巨大な侵入者 5
「ねえ、リオナ大丈夫!?」
「「リオナちゃん、大丈夫!?」」
わたしもキャンディもメロディも慌てて駆け寄った。
「痛てて……。ダメだな、あたしらとあいつじゃ力の差がありすぎる。あーもうっ、元の大きさだったら片手でも勝てちまいそうな華奢な手首のやつなのに、ムカつくなぁ!」
リオナが苛立っていた。言われてみればスベスベの手入れされた手の根元の手首はかなりほっそりとしていた。
「さ、他の子も邪魔するんだったらリオナみたいな目に遭わせてあげる。それが嫌ならカロリーナをこっちに差し出しなさい」
どうしてもレジーナお嬢様はわたしを連れていきたいらしい。すぐ横にはぐったりしているリオナがいる。わたしたちの中で、きっと一番強いリオナがまったく敵わない相手なのだ。素直に従った方が、これ以上被害を増やすよりもずっとマシだと思う。
わたしがレジーナお嬢様の手に向かって歩いていくと、リオナがわたしの手首を持った。さっきまでレジーナお嬢様の手にすらまったく相手にされていなかったとは思えないくらいの強い力。わたしの倍くらい握力があるかもしれない。
「レジーナのとこ行くつもりじゃねえだろうな?」
「これ以上わたしのわがままのせいでみんなのこと傷つけられないよ」
しっかりと答えたつもりだったけれど、無意識のうちに声も膝も震えていた。
先日夢でベイリーに潰されてからは、大きな人が怖かった。アリシアお嬢様ですら、うまく受け入れられるかわからないのに、意地悪なレジーナお嬢様なんて怖いに決まっている。それでも、これ以上みんなが酷い目に遭うのは嫌だった。だから向かおうとしたのにリオナは手を離してくれない。
「離してよ」
「ダメに決まってんだろ。あたしがせっかくお前の為に体張ったのに、当の本人は逃げかよ!」
「逃げって……」
呆れるわたしに助け舟を出してくれたのはベイリーだった。
「カロリーナちゃんの方が賢いわね。このまま抵抗したってレジーナお嬢様がどんどんこのお屋敷を壊していくだけだもの。無意味にリオナちゃんの怪我が増えていくだけだわ」
「無意味じゃねえよ! あたしの力で一矢報いてやるんだからよ!」
「負けず嫌いなのは悪いことではないけど、相手は選ばないとダメよ。自分の8000倍の体重の人間にどうやって勝つのよ?」
「8000倍……」
単純に20倍の3乗をした数だけれど、たしかに計算はそれで合っている。本来か細いレジーナお嬢様もわたしたちにとってはかなり強いのだ。
「とりあえず、追い出すしかねえだろ」
痛たた、と言いながら立ち上がって、再びレジーナお嬢様の手に近づいた。
「おら、出てけよ!」
足で人差し指を蹴り上げた。動かないから、もう二度、三度、と何度もリオナが指先を蹴っていた。
「また無意味な攻撃をしてるの? もう飽きちゃったわ」
軽く手で払うと、指先が天井に当たった。それによって、リオナは簡単に飛ばされた。
「もう茶番を続けるのもめんどくさいから連れてくわよ」
ついにレジーナお嬢様は手探りで色々な場所を探し出した。机がひっくり返ったり、電気に指が当たってガラスが割れたり、一瞬にして屋敷の内部がボロボロになっていった。




