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豪華な晩御飯 2

エミリアの手の上から眺めたステーキはとても大きくて、思わず「すごい……」と声にしてしまっていた。わたしの使っているベッドよりも大きいかもしれない。


ぼんやりと眺めていると、エミリアが手のひらを傾けて、わたしを無理やり下ろそうとしているのに気がつかなかった。わたしはバランスを崩して、コロコロとエミリアの手のひらの上を転がっていく。


「わっ、ちょっと!」

手のひらからバランスを崩したわたしは、ステーキの上にポトリと落ちてしまった。

「熱っ!」

わたしが上に乗ったのを見て、アリシアお嬢様も気がついて、びっくりした声を上げる。


「カロリーナ!?」

慌ててアリシアお嬢様がわたしのことを拾い上げた。

「だ、大丈夫ですの……?」


アリシアお嬢様はわたしのことを手のひらの上でこねるようにして撫で回してきたから、押さえつけられて少し苦しかった。多分、アリシアお嬢様はわたしから熱を取り除こうとしてくれているのだと思う。


「一応大丈夫です……」

アリシアお嬢様がすぐに助けてくれたから、熱さは最小限で済んだ。

「まったく、エミリアは相変わらず意地悪ですわね。もし鉄板の上になんて落ちていたら大変なことになってましたわ」


エミリアが雑に扱ったせいでもあったけれど、今日に関してはわたしがステーキに見惚れていたからバランスを崩してしまったというのも原因だから、少し恥ずかしくもあった。


「さ、わたくしたちは食事にしましょう。意地悪メイドさんはまだお食事を取らないみたいですわ」

2メートルほど距離を取った後方にいるエミリアのことをアリシアお嬢様がチラリと目配せをした。

「あの、食事って……」


わたしはアリシアお嬢様の目の前にズラリと並ぶお皿をグルリと見回して圧倒されてしまう。

「食事はきちんと普段より多く作ってもらっていますから、遠慮しなくても良いですの。カロリーナの分もあるから安心してほしいですわ」

「いえ、むしろ多すぎて安心できない気がしますけど……」


わたしは一食でパン一切れの完食をすることも難しいのだから、こんなに張り切ってご飯を作られても困るのだけど。厚みがわたしの腰の辺りまであるような分厚いステーキ肉に、大浴場見たいなコーンスープ、ちょっとした庭園のような野菜サラダ、そして、普段食べているものとは比にならない、大きなクッションみたいに切り分けれられたバゲット。


「わたしも一人じゃ食べきれませんから、遠慮しなくてもよろしいですのよ」

「いや、ほんとに遠慮じゃなくて……」


困惑しているわたしを気にせず、アリシアお嬢様がゆっくりとステーキ肉を切っていく。

「さ、カロリーナ。口を開けて」


そっとわたしの顔の前に近づけてくるけれど、こんな大きなお肉にかぶりつけるわけがない。きっと、この一切れの半分も食べたら、お腹がはちきれそうになってしまう。それに、アリシアお嬢様にとっては一口サイズでも、わたしにとっては抱き枕みたいに大きいから、どうやって口に入れたらいいのかもわからなかった。


「遠慮しなくて良いですのよ?」

いつまでも口を開けようとしないわたしの姿を見てアリシアお嬢様が少し残念そうに口を尖らせた。

「遠慮というか……」


フォークに刺してわたしの顔の前でお肉をブラブラとさせる。不安定な動きは読むことが難しくて、時々脂っこいお肉が顔に当たってしまい、ベタついた。


「あの、アリシアお嬢様、わたしの顔脂ぎっちゃってます……」

自分で頬を触ってみたら、ベタベタしていた。


「困りましたわ。わたくし、この美味しいステーキをカロリーナにも食べさせてあげたいですの……」

アリシアお嬢様がしょんぼりとしているけれど、いくら柔らかいお肉といっても、それはあくまでも奥歯で噛み締めるから噛みやすいわけで、わたしはまず口内に入れるのができないのだ。


わたしがステーキを一切れ口に入れるよりも、アリシアお嬢様がわたしを口の中に入れる方が簡単そうだ。しょんぼりしながらも、アリシアお嬢様はどんどんステーキを小さく切り進めていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] また食事。こういう場面が好きです。 巨人と一緒に食べる夕飯はいいですね。 [気になる点] アリシアお嬢様は小人と遊ぶのに慣れているのに、なぜか小人の食事に関してはあまり理解していないよう…
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