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初仕事! 3

食事が終わると、わたしとキャンディとメロディだけ部屋に残って屋敷内の掃除をすることになった。リオナ、ベイリー、ソフィアは屋敷の外に出て、母家の方でアリシアお嬢様のお世話をするらしい。


積極的に外に出たいとは思わないけれど、まだわたしの仕えるべきアリシアお嬢様の顔も知らないままで良いのだろうかという不安はあった。とはいえ、今はまず与えられたメイド仕事をこなしていかなければならない。


まずは2階の突き当たりの、メイド服の置いてある場所と物置の間の廊下から、階段のほうにゆっくりと箒をかけるところから始めるらしい。さすがにプライバシーもあるから各自の部屋には入らずに、共用部だけ進めていく。


「カロリーナ、キャンディたちが教えてあげるね!」

「カロリーナ、メロディたちが今日は先生だよ!」

ハタキを持って同じように右手を上げてる2人を見つめる。


「随分と可愛らしい先生ね」

「カロリーナは箒かけてね!」

手渡されたカーペット用の箒を持って端から掃いていく。家にいた頃は掃除なんてほとんどしたこともなかったけど、今まで見てきたことを思い出して、廊下を掃きすすめていった。


「今更だけど、キャンディとメロディは姉妹ってことでいいのよね?」

ここに来てから、キャンディとメロディとは一緒にいることは多いけれど、大抵はそばにリオナがいたり、ゆっくり話す時間もなかったから、この2人のことについて、そっくりであることくらいしか情報がなかった。


今朝も結局どっちがどっちかわからなかったし。一応前にキャンディが自分のことを姉と自称していたから、きっと姉妹なのだとは思う。


「そうだよ。キャンディがお姉ちゃんなの!」

「メロディの方が妹だけど、誕生日は同じなの!」

「双子なの?」

「「そう!」」と2人同時に答えた。


「リオナさんは2人のお姉ちゃんなの?」

あまりにも仲が良いし、リオナも満更でも無さそうだから、姉妹なのかもしれないと思った。髪色は違うけれど、リオナは本当の姉にしか見えなかった。


「違うよ、リオナちゃんはおねーちゃんじゃないよ」

「でも、リオナちゃんはおねーちゃんなんだよ」

2人とも言っていることが違う。なんだか矛盾してしまっているけれど、どういうことなのだろうか。


「どっちなの?」

わたしの質問を聞いて、キャンディとメロディはお互いに向き合って、鼻先が触れ合いそうな距離で向かい合っていた。


「おねーちゃんだけど、」

「おねーちゃんじゃないよ」

わたしの頭にはてなマークが浮かぶ。


「リオナちゃん、キャンディ達が襲われた時に守ってくれた!」

「それからずっとメロディたちのおねーちゃん!」

血はつながっていないけれど、懐いていて、本物のお姉ちゃんみたいな感じということか。そのことについては納得した。


「でも、襲われたって物騒ね。一体何してたの?」

「わからない!」

「起きたらメロディたち、家にいなかったの!」

「キャンディもメロも、帰り方がわからなかったの」

キャンディとメロディが元気な声で答えたけれど、元気な声とは裏腹に、とても不穏な内容だった。


「帰り方がわからないって……」

「お家で夜ご飯食べたら、すっごく眠くなっちゃって、」

「起きたらメロディたち2人だけで山の中にいたの……」

「キャンディたち、どこかわからないからいっぱい歩いたんだけど、どんどん暗くなっていっちゃった……」

「迷子になっちゃったの」

「えっ……」


気付けばあんなに楽しそうだった姉妹の表情が曇っていた。メロディが俯き、キャンディがメロディのことをギュッと抱きしめている。これは、きっと2人にとって思い出させてはいけない話だ。少なくとも、わたしにはまだ受け止めてあげるだけの心の余裕もない。どうしようと思っていたら、俯いていたメロディが次の瞬間にはまた元気になっていた。


「だけど、賊って人たちに襲われちゃった時に、リオナちゃんが助けてくれたの!」

「リオナちゃん、すっごく強いんだよ!」

「一人でたくさんの男の人倒しちゃったの!」

「メロディ、リオナちゃんが大好き!」

「キャンディも!」

「「だから、リオナちゃんはお姉ちゃん!」」


最後は2人で声を揃えて言った。2人の過去については深掘りする度胸はない。ただ、2人がとてもリオナのことを慕っているのはわかった。

「そっか、素敵な三姉妹ね」とわたしはできるだけ優しい笑みを作りながら答えた。

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