可愛い妹と過保護な姉 5
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。そんなわけないでしょ?」
レジーナお嬢様はとても混乱しているみたいだけれど、わたしからしたら混乱される意味がわからなかった。
「いえ、そんなわけありますよ。だって、わたしの目的は元に戻る方法を見つけることなんですから」
「元に戻る方法って、そんな、だって、アリシアはそもそもあなたが小さくなっていることを知る術はないはず……。その事実を知りそうになったら、エミリアが邪魔をするようにちゃんと指示してるのに。この世界には初めから手のひらサイズの小さな子たちもいるって言うふうにアリシアには言い聞かせるようにしているから、小さなあなたを見てもそれほど違和感は抱かないはずなのに! なんでアリシアに真実を伝えられてるのよ!」
まさかアリシアお嬢様とこっそりしゃべる方法を編み出したとも言えず困っていると、レジーナお嬢様は舌打ちをした。嫌な予感がする。
「わかったわ! あなた嘘をついているわね! きっと本当は当主の座を狙って共謀しているのに、元に戻る方法を探すって嘘をついているのね!」
レジーナお嬢様がわたしの体をギュッと握った。首から下をレジーナお嬢様の手が包み込んでしまって、わたしは身動きが取れなくなった。
「良い? 本当のことを言いなさい」
すぐ目の前で、レジーナお嬢様がわたしのことを見つめていた。巨大な瞳はわたしの表情のすべてを見透かそうとしているようにも見えた。
「う、嘘なんてついていませんよ!」
「もう一度聞くわね? あなたはアリシアと共謀して、アリシアを時期当主にしようとしていたのよね?」
「ち、違います。本当に違いますし、そもそも、アリシアお嬢様って後継争いに興味あるんですか?」
「あるわけないでしょ。だから、あなたが誑かしたってずっと言ってるんじゃないのよ」
わたしを握る手にさらに力が入って、内臓が潰れてしまいそうな恐怖に駆られた。怖くてなって、大きな声で叫んだ。
「なら、アリシアお嬢様に確認してくださいよ! わたしが誑かしたかどうか! わたしはただ元に戻りたくてアリシアお嬢様に協力してもらっただけですよ!」
「……本当に?」
「本当ですよ!」
一瞬視線を逸らすと、レジーナお嬢様は空気が抜けたみたいに静かになった。
「わかったわ。とりあえず、今は信じてあげる」
わたしはソッと机の上に置かれた。
「でも、もし嘘だったら、本気で握り潰しちゃうからね。あなたのことなんて、非力なわたしでも簡単に潰せちゃうんだから」
キッと怖い顔で睨まれて、わたしは竦んでしまった。もちろん、嘘なんてついていないから、怖がる必要もないのだけれど。足に力が入らなくて座ったままのわたしに、レジーナお嬢様が尋ねてくる。
「でも、わざわざアリシアがわたしの部屋にやってくるなんて、あなたは一体アリシアとどんな関係なのよ?」
「主従関係ですけど……」
「本当にそれだけ?」
わたしは頷いた。それ以外に何があると言うのだろうか。
「あの子がわたしの言いつけを破ろうとして、嘘までつくって、あなたはどれだけ愛されてるのよ?」
「言いつけってなんですか?」
わたしが尋ねると、レジーナお嬢様が静かに目を瞑った。
「そうね、あなたには言っておくわ。その代わり、わたしの言いつけを守らせるために、協力しなさい」
レジーナお嬢様がわたしのすぐ目の前に巨大な人差し指を突き出してきた。わたしはほんのり体を後ろに傾けながら何度も大きく頷く。怖くて頷いたけれど、協力内容が変なものだったらどうしようかという不安な気持ちを持ちながら。




