決起 1
「とりあえず、あたしらは基本的にカロリーナたち3人から目を離さないようにしないといけねえよな。あたしら4人の中だと、多分あたしが一番面倒見が良くてしっかりしているから、あたしが3人のお世話をすることにした方がいいな」
リオナが当然のようにわたしたちのことを掴もうとしてきたけれど、エミリアがその手を払いのけた。
「ちょっと待ちなさいって。何をどう考えたらあんたが面倒見が良くてしっかりしている扱いになるのよ。自己評価高すぎじゃないかしら?」
「なんだよ、さすがにキャンディとメロディよりもはあたしが面倒見た方がいいだろ? あの2人、この間カロリーナのことを潰しかけてたから、ちょっと心配なんだよ」
「いや、その2人じゃなくて、わたしが面倒見るってことよ! わたしたち4人の中ならどう考えてもわたしが一番面倒見が良くて、しっかり者でしょってことよ!」
「あのな……。いくらなんでもあたしの大事なカロリーナやソフィア、それにアリシアのことをお前みたいなサイズ差に物言わせて暴力振るうようなメイドに渡せねえからな?」
会ったばかりの頃はわたしはエミリアに痛めつけられることも度々あったから、リオナはそのことを危惧しているらしい。
「あ、あれはその当時の状況的に……。それに、仮にわたしが暴力的なメイドだとしても、力加減をうっかり誤って傷つけるようなことはしないわ。あなたはカロリーナが小さくなった時にキャンディとメロディと一緒にカロリーナを気絶させたって聞いたわ。わたしは意図的にしか傷つけることはなかったわけだし、力加減はバッチリよ」
フンっとエミリアとソフィアが同時に鼻を鳴らした。その間に2人の傍からキャンディが小さな何かを指先に乗せて、メロディと共にやってきた。
「これ、ソフィアの部屋着だって!」
「ベイリーがくれた!」
その言葉をわたしがソフィアに伝えると、「そうですか……」とソフィアが小さくため息をついた。一応ベイリーはソフィアのことを気遣ってくれてはいるらしい。心の底からベイリーはソフィアを許さないつもりではなさそうなことにはホッとした。
けれど、ソフィアにちょうど合うサイズの服に対する手乗りサイズのキャンディの指先の大きさには、やっぱり不安にさせられた。ソフィアがベイリーと仲直りをするためには、少なくとも今のサイズでソフィアがベイリーと接触しなければならない。
だけど、今のソフィアにとって、元に戻ったベイリーはどのくらい大きいのだろうか。身長0.2ミリに満たないソフィアのことはベイリーからどう見えるのだろうか。あまりにも差がありすぎて、正直近づけたくはない。ベイリーが動いただけでソフィアは吹き飛ばされてしまうかもしれない。
わたしはキャンディからソフィアの小さな服を受け取って、それをソフィアに手渡す。ソフィアの服は今にもキャンディとメロディの呼吸に吹き飛ばされてしまいそうだったから、気をつけて受け渡しをした。
「キャンディさんもメロディさんも随分と頼もしいですね」
困ったように、2人に聞こえない大きさの声でソフィアが話していた。一番頼りたいリオナとエミリアは犬猿の仲過ぎてどっちも揉めてるし、もはやキャンディとメロディの方が頼もしくも見えた。
でも、当然ポテンシャルを考えたら面倒見の良いリオナかしっかり者のエミリアにお世話を頼んだ方が得策だ。それぞれの性格が違い過ぎて、わたしが困っていると、アリシアお嬢様がわたしの方をチラリと見てから、上を向いて手をパンパンと叩き出した。




