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手乗りメイドはお嬢様に愛されたい!  作者: 穂鈴 えい


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400分の1の再会 1

〜登場人物〜

カロリーナ……さらに小さくされた元令嬢メイド

アリシア……カロリーナと仲の良い優しいお嬢様

ソフィア……ベイリーを怒らせてさらに小さくされたヤンデレメイド

ベイリー……ソフィアとパトリシアお嬢様を取り合っているメイド

エミリア……真面目で厳しいけれど面倒見の良いメイド

エミリアの手のひらの上から手を振るアリシアお嬢様はとても楽しそうだったけれど、当然この状況を楽観視できるほど、わたしは楽天家ではない。

「ア、アリシアお嬢様…、どうして……」

いや、どうしても何も答えはわかっている。元の大きさに戻ったベイリーにキスをされて小さくされてしまったのだ。


「カロリーナ、やっと会えましたわね」

「ベイリーさんにやられたんですよね、許せないです……!」

「どうしましたの?」

アリシアお嬢様が小首を傾げていた。


わたしはせっかく目の前にアリシアお嬢様がいるというのに、すっかり周りが見えなくなってしまっていた。思いっきり助走をつけて机から飛び降りようとしたのに、エミリアがアリシアお嬢様を持っていない方の手のひらを机に乗せて、わたしの前に壁を作る。突然現れたエミリアの手のひらの壁にぶつかって、わたしはギャっと声を出してしまった。


「な、何のつもりですか!」

「あなたこそ、何をするつもりよ?」

「何をって、アリシアお嬢様を小さくしたベイリーさんに文句を言って戻してもらいに行くんですよ!」

わたしが叫ぶと、エミリアの手のひらに乗せられたアリシアお嬢様がわたしの方に叫んだ。


「違いますわ。わたくし頼んだのですわ。ベイリーに小さくしてって!」

「どうしてそんなことを!」

「決まってますわ! そうしたらわたくしカロリーナに会えますの!」

アリシアお嬢様の声を聞いて、エミリアが呆れたようにため息を吐いた。

「目の前の大切な子の声くらい、ちゃんと聞いてあげなさい。あなたの為にここまでしてくれる子がいるのだから、ベイリーさんにお門違いな苛立ちを向けるよりも、アリシアお嬢様を愛してあげなさい」


エミリアがわたしの体を鷲掴みにして、アリシアお嬢様が乗っていた方の手のひらに乗せた。目の前で、同じくらいのサイズのアリシアお嬢様が大きな目を潤ませてわたしの方を見つめていた。わたしたちはエミリアの手のひらの上で再会を果たしたのだった。再会してから初めて真正面からしっかりと顔を見ることができた。アリシアお嬢様は思っていたよりも小柄で、今まではとても頼もしく見えていたのに、今はとてもか弱そうで、守ってあげなければいけないように思える。


「こうやって見ると、あの日会ったリーナちゃんで間違いないですわね。同じくらいのサイズなら、再会してすぐに気づけましたのに」

瞳を潤ませながら微笑むアリシアお嬢様はとても気品があって、綺麗だった。

「わたしの方こそ、もっと早く気づけましたよ。改めて、再会できて嬉しいです、アリーちゃん!」


そうして、2人で顔を見合わせた後、緊張の糸がフッと解けたみたいに、わたしとアリシアお嬢様はお互いにワンワン泣きながら、エミリアの手のひらの上で抱きしめあったのだった。そして、ひとしきり泣き終えた後、アリシアお嬢様にいったい何があったのかを聞いたのだった。


アリシアお嬢様が言うには、ベイリーがネズミを捕まえるために、部屋にアリシアお嬢様がいる時に目の前で元の大きさに戻ったらしい。本当は人前で元の大きさに戻ることには抵抗があったみたいだけれど、緊急事態だったこともあり、仕方なく戻ったようだった。そして、その状況をアリシアお嬢様が問いただしたところ、ベイリーは渋々ながらも目の前で見られてしまっては言い訳ができないと言うことで、サイズを変えることができることを打ち明けたみたいだ。それに反応したアリシアお嬢様がかなりしつこくわたしと同じ大きさにするようにねだった結果、2段階の縮小魔法をかけてもらえたらしい。もちろん、ソフィア以外はいつでも好きな時に戻してあげるとのことなので、その条件にはアリシアお嬢様も該当するみたいだ。


「ところで、どうしてみなさん元の大きさには戻りませんの? わたくし、みんなのことはいつでも元に戻してあげるからってベイリーから聞いてますのに。ここの居心地がそんなに良いですの?」

アリシアお嬢様がキョロキョロと周囲を見回して首を傾げていた。わたしはエミリアに声をかける。

「エミリアさん、わたしとアリシアお嬢様のこと机に下ろしてもらっても良いですか?」


エミリアは、ええ、と頷いて、わたしたちのことを机に乗せた。そして、わたしはアリシアお嬢様の手を引いて、足元に注意をしながら歩いた。

「机の上をお散歩ですの? リーナちゃんと一緒だと、なんだか新鮮な気分で楽しいですわ」

自然とリーナちゃん呼びをしてもらえて少し嬉しくなってきたところで、アリシアお嬢様が危うくもう一歩踏み出してしまいそうになったから慌てて静止する。


「危ないです!」

アリシアお嬢様の足の真下で怯えているソフィアのことを慌てて拾い上げた。

「ど、どうしましたの……? って、ソフィアがなんでそんなところにいますの!?」

アリシアお嬢様がソフィアのことを困ったように覗き込んだ。


「この通り、ソフィアさんだけはちょっと例外なんだ。だから、わたしたちが元に戻るにはベイリーさんとソフィアさんに仲直りをしてもらわないといけないんですよね」

わたしは困ったようにアリシアお嬢様に伝えたのだった。

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