巨大な侵入者 3
「な、何だよ、これ! 誰だよ、お前!」
リオナがわたしたち全員のことを守るみたいにダイニングの入り口に飛び出した。わたしたちの中では一番背の高いリオナでも、廊下を埋め尽くすような巨大な手の前では、とても小さく見えてしまっている。ダイニングは扉はなく、出入り口から真っ直ぐそのまま触れられる場所にあるから、一番無防備な場所だった。
「キャン、怖いよぉ……」
「メロ、助けてぇ……」
キャンディとメロディがお互いに抱きしめ合って震えていた。
わたしは2人にソッと机の下に隠れるように促した。まあ、わたしたちの使っているドールハウスサイズの机なんて、少し触れただけで簡単にひっくり返されてしまうから、完全に気休めなのだけれど。
「おい、まず名乗れよ! お前は誰なんだよ!」
声を荒げるリオナの傍にソフィアがいつの間にか立っていた。そして、リオナにはっきりと注意する。
「リオナさん、レジーナお嬢様に向かってその口の聞き方は失礼ですよ」
「レジーナの手なのか? 声も聞いてねえのによくわかったな」とソフィアに感心しつつも、リオナは続ける。
「レジーナだろうが誰だろうが知らねえよ。キャンディとメロディのこと怖がらせてる時点で容赦しねえよ」
「だから、口の聞き方には気をつけてくださいって!」
ソフィアがもう一度注意するのと同時に、扉の向こうから(と言うか、屋根の上の方からと言ったほうが位置的には正しいかもしれないけれど)声が聞こえてきた。
「『容赦しねえ』って、チビメイドの癖して随分と威勢の良いこと言ってくれるわね。どう容赦しないのか教えてもらおうかしら」
レジーナお嬢様の声がしたのと同時に、親指の上に乗せた人差し指を弾いて、いわゆるデコピンをした。手の近くにいたリオナとソフィアが慌てて避けたから誰にも当たらなかったけれど、きっと当たっていたら身体が宙に大きく飛ばされて、天井に頭をぶつけていただろう。
大きな風が起きたから、触れてもいないのにお皿がカタカタと揺れていた。机の下からはキャンディとメロディの泣き声も聞こえている。
「ああ、クソっ」
リオナが苛立ちながら思いっきりレジーナお嬢様の手に回し蹴りを食らわせる。喧嘩慣れしているリオナの、男子と比較してもかなり強い蹴りが手に当たっていた。
「だから、リオナさん!!」
直後にソフィアが慌てて止めたけれど、痛がっているのはリオナの方だった。リオナが足を撫でながらレジーナお嬢様の手を睨みつける。
「くっそ、やっぱかなり頑丈だな……」
「何かしたの? わたし痛くもなんともなかったんだけど」
外から高笑いが聞こえてきていた。
「どのみちあなたじゃ勝てないんですから、変な真似はやめてください。ただ失礼を重ねていっているだけですよ!」
「じゃあ、ソフィアはキャンディとメロディが怖がっているのに黙ってやられてろっと言うのかよ!」
リオナが強い声で言っていると、レジーナお嬢様から返事が来る。
「キャンディちゃんとメロディちゃんってあのちびっ子だっけ? さすがにその2人に手を出すほどわたしは意地悪じゃないわよ」
「手出さなくても怖がってんだよ!」
「そう、じゃあさっさと要求伝えてさっさと帰るね。要求を呑んでくれたらさっさと帰るわ」
「なんだよ、要求って! 早く言えよ」
強い剣幕で怒っているリオナの横でソフィアが「だから、言葉遣いを改めてくださいって……」と呆れたように注意していた。
「わたしの要求はカロリーナって子……、だっけ? 新人チビメイドちゃん。その子を借りたいんだけど」
「わたし……?」
困惑しながら無意識のうちに自分のことを人差し指で差していた。みんなの困惑した視線がわたしの方に向いていた。




