな思惑や事情が動いているのかは俺には分からない。


 最悪の場合、待ち合わせ場所に行ったら待っているのは須磨さんでなく別の誰かであり、全てが罠という可能性も有り得る。


 それが分かっていても、流石に議員宅で何かが起こっているということであれば放置は出来ない。

 まずは状況確認だ。


「ありがとうございます。私の方で須磨さんと合流してみます」

『よろしくお願いします』


 続いて電話するのは小森くんだ。


 教団事務所から能力者が一人逃走していることと、もしかしたら銀のメダルが狙われるかもしれないという話はしておかないといけない。


 電話をかけるとすぐに繋がった。


『ラビさん、どうも。置いていってもらった学年末テストの勉強用テキスト、役にたってますよ』

「それは良かった。今はみんなで勉強中?」

『勉強中でした。もうすぐ閉門時間なので今日は片付けて帰るところですけど』


 ギリギリセーフというとことか。

 これで全員帰宅していたら少し面倒が増えるところだった。


「ところで銀のメダルは無事かな? 誰かに盗られたりしてない?」

『銀のメダルですか? それなら柿原が持ってるはず……ちょっと待ってください』


 電話の向こうで呼びかける声が聞こえた後、すぐに返事があった。


『部室の引き出しに置きっぱなしみたいですね。どうせメダルを持っていることは誰も知らないだろうから、逆に学校、部室、引き出しと3重で鍵を掛けられるここが持ち歩くより安全だろうって』


 確かに納得の理由である。


 小森くん達が銀のメダルを持っていることを知っているのは新聞部の面々と探偵だけだ。

 教団の連中には一応は知られてはいない……はずだ。


 以前に鳥飼教諭を騙せたように、メダルの見た目は一般人が見る限りはゲームセンターの景品とそれほど大差はない。

 逆に堂々と置いておいてもそれほど目立たないかもしれない。


「どうやら教団の能力者が1人逃げ出したみたいで行方不明という状態だ。何の後ろ盾もない状態で何かを仕掛けてくる可能性は低いかもしれないが、念のため警告はしておきたいと思った」

『矢上君と友瀬さんの顔が知られている問題ですよね』

「それと――」


 探偵事務所の方も少しきな臭いと言おうとして止めた。

 まだ確証が取れていない情報を伝えたところで混乱させるだけだ。


「――事件解決まではまだもう少しかかるので、各自注意するように伝えて欲しい。もし危険を感じたならばすぐ仲間の誰かに居場所と状況を電話かメールで伝えるように」

『分かりました。伝えておきます』


 そうやっている間に滞在中のホテルが目の前に見えてきた。

 必要事項は伝えたので時間的にもちょうど良いだろう。


「じゃあ繰り返すけど、敵の襲撃にはしばらく警戒するように。安全が第一だぞ」

『ラビさんもまた何かやろうとしているみたいですけど、無理はしないでくださいね』

「ああ。また何かあったら連絡するよ」


 通話を切ってホテルのエレベーターに乗り込む。


 バイクで走ればおそらく20分。

 須磨さんから電話をいただいてから40分といったところだ。


 ジャケット代わりに白い外套を羽織り、膨れていて風を受けるとバタつく部分を紐で軽く縛る。


 ついでにバイク用の安全装備にもなるので肘膝臑のプロテクターも付けておく。

 

 武器は少し考えてバルザイの偃月刀だけを持っていくことにした。

 箒は最悪、現地調達で良いだろう。


「40分か……それだけあれば結構状況は変わるな。果たして間に合うかどうか」


   ◆ ◆ ◆


 ホテルを出発してから30分ほどで高台の公園に到着した。

 流石に帰宅ラッシュに巻き込まれたので流石に深夜と同じ時間で到着というわけにはいかなかった。


 公園の駐車場には以前と同じく大きめのワゴン車が停まっており、やはり少し上に見張り台には須磨さんの姿がある。


「すみません、遅くなりました」

「いや、十分早い。もっと遅くなると思っていた」


 公園には犬の散歩に来ているご近所のお年寄りなどが数人歩いている。

 流石にこの状況ではあまり目立つ行為や長時間の滞在は避けた方が良さそうだ。


「今の状況は?」

「20分ほど前に救急車が来た」


 須磨さんが指差す先には議員宅から少し離れた場所には救急車が停まっていた。

 回転灯は点灯しているものの、サイレンは鳴らしていない。

 

「誰か運ばれてきましたか?」

「いやまだだ。警察官も救急隊員も誰も出てこない。中で治療をしているか、それとも完全に手遅れか」


 外套の内側に鳥の使い魔を召喚して、そのうち1羽をなるべく目立たないような軌跡で放つ。

 

