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手乗りメイドはお嬢様に愛されたい!  作者: 穂鈴 えい


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新しい生活 5

「キャンディちゃんとメロディちゃんはいるかしら?」

「「いるよ!」」と声を揃えて2人で返事をして、ドアの方を向く。


ドアを開けて入ってきたのは真っ黒な髪色の女性だった。糸目で優しくこちらを見て微笑む姿は気品があった。これまで無邪気な子どもと柄の悪い少女と一緒にいたから、目の前にいる女性を見ていると、一気にメイドとして働くことになった実感が湧いてきて、緊張してしまう。


「ベイリーだ!」

「ベイリー、こんにちは!」

キャンディとメロディはキャッキャしながら女性のことをベイリーと呼んでいた。

「うふふ、こんにちは」とベイリーは優雅に微笑んでいた。


「キャンディちゃん、メロディちゃん、アリシアお嬢様からお呼び出しよ」

ベイリーは穏やかに微笑んだまま、キャンディとメロディのことを見つめていた。


「お呼び出し!」

「やった! やった!」

キャンディとメロディは2人とも嬉しそうにしていたけれど、リオナは怪訝そうな目つきをしていた。


「用はなんだよ?」

尋ねられたベイリーは微笑んだまま答える。

「そんなに怖い顔しなくも良いわよ。ただのアリシアお嬢様の遊び相手。退屈みたいよ」

ベイリーの答えを聞いて、リオナがホッとする。


「なら良いんだけど……。あと、一応確認するが今はエミリアはいねえんだろうな?」

「いないわ。けど、いたら何か不都合だったかしら」

「不都合に決まってんだろ!」

「不都合だとしても、お嬢様からの命令だから、行ってもらわないと困るのだけどね。まあ、今はいないから大丈夫よ」

うふふ、とベイリーは手のひらを自分の頬に当てて優雅に微笑み続けていた。


「アリシアおじょーさまに会うの、楽しみ!」

「アリシアおじょーさまのとこ、行ってくる!」

キャンディとメロディは2人で手を繋いでいた。


「アリシアだけなら大丈夫だと思うけど、一応あたしもついてくか。別に2人だけしか来ちゃダメとは言われていないんだろ?」

「呼ばれていないリオナさんが一緒に行くのは、厳密にはルール違反だけど、2人の保護者みたいなものだし良いわよ。でも、お嬢様のことは呼び捨てちゃだめよ。アリシアお嬢様って呼ばないと。あの根暗女が聞いたらめくじら立てて怒っちゃうから」

「危ねっ。この間もソフィアに注意受けたばっかりだったな……」

ベイリーから注意を受けたリオナがバツが悪そうに頭をかいていた。


「アリシアおじょーさまのとこ行こう!」

「リオナちゃんも早く行こう!」

長い青髪を揺らして、元気にはしゃぎながら部屋から出ていくキャンディとメロディに手を引っ張られながらリオナも出ていったから、わたしは部屋にベイリーと2人で残されてしまった。


「あなたはカロリーナちゃんよね。わたしはベイリーよ。よろしくね」

わたしたちの住んでいる国では、先ほどのリオナ、キャンディ、メロディみたいに生まれつき派手な髪色の人たちが多いから、同じような黒髪の彼女に親近感が湧いた。一目でわかる優しそうな雰囲気も、好感度が高い。もちろん、人を見た目で判断するのはよくないから、まだ断定はできないけど、少なくとも先ほどの3人よりも頼れそうな雰囲気はあった。


「あの、ベイリーさん。わたし起きたらここで寝ていて、何がなんだかまったくわからないんですよね……。とりあえず、ここに来る前に謎の女性にお嬢様の元で働かないかって提案はしてもらったんですけど……」

「そうよね。いきなりここにやってきて、しかも最初に出会ったのがあの3人だとさらに訳わからなくなっちゃうわよね」

クスクスと楽しそうにベイリーが笑った。その通りだったから、わたしも小さく笑って頷いた。


「そうね、とりあえずお屋敷の案内でもしながら話そうかしらね。もうお粥は食べてくれたかしら」

「あ、そうでした。お粥作っていただきありがとうございました!」

そういえば、先ほどの白玉みたいなお米を使って作られた不思議なお粥を作ってくれたのが、目の前で微笑むベイリーだったっけ。


「良いのよ。お口に合ったかしら。薄味だったし、きっとぬるくなってたでしょ?」

「ちょっと冷めてましたけど、それでもすっごく美味しかったですよ」


味の感想を素直に言った後、気になったことを思い出した。

「あ、そういえば……」

白玉みたいに大きなお米の味がする何かの正体をまだ聞けていなかったから、材料は何だったのかを尋ねようと思ったら、先にベイリーが口を開いた。


「でも、カロリーナちゃん、あの変わったお米食べたの多分初めてでしょ?」

ちょうど気になっていた白玉米のことをベイリーの方から聞いてくれた。


「あれは一応お米なんですか? 白玉じゃなくて」

「白玉?」と言って首を傾げてから、ベイリーは手で口元を抑えながら、楽しそうに笑った。

「違うわよ。あれはちゃんとお米よ。でも、このお屋敷の周辺でしか取れないちょっと変わった品種なのよ」


「なんだ、そうなんですね。味はしっかりお米だったから、わたしてっきり自分が小さくなっておっきなお米でも食べてるのかと思っちゃいましたよ」

今度はちゃんと冗談のつもりで言ったけど、ベイリーは声は出さずに優しく微笑むだけだった。ほんの一瞬だけ、空気が凍ったような気がして不安だったけど、多分気のせい。ベイリーはすぐに話を再開した。


「ま、お米のことは良いから、とりあえず屋敷の案内をするわね。服も綺麗なやつに着替えないとね」

とても優美にメイド服を着こなすベイリーに見惚れてしまう。わたしも早くメイド服を着たくなってきた。

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