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わたしたちの恋愛事情 3

「さあ、着いたわ」

エミリアがわたしのことを机の上に置いた。2人がけのソファが2組、机越しに置いてある部屋で、ソファを置いたらもう部屋はいっぱいになるような小さな部屋だった。エミリアが座ったフワフワとしたソファはとても気持ちよさそうで羨ましい。


「ここは……?」

「レジーナお嬢様が他の家のご子息やご令嬢とお話をするときに使う場所よ」

「そ、そんなところわたしたちメイドが使っても良いんですか!?」


「わたしたち専属メイドは特別なのよ。わたしはレジーナお嬢様たちにお茶を淹れるために入ったことは何度もあるわ。さすがに、席に着くのは今日が初めてだけど」

「そ、それを聞いたら尚のことわたしたちがプライベートで使って良い場所とは思えないんですけど!?」

「まあ、良いじゃない。たまにはゆっくり羽を伸ばしましょうよ」


わたしは困惑してしまっていたけれど、エミリアはさっさと席に座り、わたしは机に乗せられてしまった。そして、エミリアが大きく伸びをしてから、わたしをそのまま口に入れてしまえそうなくらいの大欠伸をした。こんなに油断し切ったエミリアを見るのは初めてだから、少し不思議な気分だった。


「休むときは休む、働くときは働く、ちゃんとメリハリをつけていかないとね」

「今までほとんど休んだことはないって言ってませんでした……?」

「そうね、言ったわね」

エミリアがえへへ、と可愛らしく子供みたいに笑っていた。


「あの、あなた本当にエミリアさんですよね……?」

「何言ってんのよ? 別人だったら怖すぎるでしょ」

あまりにも普段と違いすぎたから、つい聞いてしまったけれど、真面目な顔で首を傾げられたから、やっぱりエミリアで間違いないようだった。


「ま、それはそれとして……」

エミリアがいつ持ってきたのかわからない紅茶の入ったティーカップを自分の前と、わたしの前に置く。わたしのティーカップは以前アリシアお嬢様と一緒にいた時にも使っていたわたしたちサイズの使いやすいティーカップだった。


「不思議よね。そのティーカップ、まるで普通のティーカップをそのまま小さくしたみたいに薄くて精巧なのよ」

「本当ですね」

持ち上げて、揺らしてみたけれど、本当に本物を小さくしたみたいだった。前にアリシアお嬢様にお呼ばれしてティーカップを持った時には疑問に思う余裕もなかったけれど、言われてみれば不思議である。


「人だけじゃなくて、物も小さくできるのかしら」

その声が静かな怒りみたいに聞こえて少し怖くなった。

「……どうしたんですか?」

恐る恐るエミリアを見上げると、エミリアが小さく息を吐いた。


「わたしはベイリーさんとソフィアさんを小さくした犯人を見つけたいの」

「え……?」

わたしは思わず硬直してしまった。


「エミリアさん、わたしたちが小さくなったこと気にかけてくれてたんですか……?」

「あなたのことは気にかけてない。わたしが気にかけてるのはソフィアさんとベイリーさん、そして、おそらくパトリシアお嬢様も……」


さらりとわたしは気にかけてないと言われてしまったけれど、一旦それは置いておく。それよりも、ここでもまた名前が出てきたパトリシアお嬢様のことが気になってしまう。


「あの……。パトリシアお嬢様って一体どこで何をしているかとかって、当然エミリアさんも知らないんですよね?」

わたしが尋ねると、エミリアはわたしのすぐ傍に突然手のひらを叩きつけた。

「ひえっ……」


体が浮いて、わたしは咄嗟に頭を庇ってしゃがんだ。小さなティーカップはそんな強い衝撃に耐えることができず、ひっくり返ってしまった。なぜかわからないけれど、せっかく和やかになってくれていたエミリアを怒らせてしまったようだ。

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