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豪華な晩御飯 4

食事も終盤に差し掛かった頃、アリシアお嬢様が仕事を命じてくる。


「ねえ、カロリーナ。わたくし先程までカロリーナにご飯を食べさせてあげてましたわ」

わたしは頷いた。アリシアお嬢様は優しくステーキ肉やスープを食べさせてくれた。


「本当にありがとうございました」とお礼を伝えた。アリシアお嬢様にしては珍しく恩を着せてくるような言い方だったけど、それくらいのことをしてもらった。冷静に考えて、お嬢様自らメイドに食事を食べさせてくれるなんてあまりにも贅沢だった。


「そんなしっかり頭を下げられてしまったら、これから頼みづらくなりますの」

アリシアお嬢様が困ったように笑った。何か頼みづらいことを頼もうとしているらしい。

「いえ、元々わたしはメイドですし、アリシアお嬢様のために尽くすのは当たり前ですから。なんなりとお申し付けを」

わたしはもうリティシア家の令嬢ではないのだ。アリシアお嬢様のメイドとして仕事をする覚悟はできている。


「なら、遠慮なく頼みますわ。今度はカロリーナがわたくしにご飯を食べさせてほしいですの」

「え……?」

「ステーキ用のお皿のところにニンジンが置いてあると思うので食べさせてほしいですわ。わたくしニンジンは苦手なのですが、カロリーナがたべさせてくれたら克服できるかもしれませんの」


アリシアお嬢様がわたしがジャンプしても届かなさそうな位置で大きく口を開けている。背筋を正したまま口を開けられても、わたしにはどう頑張っても届かない。


「えーっと……」

とりあえず、わたしは困惑しながらステーキ皿に近づいた。お皿の上に乗っているのは、抱き枕みたいなサイズ感のニンジン。ふわふわの枕とは違い、こちらは中身もギュッと詰まっているからどちらかと言えば鉄塊とかの方が存在としては近いのだろうか。


えいっ、と気合いを入れて持ち上げようとしたけれど、まったく持ち上がらない。もう一度、腰を落として、熱々のステーキ用の鉄板皿に当たらないようにしっかりと力を入れながらニンジンを持ち上げようと思ったけれど、やっぱり無理だった。


「ごめんですわ。カロリーナが可愛らしかったから、つい揶揄(からか)ってしまいましたの。多分、ニンジンはチョコレートよりも重たいですわね」

クスッと上品にわたしの方を見て笑ってから、アリシアお嬢様はわたしが必死に持ち上げようとしていたニンジンを簡単にフォークに刺して口に入れた。


「やっぱりカロリーナはとっても可愛いですわね」

アリシアお嬢様が優しく微笑んだ。顎を机の上に乗せて、わたしに視線を近づけてから、指先で頭をポンポンと撫でてくる。


「やっぱりコーンを食べさせてほしいですの」

ニンジンとじゃがいもと、コーンが付け合わせとして乗っていて、その中で一番軽そうなコーンを食べさせてほしいということらしい。それでも少しずっしりとした重みはあるけれど、持てないことはなかった。


わたしはコーンを持って、少しだけ口を開けたアリシアお嬢様の口元へと近づいていく。先ほどとは違い、今は顎を机の上に乗せているから、口元も届かない高さではなかった。


キスでもするみたいに、ほんの少しだけ口を開けていたけれど、コーンを入れることはできるくらいのスペースはある。近づくと、ほんのりステーキ肉の匂いが漂ってくるアリシアお嬢様。スースーと体に吹き付ける鼻息がくすぐったくて、心地よかった。


「コーン美味しいですわ。カロリーナも味見しても良いですのよ」

アリシアお嬢様がフォークの先に器用にくっつけて、わたしに食べさせてくれようとしたけれど、そこは丁重にお断りをした。もうお腹がいっぱいだった。


アリシアお嬢様は小さなコーンを口に入れることもできないわたしを見て首を傾げたけれど、このコーンだって、わたしからすればバゲット一個分くらいの重みがあるのだから、とてもじゃないけれど、満腹時には食べられそうになかった。


アリシアお嬢様が引き続きコーンを食べさせてほしいと催促するから、わたしはステーキ皿の熱々の鉄板部分に触れないように気をつけながら、上半身だけ乗り出して、器用に両手で掴む。そのまま口を小さく開けて待っているアリシアお嬢様の元に駆け寄る作業を繰り返した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やっぱりお嬢様もサイズ感をわかっていないわけではなくただ意地悪したいだけですね。 ちょっとSですね。こんな軽いSな巨人はいいですね。 意地悪しても可愛がって大切にしているのは間違いだから…
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