 屋内への侵入は以前と同じルートを使えると良かったのだが、通気口には金網のようなものが張り付けられている。


 侵入対策としては地味だが効果的だ。

 何度も同じ手は通じないということか。


 ならば方法を変えよう。


 玄関側に回り込むと、救急隊員が玄関ドアを全開にしてストレッチャーのようなものを家の中へ運び入れようとしていた。


 下手に換気口などから忍び込むより、ドアから堂々と侵入する方が間違いない上に手っ取り早そうだ。


 人の出入りのドサクサに紛れて屋内に潜入。


 天井付近を飛行させて救急隊員が向かう先――リビングへと移動させる。

 

 リビングの中央には厚手のマットが敷かれ、その上に中年の男が横たわっていた。

 これは議員の東啓太郎(あずまけいたろう)か?


 顔は土気色にくすんでいる。


 外傷こそ見当たらないが、口元から白い泡を細かく吹き、時折、痙攣が身体を小刻みに震わせてる。


 救急隊員達はこの場で打つ手はないと判断したらしい。


 ストレッチャーが室内に運び込まれ、東議員の体は慎重に持ち上げられた。

 

 軋む金属音と共に、ストレッチャーはゆっくりと玄関へ向かって進み、冷たい外気が差し込む中、彼らは家の外へ出ていく。


 警官も無線で何やら通話しながら同様に外へ出る。

 

 最後におそるおそる追いかけるように中年男性がいた……議員秘書の大城戸だ。


 彼は、東議員が救急車に乗せられるのを確認すると、玄関ドアを音を立てないように閉め、錠をかける。


 そして何事もなかったかのように、しかし緊張を隠しきれぬ足取りで救急車に乗り込んだ。

 付き添いなのだろう。


 救急車はそのまま甲高いサイレンの音を鳴らして走り始めた。

 赤い回転灯が薄暗い住宅街を照らし上げる。


 サイレンの甲高い音が徐々に遠ざかり、やがて住宅街の静寂が戻ってきた。


 ここまでならば単に議員が体調を崩して倒れて救急車で運ばれたというだけだ。


 須磨さんがわざわざ俺を呼んだのは、この先に何か理由があるはずだ。


「家の中を捜索します」

「ああ、頼む」


 鳥の使い魔はまだリビングの天井隅に待機させている。

 そのまま命令を出してまずは2階部屋の窓にかかっていた施錠を外させた。


 窓を少し開いてそこから他の鳥達を屋内へ送り込む。


「まず最初に警察を呼んだということは何かしらの事件があったということですよね」

「その認識だ。東議員と秘書は出ていったが、この屋敷の持ち主である東議員の父親、東啓一郎(あずまけいいちろう)氏の姿がないのも気になる」

「ではまず老人の方を探しますか」


 屋敷のほうぼうに鳥を散らして探索を行う。

 だが、老人の姿はどこにも見当たらない。


「いませんね。別の場所に移動したのでしょうか?」

「いや……屋敷の中に地下への入口があるはずだ。そこを調べてくれないか? おそらく出入り口1階部分の何処かに有る」

「地下? 須磨さん、あなたは何を所長から聞いたんですか?」

 

 唐突に地下と言われて面食らう。


「情報源のことはともかくとして調べて欲しい。そこに『何か』があるはずだ」

「……まあ他に手がかりらしいものもないので調べますけど」


 地下……と言っても周囲は議員宅の周囲は普通の住宅地で築年数もそこまで古くない。

 水道管や下水管などの存在を考えるとダンジョンのような広大な空間が広がっているということはないだろう。


 まずはキッチンに向かい、地下収納庫がないかをチェックする。

 地下収納庫はないが、地下にワインセラーがあるようた。

 面積は極小だが、これでだいたいの見当はついた。


 建築業社が地下室を作る際にワインセラーと別の地下室を離れた場所に作るとは思えない。


 ワインセラーと件の地下室は薄い壁……コンクリどころか下手をすると合板か何かで間仕切っているだけで、電気や空調は共有している可能性がある。


「換気口が開口してるな」


 ワインセラーの壁の上部には金網で蓋をされた換気口が有った。

 天井からぶら下がった照明にも小さなファンが取り付けられており、それでワインセラー内の温度と湿度を管理しているようだ。

 これは隣に別の部屋がないと成り立たない設備だ。


「位置関係からするとワインセラーの隣の空間の上にある部屋は和室か」 

 

 襖を開けてキッチンの隣にある和室に移動する。


 何代も続く議員の邸宅に相応しい雄大な和室だった。


 法事の際には十数人が並んで座ってもゆとり有るであろう広い空間。

 西側は障子とガラス戸で仕切られており、その先は中庭が広がっているようだ。


 空から見た時には中庭には錦鯉が泳ぐ池が備えられていたのを思い出す。


 流石に池の下に地下室を作らないだろう。


 海外ならともかく日本だと湿度が溜まりすぎてとんでもないカビ祭りになるはずだ。  


 畳は定期的に入れ替えをしているのか真新しい緑色。


 床の間にはお高そうな枯山水の掛け軸と、手入れの行き届いた生け花が据えられている。


 広間の一角には、仏壇を備えた大きな仏間。


 鴨居には歴代頭首達の遺影が掛かっている。


 一見すると和室として特におかしな点はないように見えるが、庶民の一般家庭ならともかく豪邸の和室に有るのがおかしいものが見える。


 半畳の幅しかない襖で仕切られた小さい押し入れだ。


「この豪邸の和室にこのサイズの収納があるのはおかしいだろ。仏壇は別に置いてあるし、座布団や布団を入れるには狭すぎる」


 ワインセラーとの位置関係から考えても間違いないだろう。


 鳥達をコントロールして襖を開けると、開いた先は暗がり。

 そこには古びた木の階段が下へと続いていた。


「地下への出入り口を見付けました。今から地下に潜ります」


 須磨さんからの返事はない。

 

 追加の使い魔を召喚。

 懐中電灯を持たせて送り込む。


 地下室はワインセラーと同じく2mほど下ったところにあった小さい空間だ。


 階段を降りたところに頑丈そうな金属の扉が有ったがどういう理由が有ったのか全開していた。


 開けた人間かが大雑把ということではないだろう。

 この扉を閉じて施錠する余裕もなかった可能性が高い。


 それこそ急に教団に寝耳に水の家宅捜索が入って、もしかしてこちらにも? と疑心暗鬼に陥った可能性などだ。


 まあそこらの事情は今は何でもいい。

 手間が省けて幸いとばかりに奥へと進む。


 地下室は6畳間くらいの狭い空間だった。


 位置関係からするとやはりワインセラーと繋がっているのだろう。天井近くの壁に換気口とファンが見える。


 壁は粗く塗られた漆喰で、部屋の中央には低い壇があり、まるで祭壇のように蝋燭立てや香炉が並んでいた。


 そして、一番奥。


 まるで平安貴族が使うような御帳台(みちょうだい)が置かれていた。

 

 漆と朱で黒赤に塗り分けられ、縁には金の縁取りが為された台座の四方には柱が立てられ、そこからは赤、青、黄、白、緑……五色の布……(とばり)が垂れ下がっており、周囲には香炉や供物台、燭台などで飾り付けられている。


 それはまるでエキゾチックな中央アジアの仏教寺院の本尊をそのままコンパクトにして閉じ込めたようだった。


 ただ、その御帳台の中には誰もいない……何もない。


 台座の中央が重量で若干凹み、黒ずんでいるあたりからして、そこに『何か』が置かれていたことは明白だ。


 その『何か』はおそらくその開け放たれた扉から何かが運び出された可能性は高い。


 東議員はその『何か』の扱いを巡って何者かと争った結果としてああなったのかもしれない。


「上戸さん、地下では何が?」 

「祭壇のようなものがあり、そこの中心に何かが安置されていたようですが、既に持ち出されており、何も残っていません。手がかりがないため詳細不明です」


 嘘偽りなく見たままを伝える。

 実際何もないのだから隠しても仕方がない。


 ただ、消えた元議員、消えた地下の安置物、消えた教団の能力者。


 まだ情報が少なく勘の域を出ないが、全てが一本の線で繋がっている気がする。


「そうか……ありがとう。助かった」 

「私からも質問良いでしょうか? 今回の調査確認したかったこととは、もしかして地下に有ったものの確認でしょうか?」 

「すまない。それを言うことは出来ない」


 なる程、そういう対応を取るのか。


 所長との板挟みという須磨さんの立場も分かる。


 だが、だからと言って「はい、そうですか」と黙って引き下がるつもりはない。


 多少無理矢理気味ではあるが、裏に引きこもったままの所長さんには一度表に出てきてこちらにも情報を提供して貰う。


「では所長にお伝えください。タダ働きはまっぴら御免なので、今回の作業の対価を取り立てに行きますねと」 

「なにっ」

「当然の話じゃないですか。今回の件も含めて一度お話をさせてください。探偵事務所の所長さんと直々に。せっかくだから事件解決に向けて仲良くやりましょうよ」 


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